カジュアルウェア
進化するザ・ノース・フェイスのマウンテンパーカ。
定番モデルは、キャンプからタウンユースまで使える万能選手。
ファッショントレンドスナップ179
2023.03.31
ザ・ノース・フェイスのアイテムのなかでも絶対名品とファンの間で語られているものをご存じでしょうか?
そのひとつが、1985年に発表されたマウンテンジャケット。肩にボディーとは違う色のヨーク(生地補強あて布)がつき、その左にロゴマークが入ったもので、素材は当時最先端の生地と言われたゴアテックスを使っていました。その使い勝手のよさとシンプルなデザインでありながら、インパクトのあるこのジャケットは、日本で大ブレーク。本来は、登山用に開発されていましたが、日本ではスーツの上にはおったり、普段着や街歩きのアウターとして着る人が続出。その後、さまざまな使用目的に合った進化系マウンテンジャケットが次々に発売されています。
今回のスナップのおふたりも進化系マウンテンジャケットを着て登場。
「私が着ているのは、マウンテン レインテックス ジャケットというモデルです。最新のゴアテックス プロダクツの3層構造の生地を使っているので、防水透湿性が高く、軽い着心地がポイントです。フードは、本体の襟部分に収納できるビルトイン使用になっていますから、雨が突然降ってきても心配いりません。このジャケットは、山歩きやキャンプのときに使うだけではなく、タウンユースでも使っている方も多いですね」と解説していただいたのはザ・ノース・フェイス・キャンプ 恵比寿ガーデンプレイスのスタッフの白井流聖さん。
確かに白井さんのコーディネートは、アウトドアテイストとストリートスタイルが絶妙にミックスされています。こうしたことがサラっとできてしまうところが、ザ・ノース・フェイスの人気の秘密ではないでしょうか。
「ザ・ノース・フェイスではウィメンズからベビー、キッズまで展開していて、メンズにはないデザインやカラーがかなりあります。ウィメンズにはマタニティーウエアまであります。今回私が着ているのは、マウンテン ライト コートというモデルで、一見タウンユース向きのトレンディーなデザインに見えるかもしれませんが、素材はゴアテックス プロダクツを使い、フロントの合わせ部分はダブルフラップ仕様になるなどの本格的な機能があるので、これを着てキャンプやトレッキングに行けます」とレクチャーしていただいたのは、同店スタッフの境田七夏さん。
日本にアメリカのアウトドアスタイルを広めた立役者の一人、イラストレーターの小林泰彦さん。1977年に出した「ヘビーデューティーの本」を文庫化したのがこの山と渓谷社版で、表紙にはマウンテンパーカを着た男性が描かれています。日本では、この本が出た後から、マウンテンパーカは街中で着るカジュアルアウターとして広まりだします。イラストに描かれたように、当時のマウンテンパーカは、ポケットが4つ、フードはボディーと一体型、前身頃はスナップボタン留め、肩はラグランスリーブ、袖先にはフラップというのが基本デザインだったのがわかります。
ここまで読んで、タイトルにあったマウンテンパーカという言葉が出てきていないことに気づいた方も多いと思います。そのわけは?
元々アメリカのサンフランシスコのいくつかのアウトドアブランド(なかでも有名なのはシェラデザイン)が山歩きに向くジャケットとして1960年代後半から1970年代初頭にかけて売り出したのが、マウンテンパーカと呼ばれるもの。フードが付き前身頃にポケットが4個付いたデザインで、裾とウエストには風や冷気を遮断するドローコードが付いていました。素材は、当時の最新の機能素材「60/40」と呼ばれたコットンとナイロンを使った生地がほとんどでした。
サンフランシスコ生まれのザ・ノース・フェイスでも当時から取り扱いがあり、最近までデザインはほぼ当時のままで、素材やディテールをアップデートしたマウンテンパーカという名前の商品が発売されていました。
現在、日本のザ・ノース・フェイスのウェブサイトでは、マウンテンパーカから進化したマウンテン ライト ジャケットやマウンテン レインテックス ジャケットなどが人気モデルになっています。
進化前のアーカイブデザインのものと見比べると、つながりがないように感じる人も多いかもしれませんが、個人的には初期のマウンテンパーカの遺伝子はちゃんと受け継がれていると感じます。そう思うのは私だけでしょうか……。