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人生を彩る新しいお酒の物語。
REUNIONの「WELLNESS GIN」とは? その②

2023.05.16

人生を彩る新しいお酒の物語。<br>REUNIONの「WELLNESS GIN」とは? その②

「WELLNESS GIN」は、ボタニカルに霊芝を用いたことで、唯一無二の個性を生み出したわけだが、HさんとIさんの熱情が向けられたのは、「味わい」だけではない。

「魂は細部に宿る」とばかりに、ふたりの思いは、「WELLNESS GIN」のすみずみにまで浸透している。そのひとつの象徴が、容器となる瓶だ。

なんと、ふたりは市中に出回っている瓶を回収し、洗浄、そこにジンを充填するという今まで誰も思いもしなかった過程を選択するのだ。

たしかに、ビール会社は古くから瓶を回収し、洗浄し、再び使うということをやってはいた。しかしこれは、大手メーカーが手がける大量生産品であり、販売ルートがすでに定まっているからできることだった。

流通の単位数量がきわめて少ない、しかも500㎖のジンでリユース瓶を使うことは、少し考えただけで無謀だということがわかる。恐ろしく手間がかかるのだ。

しかし、ふたりは挑んだ。リユースは、リサイクルしないワンウェイボトルと比較すると、80%もの温室効果ガスの削減が可能になる。カーボンニュートラルを掲げるふたりにとって、この仕組みの実現は必然だったのだ。

「そもそもは、クリエイティブにお金を使っちゃって、経理の人から『お金がない。瓶を買うお金がない』って言われて、どうしようか、というのが始まりでした。でも逆に、お金がないという状況は面白いと思いました。お金ってなんでもできるようだけど、お金があることで人の発想力や創造性が発揮されない、という側面もあると思うんです。お金がないとなって考えれば、面白いものが生まれる可能性はあるんです」(Hさん)

「お金と時間が脳みそを縛るんです。それがすごい嫌でした。お金のことを考えると、全部お金で止まってしまって、新しいものが生まれない。何かそこを工夫したりして初めて面白いことって生まれるじゃないですか。自分たちで考えて、アイデア出して。血が通うって、そういうことだと思うんです」(Iさん)

そこで出てきたのが再生瓶を使うというアイデアだった。

「ビール瓶でも一升瓶でもやっているし、実は最初、そんなに難しいことじゃないと思っていたんです。九州にある洗瓶屋を訪ねると、すぐにいいですね、ということになって。けれども、動いてみてわかったのは、瓶を集める仕組みが日本の社会にはなかったんですね。瓶のメーカーとか何社も訪ねて、話して、お願いしたけれど、結局、全部断られたんです」(Iさん)

それでもふたりは諦めなかった。逆に火が付いた感じだった。

「そういう仕組みがない国なんだなって思ったんです。ドイツとかほかの国ではやっているリユースなんですけどね。せっかく、僕らがお酒業界に入るんだとしたら、これをやり遂げたら、楽しませてもらうお酒業界に恩返しができるとも思った。新参者なりに、唯一無二の存在となって、みんなにとっても価値ある存在になる。リユース瓶にはそれだけの価値があると思いました」

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「お金と時間が脳みそを縛る……」という考え方が、リユース瓶の採用につながった。

その後、出合ったのは、明治時代から続く関東の洗瓶屋だった。

「そこの会長さんとお話をして、『君たち面白いね』と日本における洗瓶の歴史とかを話してくださり、協力してくれることになった」

もっとも、実際の作業は煩雑だった。

まず、瓶の口の口径を計り、18ミリのものだけを選別する必要があった。基準をクリアした瓶でも、すぐには使えなかった。商標権(商標に対して与えられる独占排他権)や意匠権の登録の有無など、リーガルチェックをしなければならない工程がいくつもあったからだ。もちろん、そのためには費用もかかる。

「ただ、それをやっても、瓶をゼロから作るよりは安かった。たぶん、洗瓶屋さんもずいぶん配慮してくださったと思うんです。僕たちは、このリユース瓶の仕組みが広がっていくことの意義はあると思ったし、自分たちかその最初の事例になればいいという思いでした」

ふたりを貫くのは、「たとえ先人が手を出してこなかったものであっても、自分たちでゼロからってしまおう」という気概だ。

表も裏も白いダンボール、微生物によって分解される糊、緻密なキャップデザインなどなど、思い描いたものはすべて製品に落とし込んだ。

「美しさやデザインを妥協したりすればできることはいっぱいあるんですけど、それができない性格なんです。値段が高いから諦める、ということもしたくなかった。高いなら安くなる方法を考えればいいわけで。仕組みからって、それで喜んでもらえる人が増えれば、それがまた楽しい。まだ世の中にないものや仕組みを提案して、それを商品化、現実化する。不自由で制限がある環境の中、ゼロから自分たちで新たなものを考えながらっていく。あまり人がやろうとしないことだけど、こんな楽しいことはないですよ」(Iさん)

ふたりが目指すのは、自分たちのスタイルで仕組みをり、その裾野を広げていくことだ。それがいつしか地球規模のものとなることも意識している。しかし、だからといって、ふたりの姿からは気負いや攻撃的な雰囲気は一切感じない。ふたりのスタイルは、あくまでもしなやかで、スマートで、優しい。

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    ブランドが目指す「環境再生型農業」に賛同する、鹿児島県指宿市のサツマイモ畑。まだまだ規模は小さいが、夢は大きい。

そんなふたりが今、強い関心をもって挑んでいることのひとつが、農業だ。もちろん、慣行農法の道はたどらず、「壊れてしまった地球の環境、生態系を取り戻す」ことを掲げた「環境再生型農業」を目指す。空気、水、大地、生物を守り、健康に育み未来へとつなげていくことが目標だ。

いくつもの支流から本流へと水を集めながら、すべては、ふたりが最初に掲げた「MAKE IT COLORFUL」(人生を楽しさで彩る)へと向かっていく。

「世の中をカラフルにするようなモノ、ヒト、コトを生むために貢献しつづける。世界はもっとカラフルだと訴え、世界中のアーティストたちとコラボレーションしていきたいと思っています」

出会いからわずか2年たらずで、妥協なき「ニュースピリッツ」を昇華させたHさんとIさん。これからいったいどんなカラフルな未来を見せてくれるのか、期待は尽きない。

※個人名を明記することにより特定のイメージを付与させたくないというブランド側の意向を汲み、登場人物名をあえてイニシャル表記にいたしました。

<<<人生を彩る新しいお酒の物語。その①はこちら

Text: Haruo Isshi
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)

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