腕時計

【Hajime Asaoka】
Watchmakers' Philosophy
ブランドの顔は時計師にあり。

2023.05.15

【Hajime Asaoka】<br>Watchmakers' Philosophy <br>ブランドの顔は時計師にあり。
『TSUNAMI』 独立時計師アカデミーの会員候補となった2013年にバーゼルで発表。大型のテンプが、ムーブメントのセンターで主張する独創性の高い設計。毎時1万8000振動のロービート仕様。試行錯誤の末に完成させたメタリックなブラウンダイヤルの色調も味わい深い。手巻き、SSケース、径37㎜、日常生活防水。価格要問い合わせ。

われわれと同じ時代の空気を呼吸している、リヴィング・レジェンドと呼ぶにふさわしい時計師の手による時計からは、彼らの哲学や手触りが伝わってくる。ウォッチジャーナリスト、まつあみ靖が、彼らと出会った際の肉声と共に、その深遠な世界をナビゲート。

精密加工への執念と、デザイナーの視点と

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浅岡 肇/1965年、神奈川県生まれ。1990年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業後、助手を経て92年浅岡肇デザイン事務所を設立しプロダクトデザイナー、グラフィックデザイナーとして活躍。2009年春、独学で完成させたトゥールビヨン搭載腕時計を発表。13年AHC(I 独立時計師アカデミー)会員候補、15年より会員。16年東京時計精密(株)を設立、18年CHRONO TOKYOをスタートさせる。22年「現代の名工」に選出される。

CNCマシン※までも自作して時計製作に臨んでいると聞いていた。浅岡 肇のアトリエを初訪問したとき、峻厳なまでの製作姿勢に背筋の伸びる思いがした。
※コンピューター制御による切削マシン

「部品のひとつひとつを手作業で作るベテラン時計師を尊敬しますが、それでも手作業のみでは、微細な誤差が生じてしまう。それを機械も用いて完璧に近づけたい」

そこに“精密加工の鬼”がいた。

彼のキャリアは、一般的な時計師とは大きく異なる。東京藝術大学を卒業後、グラフィックやプロダクトのデザイナーとして活躍。本格的に時計製作に取り組んだのは2008年。

「リーマンショック後、仕事が減り時間ができたことで、腕試しのつもりで」

トゥールビヨンを手掛けはじめたのが夏。年末にムーブメントはほぼでき上がり、翌09年春には外装も自作し、1年足らずで完成させてしまう。

その後も、大型のテンプをムーブメントのセンターに配した「TSUNAMI」、クロノグラフなどを発表。日本の精密加工のスペシャリスト企業2社とコラボしたトゥールビヨンも、日本のハイレベルなもの作りを発信するプロジェクトとして注目を集めた。

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『グランド漆・青山』 『KURONO TOKYO AOYAMA SALON』を2023年1月にオープン。その記念モデルで、独特な質感の3色の漆ダイヤルを用意。自動巻き、SSケース、径37㎜、3気圧防水。各100本限定、¥394,350。3モデルがそろった限定88セットは¥977,900。

世界のハイエンド・コレクターたちが熱い視線を注ぐ「HAJIME ASAOKA TOKYO JAPAN」の作品の一方、「浅岡肇のプライベートウォッチ」をコンセプトに立ち上げた「CHRONO TOKYO」およびその海外向けブランドで、カタカナの「クロノ」のロゴを掲げた「KURONO TOKYO」では、時計デザイナーとして力を傾ける。全工程を自身で手掛ける一点物の難しさはもちろんだが、量産化のためのデザインや発注の在り方には、別のハードルがある。それを、彼一流のノウハウでクリアしているのだ。「KURONO TOKYO」のモデルは、オンライン予約開始からわずか数分で完売という状況が続く。時計職人的観点とは異なるデザイナーとしての視点からの独創的な作風が愛好家の心を捉えているのは間違いない。

<<<ブランドの顔は時計師にあり。「Franck Muller」はこちら

Text: Yasushi Matsuami
Illustration: Mai Endo
Edit: Mitsuhide Sako(KATANA)

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