特別インタビュー
インスタフォロワー数430万超!
ロシア人アーティストの自己プロデュース術
2023.05.26
インスタグラムの登録者数は約430万。世界中のファッショニスタやクリエイターが注目するロシア人アーティスト、エレン・シェイドリンさん。「人は、誰もがなりたい自分になれる」と、セルフ・ポートレートや絵画、スケッチ、動画と、自らをモチーフにし、インターネットを駆使して作品を世界中に向けて発信するアーティストだ。今、世界中から熱い視線を集める彼女に、アートが持つ力、そして「自分の好き」を発信する自己プロデュース術について聞いた。
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待ち合わせ場所に現れた彼女は、インタビュー前日に下北沢の古着屋で見つけたという、はっと目を引くお気に入りのビンテージアイテムをまとっていた。彼女のアーティストとしての原体験は、ビンテージショップで購入した洋服を、リメイクして販売したこと。ファッションは、彼女のクリエイティビティーにおいて大きなアイデンティティーのひとつである。
「14歳のときに初めてインターネットに触れて、ボタンひとつで自分の写真を世界に向けて発信できることを知ったのと同時期に、母親からタブレットをプレゼントしてもらったんです。そのタブレットで、何か作品を作ってみたいという好奇心から、リメイクした洋服を販売したり、写真を上げたり、自分で絵を書いたり、コラージュしたり。自分のクリエイティビティを混ぜ合わせて作品を作りはじめたことが、今の私のアーティストとしての原点です。インターネットに触れて、インフルエンサーになる機会をもらい、自分のアイデアを世の中にシェアできる機会を見つけらたことは、とてもラッキーでした」
カラフルなビジュアルに、コラージュなどのアート要素を採り入れたユニークな写真を、当初は母国ロシアのSNSで発信。インスタグラムにフィールドを変え、瞬く間に世界中にファンが増えていった。
「20歳から25歳くらいまで、毎日のように写真を投稿していました。でもそれは毎日何かを投稿しないとファンたちとのつながりが途切れてしまう、というプレッシャーを感じていたわけでなく、とにかく楽しかったから続けられたこと。私の作品はキャプションなどの説明を特に入れていませんが、それは作品を見た人の解釈に任せているから。写真自体に言葉はいらないからこそ、万国共通で共感してもらえるのかとも思いますし、美しさはそれぞれが感じ取るもの。それも、アートの楽しみ方のひとつかなと思っています。私自身、表現方法はいろいろありますが、特に写真とペインティングは、2人の子どもがいるような感覚。その私の作品を見て、自分のなかにいる小さな自分が目を覚ますように、好奇心を持ってもらえたり、想像力を働かせてもらえたらうれしいですね」
エレンさんは多くの人が当たり前に使うSNSやデジタルツールを駆使し、好きなことや興味のあることを積極的に発信することで、なりたい自分を実現してきた。ビジネスパーソンが現代のデジタル時代になりたい自分に近づくために、どのようなマインドが必要なのだろうか。
「今のデジタル時代では、当たり前のようにSNSやインターネットがあり、自分を表現し、自分になるための場所がたくさんあります。自分だけのユニークな道を進むということはとても大事ですし、ほかの人がどう思うか気になるのは自然なこと。私からのアドバイスは、自分らしさと自分の意見を見失わないこと、そして自分が本当に好きなことや興味あることを恥ずかしがらずに表現し、ほかの人と違っても大丈夫だという考えを持つことです。ぜひ自分の個性を受け入れて、自分をサポートしてくれる人、励ましてくれる人や、同じような考えを持つ人たちに囲まれながら、SNSを使って自分の才能やアイデアを表現してみてください。そして何よりも大事なことは、自分を信じることだと思います」
ここ数年、生まれ故郷であるロシアを離れ、海外で絵を学び、世界各地で展覧会を行うなか、コロナ禍、そしてロシアのウクライナ侵攻と、世界情勢が大きく動き、エレナさんは今、生まれ育った母国に自由に行き来ができない状況が続いている。そんななかでも、しなやかに活動の場と表現方法を広げている。
「私の故郷は、私が生まれ育ったところで、とても大切な場所です。今のように自由に行き来できない状況で、精神的につらいこともあります。でも、私は自分のルーツとのつながりが強く残っていて、それが私の一部だと思っています。私はアーティストなので、この気持ちが作品に直接的にも間接的にも表れます。私のアートは、私自身の経験や感情を表現しているので、たとえ故郷と物理的に離れていても、これから先も私はその独特な文化からインスピレーションを得続けるのだと感じています」
プロフィール
Elena Sheidlin(エレン・シェイドリン)
ロシア人のモデル兼アーティスト。自身を被写体に、ポップさとシュールさが絶妙なバランスで混じり合う写真シリーズをSNSで投稿している。ほとんどCGを使わずに自ら企画・構成し小道具も作り、独特な世界観で多くのSNS層をとりこにする。
https://www.instagram.com/sheidlina/?hl=ja
https://fat-collection.com/ellensheidlin/profile/1252
Text: Ai Yoshida
Photograph:Yuki Okishima