接待と手土産
「豆源」の豆菓子とおかき 。
すべて実食! 自慢の手土産 #134
2024.07.18
風情と人情にあふれる“都会の下町”で150年以上続く老舗の味。
麻布十番に本店を置く1865年創業の豆菓子専門店「豆源」。昔、勤めていたオフィスが近くにあり、当時は社用の手土産の定番だった。老舗の信頼や風格もあり、およそ約50種類の豆菓子は、シチュエーションによって自由に組み合わせられるので、使い勝手がよかった。最近、久しぶりに手土産としていただいたことがあり、そのおいしさを再認識し、早々に本店を訪ねてみた。
今回のいただき物は当時よく使っていた化粧箱入りではなく、麻布本店の店頭で手作りされ、そこでしか手に入らない煎(い)りたてのなんきん豆だ。粋な筆文字が描かれた紙袋に入った豆は、ほんのり塩気のあるシンプルな「煎りたて南京豆」、銅鍋で煮詰めた上白糖を絡めた人気商品「南京糖」、黒々と日焼けするほど働けば出世すると先代が名付けた「出世豆」の3種類。どれも甲乙つけがたいが、私の一押しは一番シンプルななんきん豆。風味豊かで香ばしくて、味付けは殻ごと塩水に漬けることによって付けた薄い塩味のみ。豆自体の甘さに、煎った香ばしさが加わって、食べ始めると止まらない。
落花生の収穫は年に一度だけ。入荷したら劣化しないように低温保存する。塩水につける時間や煎り具合いは、保存期間や季節によっても変わるため、豆の水分量や気温、湿気を見極めながら決める。砂糖をまぶす作業も技ありで、水に溶いた砂糖を熱して、ふつふつと水飴の状態になった瞬間に豆を投入し、大きな木べらでさっと絡める。豆を投入するタイミングが重要で、水分が残りすぎていると豆がしけってしまうし、逆に水分が蒸発しすぎると豆にうまく絡まない。店長の八尾谷 篤さんは、入社15年以上のエキスパート。入社時から製造に携わり、先輩の職人の技を見よう見まねで習得したという。
豆菓子が中心だが、おかきも25種類ほどあり、豆菓子と詰め合わせもできる。おかきもなんきん豆同様に、揚げたてを購入できるのは本店のみ。新潟のこがねもち米でついた餅をごま油と米油を合わせた油で揚げ、味付けは塩のみ。揚げたてのおかきに、均等に塩をまぶす絶妙な技がガラス越しに見学できる。八尾谷さんは、実演を見守る楽しそうなお客さんの反応がとても励みになると言う。
今では空港や百貨店など各地に店舗を展開する豆源だが、「若い人から年配の人までさまざまな年代の人が働いていて、未だ家庭的な社風も自分には合っている」とも。それは、洗練されたレストランやカフェと、昔ながらの人情あふれる老舗が同居する麻布十番商店街の雰囲気にも通じる気がする。そんな街で150年以上も商いを営む豆源。いらぬ添加物は入らない、風情あふれるシンプルで味わい深い豆菓子とあられを贈ってはいかがだろう。
豆源 麻布十番本店
東京都港区麻布十番1-8-12
営業時間:10:00~18:30
定休日:火曜日・不定休
価格/煎りたて南京豆(本店限定・125g)810円、徳用南京糖(185g)378円、徳用出世豆(145g)378円、塩おかき(小)(本店限定・95g)432円、塩おかき(大)(180g)756円など ※税込み
問/0120-410-413・03-3583-0962
https://www.mamegen.com/