接待と手土産
「メゾン・ダーニ シロカネ」のガトーバスク
すべて実食! 自慢の手土産 #122
2023.12.14
パティシエのスイーツ愛とバスクの美食文化が生んだ最高の焼き菓子。
ガトーバスクは、フランス・バスク地方の伝統菓子。ここ数年ちらほら目にするようになったが、スイーツ通の間では以前からよく知られた存在だ。もともとは捕鯨船用の保存食がルーツで、捕鯨が盛んなバスク地方の伝統菓子として定着。当初はクッキーのような簡素な焼き菓子だったが、今ではバスク特産のダークチェリーのコンフィチュールを入れたものが一般的だ。そのガトーバスクのおいしさを実感させてくれたのが、白金の「メゾン・ダーニ シロカネ」。 シェフパティシエの戸谷尚弘さんが2015年にオープンしてから8年が経つが、常に客足が途切れることのない人気店だ。
店の主役のガトーバスクは、戸谷さんにとって特別な存在でもある。パリの老舗洋菓子店「ラ・ビエイユ・フランス」の修業時代に、勉強も兼ねてよくスイーツを食べ歩いていたが、そのときに出合ったのが海辺の町、ビアリッツにあった老舗菓子店「ミルモン」のガトーバスク。初めて食べたときの衝撃と感動は今でも忘れられないという。それから数カ月後、気がつくとミルモンの門をたたいていた。いまメゾン・ダーニで提供しているのは、戸谷さんを魅了したガトーバスクそのものなのだ。
シェフの人生をも左右したこのスイーツは、食べた瞬間に口いっぱいに広がるアーモンドとバターの香りと、コンフィチュールの甘酸っぱさとのコンビネーションだ。そしてもうひとつの魅力はザクザク感。最近は軽めのサクサク感を重視するお菓子が多いが、郷土菓子の持つ素朴さと力強さを残している。食べごろは3日ほどだが、ザクザク感全開の初日の感動はいわずもがな。少ししっとり感を感じる2日目も感動は続き、味が落ち着き、さらにしっとり感を増した3日目も捨てがたいおいしさだ。
基本のダークチェリーに加えて、現在はカスタードクリーム入りのものや、バレンタインに人気を博して定番となったチョコレート生地のもの、また長野・小林農園のリンゴのコンフィチュールを使った季節限定ものなど、常時5~6種類を販売している。
さらに戸谷さんのスイーツ愛を実感するのが、焼きの回数だ。お菓子の一番のぜいたくは焼きたて。実は焼き菓子を最もおいしく食べているのはパティシエたちだという。その最高の状態を、できるだけ多くの人に体験してもらいたいから、朝8時から閉店前まで1日に10回以上焼き上げて、熱々を店頭に並べる。ラッキーな日は、この焼きたてに出合うこともあり、手土産用とは別に購入して、頰張りながら至福を味わうのだ。
8時というスイーツ店にしてはかなり早いオープン時間にも愛が。早朝に店に寄って、その足で飛行機や新幹線に乗り、遠方の商談先に持って行ったり、帰省の手土産にしたりと、客の生活に寄り添うことを考えてのこと。戸谷さんと話していると、お客さまに少しでもおいしいものを提供したいという思いがしみじみと伝わってくる。そんな愛あふれるパティシエが作る最高のガトーバスクを、昨年まで控えていた年末のあいさつ回りの手土産や新年のお年賀として贈ってはいかがだろうか。
メゾン・ダーニ シロカネ
東京都港区白金1-11-15
営業時間/8:00~19:00
定休日/火曜
価格/ガトーバスク、ガトーバスク オウ ショコラ、ガトーバスク ア ラ クレームなど、各550円 ※税込み
問/03-5449-6420
https://valuet.co.jp/maison-b/mdahni/