週末の過ごし方
俳優・町田啓太と考える、装う美学。
重ね着を楽しむ、「長月」の装い。
2023.09.22
日本には四季折々に豊かな表情があり、それぞれにふさわしい「装い」がある。それは単に体感的な暑さや寒さをしのぐといった「機能」を追求するだけのものではなく、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)、つまりはTPOにそぐうものであるべき。そして、そのことに通底するストーリーを理解し装うことは、正しい「大人のたしなみ」と言えるだろう。
本連載は、一年の12カ月それぞれに季節を意識したテーマを掲げ、大人の男にふさわしいスタイルを模索しようというもの。小誌が培ってきたTPOに合うトラッドスタイルの知見と、現代を代表するファッションアイコン=町田啓太の表現力とのコラボレートにより、アエラスタイルマガジン流現代版「服飾歳時記」としてつづっていく。
アメリカントラッドを、
現代の感性で着こなすお手本。
「バック トゥ キャンパス」という言葉をご存じだろうか?
60年代のアイビーブームや、70年代後半~80年代はじめのプレッピーブームのころに、『メンズクラブ』や『ポパイ』といった雑誌の秋の大特集テーマとして頻繁に誌面を飾った言葉である。だがしかし、最近ではほとんど見かけることはない。
直訳すると「学校に戻ってくる」。つまりは新学期ということで、アメリカの学生たちが夏休みを経て少し大人になった顔で9月に颯爽(さっそう)と登校するスタイルが、当時の日本の“洋服好き”たちにとってはとてもあか抜けて映り、こぞってまねをする現象があった。
「はじめて耳にする」とは、町田啓太。とは言え、われわれが当時のオマージュとして用意したコーディネートは気に入った模様。
「レイヤードが楽しい。ニットの“プロデューサー巻き”は、若い人たちのほうがおしゃれに着こなしていると思う。前時代のイメージにとらわれず、軽やかに。自分ももっと感覚的に、このような重ね着をたしなんでみたい」
ネクタイのストライプの向きについても、町田は敏感だ。
「以前、向かって左に上がっているストライプはアメリカ式で、その逆がイギリス式と教わった。今回はスタイル的にアメリカン。そういう細部を知り、さりげなく気を配ることは、自分が役作りをするうえで大切にしたい」
探求心の旺盛さは、高校時代のエピソードからも伝わる。
「公式な学校行事では、ブレザースタイルにネクタイを締めていた。ネクタイを少しでも上手に結びたくて、寮の仲間たちとファッション誌をたくさん集めて読み漁っていた。あのころ、ファッションに限らず雑誌は教科書だった」
9月の和風月名の由来も諸説あるが、夜がだんだんと長くなる季節であることから夜長月、それが略され長月と呼ばれるようになったという。秋の夜長に知的なインプットを。その際、かつての町田のように「雑誌」がお役に立てることを、現代の編集者は切に願い、努力を誓う……。
FROM EDITOR
ファッション担当の編集者の夏は、今も昔も総じて慌ただしいものです。昨今ではその流れに少なからず変化もあるのですが、ファッションが特に盛り上がる秋冬に向けて、あれやこれや(ほぼ雑用?)に追われる日々を過ごします。僕たちの場合、そのひとつの成果が11/7(火)に発売する雑誌『アエラスタイルマガジン』vol.55(23年秋冬号)。ここには、ミラノを満喫した旅のひとときや、自然光が美しい都内スタジオでの時間、それから……。町田さんとのこの夏の記録(秋冬の情報)が、たっぷりと詰まっています。ご期待ください!
☆追記/本日、Voicy(無料音声配信)も公開! 町田さんとのおしゃべりをお楽しみください!
アエラスタイルマガジン編集長[雑誌・タブロイド] 藤岡信吾
町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『unknown』(テレビ朝日系)、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)など話題作に多数出演。映画『ミステリと言う勿れ』が公開中、10月には日本テレビ開局70年特別番組『THE MYSTERY DAY』とWOWOW連続ドラマW『フィクサー』Season 3、来年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』の出演が控える。
Photograph: Sunao Ohmori(TABLE ROCK.INC)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY
Edit & Text: Shingo Fujioka(AERA STYLE MAGAZINE)