接待と手土産

「筒井時正玩具花火製造所」の花と蕾。
すべて実食! 自慢の手土産 #132

2024.05.30

「筒井時正玩具花火製造所」の花と蕾。<br>すべて実食! 自慢の手土産 #132

夏の夜を彩る日本で唯一の純国産の線香花火。

夏の風物詩と言えば、花火。華やかに空を彩る打ち上げ花火もいいが、小さな火花が次々と表情を変えながら舞い、十数秒ではかなく散る線香花火も趣深い。そんな線香花火をアップグレードしたのが「筒井時正玩具花火製造所」。季節感があり、意外性もある、ワンランク上のギフトだろう。

創業は昭和4年。子ども向け玩具花火の製造を続けて95年を数え、現在は3代目の筒井良太さんと妻の今日子さんが切り盛りする。線香花火は、実は東西で形が異なる。関西の「スボ手牡丹」は400年変わらない線香花火の原形で、藁(わら)の先端に練り火薬を付けてそれを乾燥させたもの。紙すきが盛んだった関東では、藁の代用品として紙で火薬を包む「長手牡丹」が作られ、それがスタンダードとして全国へと広がっていった。確かに四国生まれの私が幼いころになじみがあったのはスボ手牡丹だった。

その伝統的な東西の線香花火の両方の技を生かして新たに開発したのが、今回紹介する「線香花火 筒井時正」だ。夏になると毎日のように花火をしていた生粋の花火ファンの今日子さんは、この家に嫁いで、大量生産の工業製品とは一線を画す、手作りの花火ならではの大変さと素晴らしさを目の当たりにする。例えば、使用する火薬の量はわずか0.08グラム。100分の1グラムの違いが、燃え方を大きく左右する。火の玉が落ちずに最後まで美しい火花を放ち続けるためには、火の玉を支える“首”にあたる部分が最も重要だが、人差し指と親指に全神経を集中させ、強弱をつけながら撚(よ)っていく。小さな1本に凝縮された職人技と、花火にかける熱い思いをもっと多くの人に知ってもらいたい。その一心で花火づくりに取り組んでいる。

素材にもとことんこだわり、火薬には宮崎産の松煙を、紙は福岡県八女市の手すき和紙を使い、その和紙を草木染めして、職人の手によって1本1本丁寧に撚り上げていく。夏のイメージが強い線香花火だが、一年を通して楽しめるようにと、春夏秋冬を表した桃・水・橙・白の4色で染めた「蕾」と、持ち手部分を花びらに仕立てた「花」の2種類があり、風情のあるロゴ入りの紙パッケージや桐箱に入った詰め合わせも用意されている。

私は子どものころ、毎年夏になると、東京から帰省する叔父叔母、従妹たちと祖父母の家に泊まって2週間ほど合宿のような生活をしていた。みんなで夕食を囲んだあとのお決まりは、縁側での花火。その祖父母も亡くなってしまい、それから数十年の時が過ぎたが、今でも夏になるとその光景を必ず思い出す。心に刻まれた楽しい記憶だ。この夏は、そんな心に残る思い出を作ってほしいという気持ちを込めて、懐かしくて新しい線香花火を贈りたい。

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筒井時正玩具花火製造所
福岡県みやま市高田町竹飯1950-1
価格/花(花と蕾のセット・42本入り)8800円、蕾々(蕾4色×8本・32本入り)5500円など ※税込み、送料別
問/0944-67-0764
https://tsutsuitokimasa.jp/

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