腕時計

【Franck Muller】
Watchmakers' Philosophy
ブランドの顔は時計師にあり。

2023.05.09

【Franck Muller】<br>Watchmakers' Philosophy<br>ブランドの顔は時計師にあり。
『グランド セントラル トノウ カーベックス』 トゥールビヨンをセンターに配置した非凡にして迫力あるモデル。フランク ミュラーを象徴する三次元曲線が優美なトノウ カーベックスケースを進化させた新しいフォルムを採用している。自動巻き、PGケース、サイズ58.6×40㎜、日常生活防水。¥21,450,000。

われわれと同じ時代の空気を呼吸している、リヴィング・レジェンドと呼ぶにふさわしい時計師の手による時計からは、彼らの哲学や手触りが伝わってくる。ウォッチジャーナリスト、まつあみ靖が、彼らと出会った際の肉声と共に、その深遠な世界をナビゲート。

ラグジュアリー=時間、そのメッセージを込めて

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フランク・ミュラー/1958年、スイスのラ・ショー・ド・フォン生まれ。79年ジュネーブの時計学校を首席で卒業。修復の仕事を経て、世界初となるさまざまな複雑腕時計を手掛け話題をまく。92年ビジネスパートナーで、現在もフランク ミュラー ウォッチランドを統括するヴァルタン・シルマケスと共にウォッチブランド「フランク ミュラー」を設立。

天才時計師の称号を、フランク・ミュラーほどほしいままにした人物はいないだろう。ジュネーブの時計学校を首席で卒業後、修復の仕事を経て、自身の時計制作に乗り出す。

86年に発表したジャンピングアワー機能付きのトゥールビヨン腕時計を皮切りに、世界初となる複雑腕時計を続々と生み出し、時代の寵ちょう児じ となっていく。92年にはグラン/プチ・ソヌリ、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダーを搭載した当時世界で最も複雑な腕時計「キャリバー92」を発表。同年、ブランドとしてのフランク ミュラーを設立。ランダムに並んだ数字を時針がジャンプして時刻表示する「クレイジー アワーズ」や、時刻によって運針速度が異なる「イレギュラーレトログラード アワー」など、時間の捉え方や概念に一石を投じるモデルでも話題をさらった。

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あるコレクター夫人からの要望で、86年に1年を費やして開発したトノウ カーベックス ケースは、ブランドのアイコンのひとつに。写真のモデルは、これを採用した初期のモデル。

2019年秋に来日した彼に「あなたにとってラグジュアリーとは?」と尋ねてみた。すると「それは時間です」という答えが返ってきて、筆者は大いに驚かされた。というのは、以前スウォッチグループのナイラ・ハイエック会長も、同じ質問に同じ答えを返してきたからだった。ラグジュアリーを知り尽くすと、同じ境地に至るということだろうか。フランク・ミュラーは、ハスキーな説得力のある声でこう付け加えた。

「時間は大金を積んでも買えない。自分のために時間を使うことこそ、最もぜいたくなこと。私はそれを実践してきた。しかし多くの人は、その理解にたどり着かない。時計とは“時”を象徴する存在で、自分の時間を有効に、というメッセージを含んでいる」

近年、ブランドとしてのフランク ミュラーは、時計を軸としながらも、テーブルウェア、インテリア、ウエディングまで手掛けるラグジュアリー・ライフスタイル・ブランドとして展開を広げている。フランク・ミュラーという不世出の天才が時計を極めることでたどり着いた境地から、新たなアイテムやメッセージが届けられることも興味深い。

<<<ブランドの顔は時計師にあり。「F.P.Journe」はこちら

Text: Yasushi Matsuami
Illustration: Mai Endo
Edit: Mitsuhide Sako(KATANA)

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