週末の過ごし方
『9-1-1:LA救命最前線 』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #76
2024.07.11
ロサンゼルスを舞台に、通報を受ける911指令室、駆けつける消防士や警察官を描いた全米メガヒットドラマ。木から降りられない! 閉じ込められた!など日常生活での緊急事態から、大地震などの自然災害、飛行機事故や商業施設の大規模火災など、助けを求める人々のコールは鳴りやまない。
911指令室での仕事は、通報を受け、消防隊や警察を手配するだけが仕事ではない。緊急を要しているのは本人なのか、それともその光景を目の当たりにした第三者なのかを聞き、本人ならば救助がしやすいように状況を聞き出し、言葉をかけ安心させ、今できることを探り、救助隊が到着するまで話しつづける。第三者の場合、けが人の状況を聞き、適切な応急処置の説明をし、救急隊の到着まで命をつなぐ役割をしている。
アメリカの消防士は日本と異なり、救急車と消防車両方の役割を担っている。通報を受け、閉じ込められている人がいれば、電動のこぎりなどで障害物を取りのぞき救出し、けが人や病人の症状を見極め、点滴や心肺蘇生など応急処置をし、外科的治療以外を行いながら病院へ向かい、医師に引き渡す。
ロサンゼルスならではの観光名所が危険にさらされるストーリーも多く登場し、ハリウッド大通りが動物に占拠されたり、ベニスビーチが津波に襲われたり、大きな土砂災害でハリウッドサインが倒れたり、ドラマでよかった……と思いながら、映画さながらの緊張感にあふれ、壮大な映像体験ができる。
いわゆるアメリカドラマの王道とも言える、医療ドラマや刑事ドラマをミックスしたような作品。ロングランなだけに時事問題を絡めたエピソードも多く、記憶に新しいコロナ渦もリアルに描いた。サイバー攻撃や、自動運転、AI搭載のスマートホームでのトラブルなど、実際に起こりうるかも!と、好奇心をくすぐるものばかりだ。
人気の理由は、それぞれに寄り添い家族のように固い絆で支え合う、消防士たちのキャラクターだろう。登場人物も多く、過去の出来事から現在までひとりひとり丁寧に描いているため、誰もが誰かに感情移入することができる。消防士が子どもたちに大人気なのも納得。自分の命さえも危険にさらしながら、必死に人を助ける姿にはほれぼれしてしまう、まさにヒーローだ。
みんなをまとめるリーダーのボビー、行くなと言われても行ってしまうちょっとやんちゃなバック、愛する妻と暮らしているこのチームで唯一の女性ヘン、絶体絶命な事故から奇跡的に生還したチムニー、衛生兵を経て、障がいを抱えている息子をひとりで育てているエディ、同じ分署の頼れる警察官アシーナ、お互いをファミリーと言えるほど抜群のチームワークで、紆余(うよ)曲折しながらも、闘いながらも、乗り越える強さを持っている。
シーズンを追うごとに、チームの絆は強くなり、観ているこちらもファミリーの一員になったような気持ちになってしまう。危険にさらされながらも、奇跡を起こしてくれるチームのみんなに、何度泣かされたことか……。
ヒーローとはいえど、超能力を使えるはずもなくひとりの人間だ。時には「もっとこうしていれば……」「自分のせいかもしれない……」と自分を責めることもある。決して全員を救えるわけではない、仕方がないにしても精神的なダメージは相当なものだろう。それでも続けたい、人を助けたい、そんな純粋な気持ちが彼らをまた動かすのだ。
命を尊いと思う気持ち、友人や家族を思いやる気持ちを再確認させてくれる、最高に前向きな『9-1-1:LA救命最前線』は、Disney+にてシーズン6まで配信中!
Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo