週末の過ごし方
俳優・町田啓太と考える、装う美学。
「葉月」にスーツケースで心躍らせる。
【第二期】
2024.08.02
日本には四季折々に豊かな表情があり、それぞれにふさわしい「装い」がある。それは単に体感的な暑さや寒さをしのぐといった「機能」を追求するだけのものではなく、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)、つまりはTPOにそぐうものであるべき。そして、そのことに通底するストーリーを理解し装うことは、正しい「大人のたしなみ」と言えるだろう。
本連載は、一年の12カ月それぞれに季節を意識したテーマを掲げ、大人の男にふさわしいスタイルを模索しようというもの。小誌が培ってきたTPOに合うトラッドスタイルの知見と、現代を代表するファッションアイコン=町田啓太の表現力とのコラボレートにより、アエラスタイルマガジン流現代版「服飾歳時記」(第二期)としてつづっていく。
心の旅支度は、もうできている。
やはりこの夏も、町田啓太は忙しい。文字どおり「夏休み返上」で複数の映像作品の撮影や、各種取材などと向き合う。いちファンとしては町田の姿を拝める機会が増えることと同義でもあるので、少なからず喜ばしく思えるが、一方で町田自身のコンディションが心配になる。
「こうやって忙しいこと自体は、本当にありがたいと思っている。それは以前からずっと変わらない。ただ、もしも少しだけまとまった休暇が取れるなら、どこでもいいので“非日常”を経験できる場所を旅したい。それは気持ちのリフレッシュにつながるし、新しいことに挑戦するモチベーションやインプットを得られることになるから」
その意味で、4月に訪れたベネチアでの時間は町田の感性をくすぐった。
「正直、2泊4日の弾丸スケジュールはキツかったが、それでも楽しい思い出になった。イタリアを訪れたのは、昨年に続いて2度目。今回はフランスのシャルルドゴール空港を経由して、ベネチアのみの滞在。ローマやミラノとはまったく異なる景観で、まるで“宝島”を発見したようなワクワク感で高揚した」
旅の醍醐味(だいごみ)のひとつ、「食」も満喫できたようだ。
「土地柄、食事は海鮮が中心。イカ墨、ボッタルガ、ボンゴレといったスパゲティに、鮮魚のカルパッチョや、見たことがない魚介のフリット……。どれも本当においしかった。ベネチアに限らずイタリアの風土と食文化が合うのか、同国に滞在中は心から解放される実感に満ち、とにかく驚くほど食欲が止まらなかった」
イタリア以外で、町田の旅情をくすぐる国は――? その問いに少し迷いつつ、撮影で使用した旅の良き相棒となるスーツケース(米国ブランドのサムソナイトとハートマン)に目をやり、そして答える。
「アメリカにもまた、ぜひ行ってみたい。自分はダンスをやっていたこともあり、そのカルチャーにはとても影響を受けた。音楽はもちろん、映像もしかり。いまの自分としては、ファッション、プロダクトにも興味がある。それらを通じて奥深い“文化”に触れる旅となれば、おのずと心が躍る」
「ファッションやプロダクトに限らず、行ってみないとわからないことがある。自分はそれを知りたい。アメリカであれ、イタリアであれ、自分はまだまだ何も知らない。だから、旅を求めている」
ふと、軽やかなステップでスーツケースを引き、七つの海と大陸をまたにかける町田のイメージが浮かんだ。激務をこなす俳優の心の旅支度は、もう既にできている。
FROM EDITOR
文月に続き、今月もまた町田啓太さんのベネチアでのエピソードをつづってみました。6月に公開したVoicyでは、町田さんが同地でいるはずもない僕を捜したというエピソードも。まだお聞きになっていない方は、ぜひチェックしてみてください。さて、来月は僕がお仕事でイタリアに行くこととなりました。激務をこなす俳優のスケジュール調整は至難の業と知りながら、再びイタリアで町田さんとお目にかかれたら……。そんな奇跡を妄想する葉月です。
アエラスタイルマガジン編集長[雑誌・タブロイド] 藤岡信吾
町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』『ミステリと言う勿れ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『unknown』(テレビ朝日系)、『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)など話題作に多数出演。大河ドラマ『光る君へ』の出演も要チェック! 劇団EXILE写真展「また今日が過ぎても」が9月6日(金)~15日(日)にencounter galleryにて開催。
Photograph: Satoru Tada(Rooster)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY(HAKU)
Edit & Text: Shingo Fujioka(AERA STYLE MAGAZINE)