週末の過ごし方
ゴルフ女子プロテストは合格率2%台の可能性も……
有力選手も壁に阻まれる超難関のリアル。
2023.10.27
女子ゴルフの最終プロテストが31日から始まる。会場はJFE瀬戸内海GC。日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)会員になるため、国内ツアーの試合に出るための厳しい戦いに計102人が臨む。合格するには、4ラウンド(R)のストロークプレーで20位タイまでに入る必要がある。7月に始まった1次予選からの受験者数を合計すると714人。合格率2%台になる可能性もある超難関で、2022年の全米女子アマチュア選手権を制した馬場咲希(代々木高3年)も受験する。これまでに実力を発揮できず、涙をのんだ有力選手もいる。人生を懸けたバトル。そのリアルをお伝えする。
最終プロテストには102人がエントリーしている。内訳は2次予選を突破した計94人と1次予選と2次予選出場を免除された8人を加えた数だ。JLPGAの規定によると、最終プロテストから出場できる権利を与えられる選手は、20、21、22、23年の日本女子アマ優勝者、日本女子学生優勝者、日本女子オープンローアマ、7月28日時点の世界ランキング50位以内、同じく世界アマチュアランキング10位以内、さらに今年のナショナルチームメンバーとなっている。
馬場は昨年の日本女子オープンロ―アマだが、世界アマチュアランキング10位以内の資格で、最終プロテストから受験の特権を得た。昨年、全米女子アマチュア選手権で日本人として37年ぶりの優勝を飾り、国内ツアーに出場時には大勢のギャラリーを引き連れるようになった。10月20日(現地時間)に最終Rが行われた米女子ツアーの来季出場権を争う2次予選会も15位で突破。日本勢は8人参加していたが、唯一の通過者となった。175センチの長身。長い手足を生かしたドライバーショットは時に270ヤードを超え、アプローチも巧み。順当なら合格だが、決して油断はできない。
理由は“一発勝負”の戦いで、受験者のレベルが上がっているからだ。近年は国際大会の優勝者、米ツアー、欧州ツアー転戦の経験者も不合格になっている。出場者は初日から20位以内の「合格圏内」を意識し、出遅れると焦りが出てしまう。3R終了時の下位選手はカット。年に1回しかない機会であり、すさまじい重圧から自分を見失う選手も少なくない。
1打差、2打差で不合格となったショックは計り知れない。合格者はツアー予選会(QT)を経て、翌年にはツアーの出場権と多くのスポンサーを獲得し、優勝するプロもいる。一方の不合格者は浪人生活を送ることになる。アマチュア資格のまま国内ツアーに主催者推薦出場(最大8試合)に出場もできるが、独特な緊張感のあるプロテストで実力を発揮できるかは別問題。現実に一昨年の最終プロテストで合格圏に1打、昨年は2打及ばなかった吉田 鈴(ツアー3勝・吉田優利の妹)は、今年は2次予選で不通過となった。
さらに言えば、高卒直後の最終テストで2打、翌年は1打差で不合格になった選手が、7度目挑戦の今年は1次予選で不通過になっている。今季は出場権を獲得して欧州ツアーを転戦している識西諭里は、8度目受験の今年は2次予選を腰痛で棄権。昨年の全米女子オープンに出場したアマチュアで高3の伊藤二花(麗澤高3年)は、初受験で2次予選を通過できなかった。
2019年以降はQT出場者がJLPGA会員に限られると規則が変わったため、国内ツアー、下部のステップ・アップ・ツアーに出場するためには、基本的にプロテストに合格するしかない。「受験者の数、レベルアップの状況を考えても最終プロテスト20位以内では厳しすぎる」の声は高まっているが、対して「この難関を突破できる強さがないとツアーでは活躍できない」の意見もある。確かに現在のツアーで上位にいるプロの大半は、一発合格、もしくは渋野日向子、原 英莉花らのように2度目の受験で合格を果たしている。
その現実を見ながらも、複数受験者は「このまま受けつづけても合格できないのでは」「下からどんどん強い選手が出てくる」「練習してもスイングの悩みが増えるばかり」「でも、子どもの頃からの夢をあきらめられない」と思いながらクラブを握っている。プレー代、遠征費、食費などで年間数百万円の出費が伴うのもこの世界。スポンサードは受けられるが、それがいつまで続くかはわからない。女子の場合はピークの低年齢化が進んでおり、有力選手の頭にあるのは「浪人は嫌、一発合格」のみ。そして、複数受験者もさまざまな対策をして決戦の場に臨む。結果が出るのは11月3日。実力と運を引き寄せられる選手だけが笑顔になれる。