接待と手土産

「すや」の栗きんとん。
すべて実食! 自慢の手土産 #120

2023.11.30

「すや」の栗きんとん。<br>すべて実食! 自慢の手土産 #120

ほろっとほどけて、口いっぱいに秋の香りが広がる。

秋から冬にかけて、私の手土産によく登場するのが「すや」の「栗きんとん」だ。裏ごしした栗を茶巾で絞った素朴なお菓子だが、気品もあって、和菓子好きにはもちろん、洋菓子派にも本当に喜ばれる。手土産にするときは、相手には10個入りや15個入りを、そして必ず6個入りを自分用に購入する。

箱を空けると和紙に包まれた5㎝弱のお菓子が行儀よく並んでいて、そのひとつを手に取って開くと、栗を模した楕円形の栗きんとんがお目見えする。真ん丸ではなくちょっとだけ横長な姿も気に入っているし、こんなに小さくて派手なデコレーションもないのに、食べる前からしっかりと「おいしいぞ」と訴えてくる力強さにも感心する。布でひとつひとつ絞るように成型した絞り跡があり、手作り感も満載。ちょっと脱色したようなナチュラルな栗色もお気に入りだ。

口に含むと、まさに栗。ほんのりとした栗の甘さと風味が口いっぱいに広がってくる。すごくしっとりしているかというとそうではなくて、栗独特のホクッとした感じを残しながら、ほろっとほどける。ひと口でこんなにも幸せな気持ちになれるのか。

創業は江戸中期の元禄年間。店名の由来でもある酢屋からスタートし、何回か業種の変更を繰り返して、8代目のときに栗きんとんをはじめとする和菓子屋に転身。今は11代目の赤井良一さんが老舗を守っている。原材料は、地元・岐阜と九州産を中心に厳選した栗と砂糖のみ。今は冷凍や真空の技術も進化し、栗を長期保存する技術もあるかもしれないが、季節感を伝えることも和菓子の大切な使命。その時期だからこそのおいしさを伝えたいという。すやの栗きんとんが手に入るのは9月から1月頃まで、栗の出荷の終了と共に終了する。

作るのも本店の職人のみで、機械は使っていない。昔ながらの手作業で「栗ハ栗ノ味デ」「きんとんは栗のかたちにもどす」という伝統を大切に守っている。保存料を使わないから、賞味期限は製造日から5日間。都内のデパートにも本店から直送しているという。数に限りがあって、すぐに売り切れることも多いから、必ず午前中に買いに行き、その日のうちに贈るようにしている。少々苦労はするものの、受け取った人の反応は上々で、自信を持って贈れる、本当の意味での逸品なのだ。

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【本文】
すや
岐阜県中津川市新町2-40
営業時間/9:00〜19:00(17:00閉店の場合あり)
定休日/水曜日(9月〜12月は無休、1月1日は休業)
価格/6個入1814円、10個入2991円、15個入4449円 ※税込み
問/0573-65-2078・フリーダイヤル0120-020780
https://www.suya-honke.co.jp/

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