週末の過ごし方
南紀白浜で2日間だけのサイトスペシフィックな食体験。
五感で旬を味わう「The Echo Table」の魅力
2024.06.06
ここ数年、人も自然も、循環することが心地よい、という時代の空気感も相まって、自分自身が興味を持つレストランの指向が大きく変わったように思う。その時季だからこそ出会え、その場所だからこそ味わえる、地産地消のレストランや、日本が誇る食文化である発酵を積極的に取り入れたローカルガストトロノミー。季節を変えてわざわざその場所へ行きたい、たとえそれが2〜3時間かかろうとも! という食への飽くなき探究心は、食べることと旅が好きである、という趣味嗜好だけでなく、その土地が持つ固有のエネルギーと、作る人のエネルギー(愛情とも言える)が注がれた“サイトスペフィシックな食体験”に価値を感じるようになったからかもしれない。
地元和歌山の食材を、五感で味わいつくすぜいたくなイベントへ
夏の気配を感じた、気持ちのいい4月のある日。唯一無二の食のイベントを体験すべく、東京から飛行機で約1時間、和歌山県南紀白浜にあるリゾートホテル「SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE」に向かった。2日限りの特別な饗宴「The Echo Table(ジ・エコー・テーブル)」である。
「The Echo Table」は、2023年4月からスタートした、開催地・和歌山に暮らす人々の手によって作り出された地元の旬の食材を五感で楽しむ食のイベントだ。ゲストシェフ、そしてサウンドクリエイター、フローリストなどのアーティストによって「その瞬間だけの特別なテーブル」を生み出すエクスクルーシブなダイニングは、まさにここだけでしか味わえないサイトスペシフィックな体験と言えるもの。
第一弾は、ミシュラン二つ星レストランvilla aida×注目女性シェフnao氏がゲストシェフとして参加。第二弾には中国料理の巨匠・脇屋友詞氏と日本を代表するするパティシエ鎧塚俊彦氏のコラボレーションが実現。そして第三弾となる今回、ゲストシェフとしてフィーチャーされたのは、東京・銀座に店を構える「肉屋田中」店主であり、肉の匠・田中 覚シェフ。「Flavor of WAKAYAMA」をテーマに、田中シェフが得意とする最高級の神戸牛と、和歌山県の旬の食材を使ったお料理が、美しい南紀白浜の夕暮れから夜にむかう空の移り変わりとともに全10皿提供された。
夜の会は、夕方17時にスタート。料理前のアペリティフから、特別なプレゼンテーションが始まる。田中シェフによる神戸牛を使った4種のフィンガーフードにあわせるのは、世界最古のシャンパーニュメゾン「ルイナール」を代表する、シャルドネのみからつくられる「ルイナール ブラン・ド・ブラン」。ぜいたくなドリンクを片手に、これから始まる特別なダイニングに心が躍る。
スペシャルダイニングの会場となったのは、インフィニティプールに隣接する太平洋を望む特設テラス会場。和歌山市のフラワーショップ「bois de gui」が田中シェフの食に対する愛を、薔薇の花言葉である愛情とかけあわせて、フラワーデザインとして表現。白い空間に赤いバラという演出は、海外のリゾートにいるような、夢のようなぜいたくさだ。
さらに「The Echo Table」のユニークネスと言えるのが、南紀白浜で採取した海や風、水の音、鳥のさえずりなどの環境音とサウンド生演奏による、一皿一皿食事にあわせたワインのペアリングならぬ、「音のペアリング」である。五感で感じる一皿の体験に、場所である南紀白浜を肌で感じるサウンドの感覚が加わることで、まるで料理がインスタレーションアートのような、ここでしか味わうことのできない特別な経験になる。
肉師人生30年、肉の匠である田中シェフのこだわりがつまったスペシャルコースの主役は、なんと言っても今回のイベントに向けて特別に落札された一頭の神戸牛! 柔らかく甘みのある脂が特徴の最高級の和牛である神戸牛をメインに、ワイングラスで提供される濃厚で香り高い「神戸牛コンソメスープ」からスタート。
神戸牛のもも肉と地元和歌山産の天然真鯛を組み合わせた「海苔巻き 神戸牛赤身肉 昆布〆紀州鯛」、メインディッシュの「神戸牛サーロイン BBQステーキ」などなど、田中シェフの手によって神戸牛と旬の和歌山県産の食材が一皿一皿、この日、このイベントだけのスペシャリテとなっていた。
30年間和牛と向き合ってきた田中シェフの腕が光る10皿のフルコースのあとに待ち構える、さらなるお楽しみの時間、バータイム。今回は、世界トップクラスのバーやホテル・カフェで活躍し、現在京都に拠点を構えるバーテンダー小林紀氏による、料理の原点である焔(ほむら)を抱く素材、和歌山県産の紀州備長炭とメスカル、アマーロと生姜を使ったカクテルと、カシスの自家製シロップとジンジャービアを使ったモクテルがサーブされ、特別な食体験の余韻を楽しむひとときとなった。
太平洋に沈む夕暮れの美しさに心奪われながら、ここだけでしか体験できないフルコースを味わいつくす。そして、日が暮れてからのしっとりした時間はこだわりのお酒を片手に、大切な人たちと特別なひとときを分かち合う。料理・サウンド・アート・お酒を五感で堪能する「The Echo Table」は、身体も心もうるおう時間になることうけあいだ。
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SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE
「The Echo Table」会場となった南紀白浜のリゾートホテル「SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE」であわせてチェックしたいのが、貸切利用のサウナハウス「SAUNA HOUSE on」だ。こちらのお部屋には、個室プライベートサウナとオーシャンビューの水風呂や露天風呂、ミニキッチンやナチュラルワインを中心にしたワインセラーがあり、なんとフリーフローで滞在を楽しむことができる、サウナーにはたまらない注目の施設だ。
家族や大切な仲間と、シーンに合わせた自由な使い方ができるとのことで、朝、都内から飛行機で南紀白浜に来て、この部屋でビジネスミーティングをするビジネスパーソンもいるとか、いないとか……。ホテルの館内には電源つきの快適なワークルームも完備されているため、夏には白い砂浜が広がる白浜ビーチまですぐそこ、目の前に太平洋を望む開放感溢れる場所でワーケーションという選択も、ビジネスパーソンにぜひおすすめしたいこの夏の楽しみ方だ。
「The Echo Table」は今後も継続的にエクスクルーシブなイベントを開催していくとのこと。ぜひ、次の機会に南紀白浜でしか体験できない、サイトスペシフィックな食イベントに注目してみてほしい。
問/The Echo Table(ジ・エコー・テーブル)
https://www.instagram.com/theechotable/
取材協力/SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE
https://www.keyterrace.co.jp
Edit& Text:Ai Yoshida