コート

オンでもオフでも使える万能なトレンチコートとは?
「100年コート」デザイナーに学ぶ、その着こなしとテクニック。

2023.03.30

オンでもオフでも使える万能なトレンチコートとは?<br>「100年コート」デザイナーに学ぶ、その着こなしとテクニック。

“オン/オフを問わない高い汎用性”とは、そのアイテムが着まわしに有効であることを訴求するファッションの常套句。なかでも、スーツやジャケット着用が求められるビジネスパーソンにとって、文字どおりオンでもオフでも使えるアイテムの代表格がトレンチコートと言えるでしょう。本稿では、三陽商会が誇る名品「100年コート」の企画デザイナー、山本 聡さんを指南役にお迎えし、大人の男性が2つの異なるシーンをまたいでシームレスに使える一着と、その着こなしを紹介します。

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About「100年コート」
三陽商会が手がけるコート専業ブランド「サンヨーコート」が、約80年にわたって培った技術と経験を結集して2013年に誕生。厳選された高級素材を使い、日本の職人技術が息づいた精巧な作りとこだわりのディテールを備えたハイクオリティーなコートとして、幅広い世代から人気を博している。印象的な名前の由来は、“手入れをしながら一生かけて愛用し、世代を超えて受け継いでほしい”という思いが込められたもので、購入後のアフターケアやメンテナンスのサポートも充実。

現在、4種類(スタンダード、クラシック、極KIWAMI、粋SUI)のラインアップを展開する「100年コート」。山本さんが本企画のテーマである着まわしという観点からチョイスしたのは、2022年誕生の進化版モデル「極 KIWAMI」。

「『極KIWAMI』は、100年コートのなかで最も分量感があるクラシックなシルエットが特徴です。生地は60番双糸で特にしっかりしているため、初めはやや硬いのですが、ジーンズのように着込んで自分だけのビンテージを育てる楽しみがあります。そのため、ドレスアップの際は、ベルトを絞ってジェントルマンのスタイルを表現でき、カジュアルな装いではオーバーシルエットのスタイリングができるという部分で、今回こちらを選びました」(山本さん)

【ON STYLE】
美しいシルエットを形作ることで、端正なスーツスタイルに大人のエレガンスを添える

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「春なので、内側のライナーを外して王道のネイビースーツに合わせています。Vゾーンに合わせたネクタイは、コートのベージュ色になじむよう、ネイビー、ベージュ、ブラウンを使ったストライプ柄をチョイスしました」

コートの襟元からのぞくVゾーンは、コートとスーツの色をグラデーションでつなぐ、淡いベージュのベスト、さらに色の濃淡やピッチ幅の異なるオルタネイト・ストライプのクレリックシャツと彩度を抑えたタイで構成され、胸元に立体感が生まれています。コートのラペルも上襟を自然に立たせることでこなれ感を演出。そして最大のポイントは、ハリ感のある素材と分量感を生かしたシルエットにあります。

「『極 KIWAMI』は緩やかなAラインが特徴のコートなので、ベルトを絞るとアワーグラス(砂時計)のような優雅なシルエットが生まれておすすめです」

コートのウエストベルトは、ノットを小さくまとめた片リボン結びで、ビジネススタイルに即したきちんと感を意識。ただ、中心をあえてずらした位置にノットを持ってくることで、ぐっと洒脱な雰囲気に仕上がっています。ラペルの絶妙な“こなし”を含めてすぐにでもマネできるテクニックなので、早速採り入れてみては。

【OFF STYLE】
色数を抑えたシンプルなコーディネートで、コートの上質さとシルエットを引き立てる。

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オフスタイルは打って変わって、ぐっとカジュアルな面持ちに。

「クルーネックのコットンセーターに、デニム素材のスラックスというシンプルなアイテムで大人のカジュアルスタイルを意識しました」

カジュアルとはいえ、品よく洗練された印象に映るのは、その色使いにヒントが隠されています。

「コーディネートに使うカラーを3色までに抑えることで、ベーシックなコートの優雅なシルエットを引き立たせました」

コットンニットとパンツ、さらにニューバランスのスニーカーまで、ネイビーのワントーンにまとめることで、縦のラインをすっきりと見せ、コートの存在感がぐっと際立っています。

「デニムパンツは、5ポケットではなく、2プリーツのスラックスタイプを選びました。コートのAラインシルエットに加えて、パンツのテーパード具合とクロップド丈のスッキリとした足元によって、大人っぽいきれいめなスタイルに仕上げています」

細部に目を凝らせば、タックインしたニットはトップスとボトムスをスムーズにつなぎ、パンツのウエストのディテールを見せるのにもひと役買っています。そして、着こなしに華やかさを添える小物使いにも、意外なテクニックが。

「春らしく同系色の軽いコットンストールを挟んでアクセントにしながら、コートの襟汚れを防ぐ目的を兼ねています」

こうしたちょっとしたコツはプロならでは。いくら“育てる”コートをうたった「100年コート」とはいえ、襟元の汚れや傷は大人に不可欠な清潔感の有無と直結するだけに、くれぐれもご注意を。

ちなみに、オンスタイルではウエストベルトをきっちり閉めて、逆にオフスタイルでははおりとしてコートを着用しましたが、山本さんによるともうひとつおすすめの着方があるとか。

「春はボタンを留めず前を開けたまま、ベルトで絞るとこなれた雰囲気が出るのでおすすめです。こうすれば、コート内に自然な風も入ってくるので、穏やかな天候が多い春の着こなしにも使えるでしょう」

逆にトレンチコートをスタイリングに採り入れる上で、NGな着こなしってありますか?

「特にはないですね。そもそも定番とも言えるトレンチコートは極めて汎用性が高く、コーディネートの幅をぐっと広げてくれます。ご自身のお好きなスタイルで遊んで、末長くエイジングを楽しんでください」

着こなしはあくまで自分らしく自由に楽しむ。トレンチコート自体が完成された普遍的なアイテムだけに、コーディネート次第で着る人の個性を演出できるというわけです。色合わせや“こなし”のテクニックなど、山本さんのスナップを参考にしながら、自分なりの装いを見つけてはいかがでしょうか。

PICK UP ITEM
100年コート 極KIWAMI

400_物カット(メンズのみ)
コート¥231,000/サンヨーコート(SANYO SHOKAI カスタマーサポート 0120-340-460

「100年コート」のなかでも、最高峰の品質にこだわり、素材やパターンを再構築したハイグレードモデル。「アルティメイトピマ」と呼ばれるオーガニックコットンを高密度に織り上げ、美しい表情と高い耐久性を実現。タテ糸とヨコ糸の色を変えることで、見る角度や光の当たり方によって微妙に色合いが変わるニュアンス豊かな生地に仕上げた。たっぷりとゆとりを持たせたAラインシルエットは、着用することで立体的なドレープを演出。また、長めの着丈は歩くたびに裾がゆらめき、優雅な印象を付与する。元々、ミリタリーがルーツのコートだけに、ウエストベルトに付けられたD菅や背面のアンブレラヨークなど伝統的な意匠を踏襲しつつ、ボタンを留めた状態で中に着た衣服のポケットにアクセスできるスリットや、着脱式のダウンライニングなど、現代生活に呼応したディテールも備えている。世界的にも珍しいコートに特化した工場「サンヨーソーイング 青森ファクトリー」での縫製作業をはじめ、織布、染色整理加工、企画などすべての工程を日本で行ったメイド・イン・ジャパンの底力を体感できる一着。

Text:Tetsuya Sato

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