接待と手土産
「天のや」の小倉トースト
すべて実食! 自慢の手土産 #119
2023.11.16
丹波の大納言をたっぷりと挟み込んだ甘くて香ばしいトースト。
麻布十番の路地裏にひっそりとたたずむ老舗の甘味処「天のや」。ふんわりと厚みのある出汁巻き玉子を挟んだ「玉子サンド」があまりにも有名な店だが、私が手土産としておすすめしたいのは、人気を二分するという「小倉トースト」だ。そもそも餡(あん)バターや餡マーガリン、小倉餡と生クリームなど、餡に塩味や甘味がプラスされたものが大好物ということもあるが、この店の小倉トーストのおいしさは格別だ。
昭和2年に大阪で創業し、小豆のおいしさで人気の甘味処だったが、平成14年に東京・麻布十番に移転。移転当時はホームページもなく、大阪の常連客もあまりに突然のことで、所在を探している人も多かったようだ。徐々に口コミが広がるなか、関西のテレビ局の「あの店はいまどこに」という番組企画で全国放送されたのをきっかけに爆発的に知名度が上がったという。ただ、衰え知らずの人気の本当の理由は、創業当時からの味へのこだわりだろう。
使う小豆は丹波の大納言のみ。年間600トンほどの十勝産に比べると丹波の大納言は、国内生産量の1%にも満たない貴重品。粒が大きく、皮が薄く、色つやもいい、最高級の小豆として知られている。とにかく豆の風味が別格で、これなくしては天のやの味は出せないとは3代目店主の天野博湖(ひろこ)さん。「本当に希少価値が高いため、お値段もいい」。でもこれだけは代えられないそう。
小豆は、一晩浸して水分をたっぷりと含ませてから、翌日、三温糖を加え、ほどよい圧力を掛けながらじっくりと蒸し煮にする。これをゆっくりと冷ましてから使う。ストレートに味わえるあんみつやぜんざいに使うならまだしも、トーストに挟んでプレスするのは本当にぜいたくなことだ。実はこの小倉トーストがメニューに加わったのは麻布十番に移転してから。天野さんが、
サンドイッチ用のパンに純度の高いこだわりのバターを塗って、たっぷりの小豆を挟み、プレスする。プレスすることで全体的に香ばしさが増し、また端のカリッとした食感も味わいに一役買っている。こんがりと焼き上げたホットサンドの切り目から、粒々の大納言がお目見えして食欲をそそる。甘さ控えめで、ほんのりとしたバターの塩味もいい。日本茶との相性もいいが、私は断然コーヒーと合わせる派。仕事の合間のコーヒータイムにはもってこいだ。
4つにカットされているから、つまみやすく食べやすい。価格もお手頃。オフィスへのちょっとした差し入れには、この上なく使い勝手がいい。すぐに売り切れてしまう人気商品なので、贈り物の際は前日までの予約が必須だ。
天のや
東京都港区麻布十番3-1-9
営業時間/12:00~16:30、18:30~22:00
定休日/毎週火曜、その他不定休
価格/小倉トースト1296円 ※テイクアウト・税込み
問/03-5484-8117
https://amano-ya.jp/