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『フォールアウト』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #73

2024.05.30

『フォールアウト』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #73

「人は過ちを繰り返す」

核戦争によって滅んだ後の世界を描いた人気ゲームシリーズ「Fallout」が、ついにドラマ化! いったいどのシリーズを実写化するのか?とファンは心待ちにしていたが、世界観はそのままに完全新エピソード、新キャラクターで制作されており、かねてからのファンは大歓喜、予備知識がない人も存分に楽しめる内容になっている。

2077年、長年続いていたエネルギー問題が引き金となり、世界の主要都市で核戦争が勃発。たった2時間ほどで都市は壊滅し、文明は滅びた。2050年代ごろから米国は、戦争や疫病の蔓延(まんえん)を恐れ、地下にVaultと呼ばれるセーフハウスの建設が進められていた。空襲警報とともに避難したわずかな人々は生き延び、荒れ果てた地上で暮らす者(レイダー)と、放射能汚染から身を守り、小さなコミュニティがいくつもあるVaultで暮らす者に分かれた。

それから219年後、Vault33で豊かに暮らしていたルーシーは、結婚を控えていた。血縁者が多くいるVaultでは子孫を繁栄させることができないため、近隣のVault32の男性を迎え入れ結婚することとなった。結婚をするために奉仕活動にいそしんでいたルーシーは、期待に胸を躍らせていた。

友好的な結婚式を終え、ついに初夜を迎えるというときに男の姿は豹変、なんとルーシーに襲いかかってきたのだ。なんとか男を抑え込み部屋の外に出てみると、新たに迎え入れようとしていた者たちとVault33の皆が戦闘している。どうやらVault32の住人だと迎え入れた者たちは、モルデイヴァーが率いるレイダー集団だったのだ。

武術など訓練してきたVaultの住人の戦闘スキルもむなしく、ルーシーの父は連れ去られてしまった。父を助けるため、ルーシーはまだ見たことのない地上へと向かう。

戦争後地上は、BOSという軍事組織や、なんとか生き延びた人々の少数コミュニティがあり、放射能汚染により変異してしまった人間グールや、巨大化した生物たちの脅威にさらされながら、ヒトとしての理性を失った無秩序な世界が広がっている。

一方、危険にさらされることもなく、豊富な資源に囲まれ平和に暮らすVault居住者たちは、ひとりの監督官がVault内を仕切り、独特のルールを徹底的に教育し、自給自足で暮らしている。ここでの暮らししか知らない住人たちは、何も疑問に思うことなく、生活してきたのだ。

これらの設定は、フォールアウトの醍醐味(だいごみ)、ブラックすぎる風刺描写なのだ。過去に原爆兵器を使用したアメリカに対する批判、商業主義の成れの果て、情報に振り回される稚拙さなどなど、数々の風刺がちりばめられている。

選択肢がないがゆえに集められたVaultで、大企業が構築したルールに支配されていることも気づかずに生活している滑稽さを、そして自分たちが開発した原爆によって、後世まで続く人類や生物たちの突然変異による恐怖を皮肉たっぷりに描いている。

一度荒廃した世界ゆえに、地上の世界は砂漠の広がる1950年代のような雰囲気を持つが、人々が核戦争前から使用しているピップボーイというウェアラブルコンピューターを身に着けていたり、お手伝いロボットがいたり、スチームパンクなゲームの世界観がそのまま再現されている。

ゲームファンにとっては、あのアイテムが!あのパワーアーマーが!と、再現度の高さに大歓喜。これほど原作ファンに支持された作品は、過去にないのでは?と思えてしまうほど高評価だ。

ゲームをプレイしていない人に向けて世界観をより理解できるように、Amazon Prime Video内に、特典映像としてVAULT-TEC社によるVaultの説明や企業説明が観られるほか、「探す」タブには登場人物の説明や歴史などが詳しく掲載されているので、エピソードを鑑賞中いつでも確認することができる。

地上で現実を目の当たりにしたルーシーは、果たして真実に対してどう向き合ってゆくのか? シーズン1が配信されてから、わずか1週間でシーズン2への更新が発表され、今もなお考察や予想など、SNSでの話題も尽きない。

とにかく早く続きが観たい! すっかりフォールアウトロスになってしまった人は、この機会にゲームをプレイしてみてほしい。作中に出てきたあれもこれもが登場し、よりドラマを楽しむことができるだろう。

「フォールアウト」シーズン1(全8話)はAmazon Prime Videoにて配信中。

<<過去の「いま観るべき、おしゃれな海外ドラマ」はこちら

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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