週末の過ごし方
『鴉羽ばたけば』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #66
2024.02.22
育ってきた環境や世代によって、人の価値観はさまざま。社会に出れば、誰もが一度くらい世代間によるギャップを感じたことがあるだろう。X世代、Y世代、Z世代、ゆとりだとか、空白のだとか、時代の変化によって呼ばれ方も変わる。
『鴉羽ばたけば』は、“現在”を発信し続けるニュース番組において、番組の決定権を持つX世代と、新しい発想でSNSやネット情報で巧みにのし上がり、やがて脅威の存在となるZ世代との衝突を描いたドラマ。これぞまさに“社内世代間バトル”とでも言おうか、容赦なく繰り広げられる争いの数々……。こんなの、ハマらないわけがない!
大学生のアスルは、人気キャスターのラーレ・キランに異常なほど憧れていた。ラーレは、徹底的に裏を取り、真実だという確信がないと報道しないと心に決めているストイックなジャーナリスト。ラーレのようになるためには、まず彼女の下で働くのが一番の近道と考えたアスルは、インターン生と偽り社内に潜り込み、社内の人間をSNSでリサーチし、行動範囲からほかのインターン生を陥れるための作戦を練り、無事全員を追い出すことに成功。晴れてテレビ局への入社が決まった。
当然、入社してすぐは、雑用ばかりの毎日。現場を見て学べというが、アスルの目的は、ラーレを失脚させ、その席を奪うこと。もっと早く上り詰めるにはどうすれば?と考えていたところ、社員のある人物が、社内の極秘情報をSNSにリークしていることを知る。
その存在は、いずれ番組にとって脅威になりかねないと以前から問題視されていたものだった。アスルは、ばらされたくなければ……とその人物につけこみ、味方につけ、宣戦布告。X世代組こと番組の上層部たちの裏話や、公にされたくない内部事情が次々にリークされ、社内に不穏な空気が漂う……。果たして、X世代はどう立ち向かうのか!?
決してアスルの行動がZ世代の象徴として描かれているわけでもないが、これらのことが起こりうるのも事実。アスルの価値観では、ラーレたちX世代のしてきたことはすべて時代遅れで、汗水たらして働く時代は去り、SNSでの人気こそすべてだと思っているのだ。
しかし一方でラーレらX世代は、数々の経験をこなし、真実と真摯(しんし)に向き合ってきた。デマやフェイクニュースが横行する現代で、ジャーナリズム精神を貫き、現在の報道スタイルを築き上げてきたのだ。自身の人生がさも輝いているように見せるために都合よく編集し、表面だけ着飾っているアスルとは対局の存在なのだ。
加速するアスルの悪だくみに、少々呆れてしまう部分もあるが(驚くほどうまくいく)、ラーレにも問題がないわけではない。物語が進むうちに、アスルの才能を見つけたり、ラーレの古き良き精神に疑問を抱いたり、世代によってさまざまな感想を持つだろう。
昨年末、待望のシーズン2が配信され、思いもよらぬ展開に驚きが隠せない。これが時代の変化なのか? 皆が望む報道とは? 早々と変化していった時代に、当たり前に起きた価値観の違い。果たしてこの闘いに、終わりは来るのか――? ぜひ、見届けてほしい。
トルコ発の泥沼世代間バトルドラマ『鴉羽ばたけば』は、Netflixにてシーズン2まで配信中。
Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo