週末の過ごし方
ドイツ・ウェッツラーで開催!
熱気渦巻くライカの2大イベントを現地レポート。
2023.12.01
フランクフルト空港からクルマでおよそ40分。ドイツ中部ヘッセン州にある人口5万人強の都市ウェッツラーの郊外に本社を構えるのがライカカメラ社だ。周辺一帯はライツパークと呼ばれ、同社の工場やミュージアム、ホテルなどを併設する。
今秋、この場所に世界中のプレスや関係者が招待され、2つの大きなイベント「セレブレーション オブ フォトグラフィー 2023」と「ライカ ウォッチ プレゼンテーション」が盛大に開催された。歓喜と興奮に包まれた現地の模様とライツパークの魅力を、3回に分けてレポートする。
「セレブレーション オブ フォトグラフィー 2023」は、今年で43回目となる国際写真コンテスト「ライカ・オスカー・バルナック アワード」の授賞式を行い、受賞者を祝福するイベントだ。
この賞についてライカカメラ社主アンドレアス・カウフマン氏はこう話す。「ライカ・オスカー・バルナック アワードは世界的に見ても非常に長く続いているアワードです。審査方法はノミネーターと呼ばれるキュレーターやギャラリーの方々の推薦によって、今回の場合は90名のポートフォリオを選出。そこから5名の審査員による最終審査を経て、受賞者を決定します。アワードのクオリティを保つためには、最初の段階でキュレーションによってポートフォリオを厳選することがとても大事だと考え、4年前からこの審査方法を採用しています」
ちなみにスマートフォン以外のカメラで撮られたすべての作品が審査対象になる。ライカのカメラで撮影された写真に限らない、広く門戸が開かれた賞なのだ。
イベント会場となったライカカメラ本社のエントランスにはレッドカーペットが敷かれ、プレスや関係者などのゲストはドレスアップした姿でセレブリティさながらに入場。広いロビーには円テーブルが並び、着席形式で料理やワインとともに賑やかに授賞式を見守った。
式はライカカメラ社の有志で構成されたクワイアによる合唱やミュージシャンによるミニライブも行われるなど、終始アットホームな雰囲気で進行していく。
そして、場内のボルテージが高まったところで、今年の「ライカ・オスカー・バルナックアワード」(プロのフォトグラファーが対象の一般部門)と「ライカ・オスカー・バルナック・ニューカマーアワード」(新人部門)の受賞者が発表された。
まずは2023年度の「ライカ・オスカー・バルナック・ニューカマーアワード」から。名前を呼ばれたのは、中国の樂子毅氏!
<<樂子毅氏の作品はこちら
コロナ禍の状況下、中国のソーシャルメディア、ウェイボーで見つけた被写体にアプローチ。1993年生まれの彼と同年代の人たちの叙情的な姿や表情をとらえた写真が評価された。
興奮冷めやらぬ中、いよいよ「ライカ・オスカー・バルナックアワード」受賞者の発表となる。会場全体が固唾を飲んでステージに注目する中、栄冠に輝いたのは……バングラデシュ出身でニューヨークを拠点に活動するイスマイル・フェルドウス氏!
<<イスマイル・フェルドウス氏の作品はこちら
故国バングラデシュのコックスバザールを舞台に、ビーチで過ごす人たちを撮影した淡く美しい色調が印象的な作品が、2023年度の頂点に立った。
写真を通じて自分が守りたいものや気になっているものを多くの人に伝えることが好きになったと話すイスマイル氏。「バングラデシュのコックスバザールは世界最大の難民キャンプのある場所としても知られていますが、バングラデシュ人としてこのビーチについて、負の側面だけではなく楽しいイメージも訴求したくて今回の作品を撮影しました」イスマイル氏のさらなる活躍が楽しみだ。
授賞式のあとは、ライツパーク内にあるエルンスト・ライツ・ミュージアムへ移動し、樂子毅氏とイスマイル・フェルドウス氏の受賞作品のほか、ファイナリストの作品が展示された展覧会を鑑賞。さまざまな意図や方向性をもとに撮影された作品をじっくり観ながら、写真の素晴らしさや可能性をあらためて実感できる時間となった。
Photo & Text:Hiroya Ishikawa