カジュアルウェア

SHOWCASE
あの頃のホワイトバックスを探して。

2023.02.16

ファッションエディターの審美眼にかなった、いま旬アイテムや知られざる名品をお届け。

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1970〜80年代のモデルを手本につくり込んだ一足。底付けはボロネーゼ製法を採用することで、包み込むような履き心地が実現するとともに、ソールの貼り替えも可能にしている。¥36,300/ポルペッタ(ビームスF 03-3470-3946

僕は「ホワイトバックス」が大好きだ。でも、今は持っていない。

真っ白なヌバックレザーのアッパーにレンガ色のソールを組み合わせたこのタイプの靴は、1990年代中頃まではアメトラやアイビースタイルにおける大定番だった。なかでも人気だったのがウォーク・オーバーで、ほかの本格靴と比べてお手頃だったこともあり、僕はスニーカー感覚で買って、古着の軍パンやジーンズに合わせていた。アメ横あたりだと白いアッパーが汚れないよう、ビニールでシュリンクしたものが販売されており、それが無性にまぶしく見えたことを覚えている。ともあれそこは純白の起毛革、大切に履いても一生モノとはいかないのがこの手の靴の運命。10年ほど前に買い替えようとしたのだが、ここで問題が発生。現行のウォーク・オーバーはなんだかかわいらしいぽってりしたシルエットにアップデートされていて、僕が履いていたものとは全くの別物だったのだ。

かくしてこの10年、大好きなホワイトバックスを諦めて生きてきたのだが、偶然立ち寄ったビームスFで、僕が昔履いていたモノと見まがうような理想の一足と出合ってしまった。しかし中底をのぞいてみたところ、ポルペッタという聞きなれないブランドである。それにしてもこの完成度はどういうこと?尋ねてみたところ、この靴の仕掛け人は完璧主義者として名高いビームスのクリエイティブ・ディレクター、中村達也さんだった。木型はもちろんコバの張り出し、縫製、平ひもの質感に至るまで徹底的に修正を重ね、往年のウォーク・オーバーを完全再現したのだという。アメリカ製でもアメリカブランドでもないけれど、あの頃を最も知る人がつくったこのホワイトバックスが、2022年における王道。願わくば定番にしてもらいたいな。

山下英介(やました・えいすけ)
ライター・編集者。『MENʼS Precious』などのメンズ誌の編集を経て、独立。 現在は『文藝春秋』のファッションページ制作のほか、ウェブマガジン『ぼくのおじさん』を運営。

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「アエラスタイルマガジンVOL.53 AUTUMN / WINTER 2022」より転載

Photograph: Ryohei Oizumi
Styling: Hidetoshi Nakato (TABLE ROCK.STUDIO)

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