バッグ
グレゴリーの10年以上人気が衰えない絶対名品はご存じ?
ビジネスでも使えるバックパックの魅力はどこにあるのかを解明!
ファッショントレンドスナップ190
2023.07.11
日本を代表する有名企業の本社や海外メーカーのオフィスが集まる丸の内や有楽町周辺で、最近のビジネスマンはどのようなバッグを使っているのか、短い時間ではありましたが私なりに観察してみました。すると、ビックリの結果が!
かつてのビジネスバッグの代表選手だったナイロン系のブリーフケースやラグジュアリーブランドのレザー系バッグ(2つ持ち手)の姿は激減。約6割以上がバックパックやリュック、デイパックなどと呼ばれている新世代へ完全に入れ替わっていました。それも50歳以上のビジネスマンまでもが、使い慣れた感じで持っていたのが印象に残っています。
「なるべくしてなった、今更驚くことでもない!」「コロナ禍前からバックパックを愛用しています」と私を叱責する読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、そこのところはご勘弁を。かつては一部の人には受け入れにくかったビジネスシーンでのスニーカーが当たり前になっていたように、リュックもそれを否定する雰囲気は今やほとんどなくなってしまったようです。
ちなみにバックパックは、英語のBack(背中)とPack(袋)、リュックサックはドイツ語のRuck(背負う)とSack(袋)という意味。どちらもアウトドアで使うことが前提のサイズのものを指すことが多く、1日分のお弁当や水筒、仕事で使うノートパソコンや資料などが入るくらいの大きさで、比較的簡易的な作りで上部の開閉口が丸くカーブしているものをデイパックと使い分けることもあるようですが、日本ではそのあたりの使い方が曖昧。それに多機能化したデイパックなども出てきているので、厳密な区分はされていないのが実情です。そんなこともあり、今回この原稿では、すべてを総称する意味で、バックパックに統一して話を進めたいと思います。
またまた、出だしが長くなってしまいましたね。今回のコラムの本題は、次々に新しいバックパックが発表されている日本市場のなかで、10年以上基本的なデザインを変えずベストセラーとなっている絶対定番を取り上げたいと思います。
今回のジェントルマンは、スーツケースにバックパックを載せてロビーにいるところをスナップ。
フォーカスするのは、上に載せているバックパック。ブランドは、1977年にアメリカの西海岸のカリフォルニア州サンディエゴで創業したグレゴリー。山をイメージしたブランドロゴですぐに気づいた方も多いのでは。現在は、タウンユースからアウトドアまで性別年齢に関係なく人気ですが、日本で最初に注目されたのは登山家やバックパッカー向きに作られたパックで、長時間背負っても疲れにくく体にフィットする使用感は、日本で販売されはじめた当時はとても革新的でした。最新の素材を使った機能的な作り込み、機能美のあるデザインは、当時のアメリカの西海岸ならではの独特の雰囲気が感じられました。
「このバックパックは、2012年にデビューしたビジネスバッグシリーズのなかのカバートミッションデイというバックパックです。初期モデルから素材の変更や細部のデザインの変更はありましたが、基本的なデザインは変わらずに作りつづけられているグレゴリーの名作です。見た目は、クラシックなデザインなので機能面は大丈夫なのかと心配になる方もいらっしゃるかと思いますが、ビジネスシーンで必要な機能が満載されています」と語っていただいたジェントルマンは、実はグレゴリーを取り扱うサムソナイト・ジャパンの宮川 輝さんという方だったので、その解説はどんどん続くことに。
カバートミッションデイの素材は、初期モデルはバリスティックナイロンを使っていたのを2019年からはコーデュラナイロンに替えて軽量化をしています。それによって見た目のイメージがソフトになり、ハードなアウトドア感が薄れ、さまざまなビジネスシーンになじむように改良されています。
容量は22リットルあるので1泊2日くらいの出張ならこれひとつでもこなせるはずです。
グレゴリーのクラシックなバックパックやデイパックの特徴でもある、ファスナーの引き手についたレザージッパープル(ファスナーの開閉をしやすくするための革のテープ)は、このバックパックの大切なデザイン上のスパイス。個人的には、これがあることで80〜90年代のアメリカンプロダクトならではの質実剛健な雰囲気、グレゴリーらしさが残されているように感じます。
「このカバートミッションデイは、グレゴリーの同じカテゴリーのトレンディーでシャープなデザインのモデルとは違い、休日に使っても違和感をあまり感じないところが評価されているようです。いざとなれば軽いトレッキングや旅行などの幅広いシーンで使っても、なじんでくれるデザインがポイントです」と宮川さんの的確なフォロー。
シンプルでクラシックなデザインのカバートミッションデイには、ビジネスシーンで使える機能が細部にあります。
まずは出張に欠かせないスーツケースのハンドル部分が差し込めるスマートスリーブ機能。これがあることで、スーツケースを引っ張っているときに、バックパックが落下するといったことがなくなります。それと、今回のスナップのように、休憩中にバッグが一体化して自立しているので手荷物が認識しやすく、防犯的にも安全性が高くなるはずです。
一般的なビジネスシーンでの使い勝手も、抜かりはありません。一般的な15.5インチのノートパソコンが収納できるスペースが背面にあり、止水ファスナーで大きく開閉できるようになっています。
PCやスマホの類の電源コードやコンパクトなイヤホンなどを収納できる同素材で作られたマルチケースが付属している点も見逃せません。
そのほかにトップハンドルはレザーが巻かれているので、持ちやすくスーツとの相性もよくなります。
カラーバリエーションは、グレー(宮川さんスナップ)、ブラック(上の写真)、インディゴ、ブラックが用意されています。このバリエーションの豊富さは、ブラック一辺倒のビジネス用バックパックのなかでは抜きん出ていて、個性をそこでチラっとアピールしたい人には最適。
両サイドの下側には、濡れた折りたたみ傘や冷えたドリンクを入れても水滴が内部に浸透しないように内側に防水シートが貼られていて、底にはアウトドアのパックによく見られる水ぬき機能がしっかりついています。
こうした実際の使い勝手を追求し細かな部分にまで手を抜かない姿勢、アメリカンプロダクトらしいデザインを継承しつづけているという意味で、グレゴリーの右に出るブランドはないのではないでしょうか?
<商品>
カバートミッションデイ(グレー) ¥30,800
サイズ 28W×43H×18Dcm
問/グレゴリー/サムソナイト・ジャパン 0800-12-36910 https://www.gregory.jp/
最後に余談を。これほど日本でバックパックがビジネスシーンで普及したのは、コロナ禍におけるビジネスのカジュアル化だけではなく、小学生のときにランドセルで通学した経験や、70年代後半の西海岸ファッション、90年代の渋カジといった節目節目でバックパックがトレンドになっていたというベースも無視はできません。
雑誌ポパイやメンズクラブを読んでアメリカの最新スニーカーやバックパックを買った青年は、今や60〜70歳になっているのですから。丸の内や有楽町といった東京の都心部だけでなく、日本中にバックパックが広まっている理由は、そんなことも関係しているはずです。
Photograph & Text:Yoichi Onishi