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『カサンドラ』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #93

2025.03.13

『カサンドラ』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #93

Netflixにて2月初旬に配信されたドイツ発のサイコスリラー『カサンドラ』。AIロボットが人間にとって脅威になるというテーマは近年多く見受けられるが、これほどまでに精神的に、心理的に追い詰めるAIロボットは…見たことがない! なぜこんなことをするのか? これほどまでに執着する理由は? 本当の悪は、人間なのかもしれない…。

サミラと夫のダーヴィト、息子のフィンと娘のジュノは、悲しい出来事から心機一転、新たな環境でやり直したいという気持ちから、ドイツの都心から離れた郊外に家を購入した。その家は、実験的に作られた1970年代のスマートホームで、各部屋に備え付けられたモニターに、古めかしい人型ロボット、地下には巨大なサーバールームが備え付けられている。しかし、50年ものあいだ借り手がいなかったせいか、起動はできない様子だ。ところが、家族が寝静まったころ、人型ロボットは目を覚ました。

彼女の名前は「カサンドラ」。家中の電気を操り、ドアの開け閉め、料理や洗濯などもできるアシスタントロボットだ。最初は戸惑いながらも、何かと気が利くカサンドラに、家族みんなが魅了されていた。ある日サミラが部屋を掃除していると、古いフィルム写真を見つける。そこには、カサンドラそっくりの女性の姿が…。

クラシックカーのような質感のボディーで、頭部にはブラウン管、そして人間のような顔が映し出されているという不気味ないでたちに、登場から異常な緊張感を生み出す。この異様なロボットが脅威だということは、初感から読み取れるのだが、人間に対して恨みを持っているというよりも、母親という存在、妻という存在に対してのみ、攻撃的であることに気づく。

物語は過去と現在を行き来し、この家に住んでいたと思われるカサンドラそっくりの女性は、このロボットとどんな関係があるのかを知ることとなる。

とにかく怖い、これに尽きる。本来01で成立しているはずのロボットが、嫉妬や承認欲求などといった人間さながらの感情をむき出しにし、母親と妻という立場を手に入れようとするのだから。それも淡々と。ロボットでありながらも、夫を手に入れようとする姿はひどく滑稽で、痛々しくもあるが、この家で起きた50年前の出来事を知ってしまうと…同情せざるを得ない。

そして興味深いのが、高校生の息子フィンの恋愛物語も同時に進行しているというところだ。新生活で不安のなか、母親も精神的に不安定ともなると、思春期にはこたえるものがある。そんな状況において、親友とも、恋人とも呼べる存在に出会えたのは、この物語にとって唯一の救いでもある。

サイコスリラーでありながらも、ヒューマンドラマとしての側面も強く、総じて3つの物語が同時に進行しているような構成になっている。一見ごちゃごちゃしてしまいそうにも思えるが、これが違和感なく自然とつながりを持たせているのだから素晴らしい。

キューブリック作品をほうふつとさせるようなレトロフューチャーなインテリアも必見!なドラマ『カサンドラ』は、Netflixにて(6)配信中。

<<過去の「いま観るべき、おしゃれな海外ドラマ」はこちら

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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