週末の過ごし方
金沢に出張、からの「ついで旅」Vol.1
気取らない老舗の味をホッピング
2025.03.06

金沢へ出張、といううれしい仕事があったなら……大人のファッション&カルチャー誌に向けて、金沢の魅力を伝えるエディターが、出張ついでの1泊1.5日、充実の旅プランをアレンジ! ひとり旅の参考にもなる金沢の過ごし方を3回に分けて紹介する。
世界の人々を魅了する美食と酒を軸に
国内の旅行先として、安定の人気を誇る金沢。世界有数の旅行メディア「ナショナルジオグラフィック」「コンデナスト・トラベラー」でも2025年に行くべき旅行先に選出されるなど、その魅力は海外の人々にも急速に浸透中。

金沢の旅計画は美食と酒を軸に考えるのが正解。海と山ともに近いこともあり、新鮮な食材が豊富。人口より飲食店が多いなどと揶揄(やゆ)されるほど、外食文化が根付いている。加賀料理、鮨、おでんといった和食はもとより、スペイン、イタリア、台湾など、金沢流の世界の料理を楽しむことができる。またこのところは若手や移住組も台頭し、さらに食文化を盛り上げている。
Day1 5:00PM
老舗割烹「味処よし村」 旦那衆も通う伝統の味
仕事を終え、ホテルにチェックインしてひと息ついたら、早めの時間からオープンしている老舗割烹へ。昨今、金沢駅近くや郊外に出店する飲食店が増えているが、やはり金沢の食の中心地は街なかの片町界隈。東京では少なくなった2軒目に流れるホッピング文化も健在だ。そのあたりも踏まえ、ホテルも徒歩圏内からチョイス済み。

片町に隣接する大工町は、百万石を誇った加賀藩の御大工衆が住んだことに由来。地名からすでに歴史ある風情が漂う。日が暮れかかるころ、大通りから少し入るとフグ提灯に温かな灯がともる「味処よし村」が。創業は1977年、現在は二代目の吉村良一郎さんがベテラン板長と共に店を切り盛りしている。店に入ると、目に飛び込んで来るのが金沢らしい朱塗りの長いカウンター。壁いっぱいに並ぶ豊富な手描きの品書きに期待が高鳴る。

この店はとある取材で、金沢の旦那衆の古くからの行き着けとの情報を得てリストアップ。少量多品をいただきたい、ひとり旅にうれしい単品注文が可能な点も決め手だ。以前、上質を知り尽くしたファッション業界の重鎮にもおすすめしたところ、いたく感動されていた。
まずタラの白子ポン酢から。金沢では白子を生で味わうことが多い。そして続いてはブリトロのお刺身。能登や氷見で水揚げされる天然寒ブリは冬の名物。どちらも鮮度抜群ゆえ、濃厚ながらさっぱりとした味わい。合わせた日本酒は地震からの復興応援の思いも込め、輪島市の白藤酒造店「奥能登の白菊」純米吟醸を。被災後、蔵から運び出した酒米を、「遊穂」の銘柄で知られる石川県羽咋市の御祖酒造の協力を得て仕込んだ酒だという。
白子は徳島産すだちを使った自家製ぽん酢で供される。 刺身は寒ブリのほかバイ貝、アオリイカなど地魚をお好みで。
そしてこちらで忘れてはならないのが、加賀野菜を使った伝統料理。デンプン質が豊富な加賀れんこんは基本すり下ろして味わう。つなぎを使わずまとめ蒸したものに餡かけで仕上げる料理、はす蒸しが定番。このほか煮崩れしにくい源助だいこんを使ったぶり大根や、粘りがありながら食感を楽しめる金時草(きんじそう)の酢の物なども。実は昔ながらの加賀料理を楽しめる店は減りつつあるが、こういうほっとする味こそ、今、求められているようにも思う。
はす蒸しは、レンコンとは思えないもっちり感。 赤紫色の金時草(きんじそう)は酢の物でさっぱりと。
最後に品書きで気になっていた自家製蟹クリームコロッケを1個だけオーダー。こういった無理を伝えやすいのもカウンターならでは。新鮮な海鮮、飾らない野菜料理から揚げ物で締める口福の時間。これからの春にはホタルイカやサワラ、地元産のタケノコや山菜と、季節によって多彩な食材を楽しめるのも魅力。

金沢では悪酔いしないよう、日本酒と一緒に提供するお水を「やわらぎ」と呼ぶ。老舗ながら気取らない、程よい距離感で、ここにも穏やかで柔らかな空気が流れていた。
味処よし村
石川県金沢市大工町22
076-232-3001
営業時間/17:00~21:30
※昼は要予約11:30~13:30
休/日曜
http://www.ajidokoro-yoshimura.com
Day1 7:30PM
隠れ家バー「漱流」でイケオジをとりこにするカクテルを
胃袋も心も満たされたものの、このままホテルへ帰るのはもったいない。金沢はオーセンティックなバー文化も根付いているので、ぜひ2軒目へ。ほろ酔いでかいわいを散歩すると竪町(たてまち)という商店街に行き当たる。その路地に蔦の絡まる秘密めいた一軒家のバー「漱流(そうりゅう)」が。

なじみのない地方のバーはなかなか入りにくいものだが、こちらは今宵のホテルでも、近隣のおすすめバーとして紹介されていたので安心して入店。お目当ては人気のフルーツカクテル。金沢は秋のルビーロマンというブドウやイチジクなど果実栽培も盛ん。
バー「漱流」は今年で24年目。マスターの石地孝一さんが先代から継承し営んでおり、店内は外観のクラシックなムードに反してモダン。フルーツカクテルの種類を伺うと「イチゴ、パイナップル、キウイ……栗も人気ですね。意外に大人の男性のオーダーも多いんですよ」。果たしてイケオジをも魅了する栗のカクテルとは? 好奇心のままに即決。聞けば料理人経験もあるマスターの手により栗からペースト状にされており、その工程がなかなかにハードなのだそう。以前は秋のみの提供だったが、人気のあまり店の看板メニューに。

モンブランを味わっているかのような、栗ならではのこっくりとした甘さにラム酒とミルクがほんのり。ああ、おいしい! この一杯のためにまた金沢へ、と思わせてくれる味わいだ。

漱流
石川県金沢市竪町12-2
050-5487-0219
営業時間:18:00~L.O.3:00(日・祝~L.O.2:00)
休:不定休
https://souryu.gorp.jp
Day1 9:00PM
「OMO5金沢片町」 伝統工芸をあしらったカフェで和みの一服
バーを出て、竪町をそぞろ歩き。目的によっておすすめの宿は異なるが、食をメインに堪能するために今回選んだホテルはその通り沿いにある、星野リゾート運営の「OMO5金沢片町」。“あっぱれ! 味のかたまち”を掲げるだけあって、美食を堪能する夜遊びに最適な立地だ。しかも金沢21世紀美術館や兼六園も徒歩圏内にある。

全国17カ所で展開するOMOブランドは、テンション上がる「街ナカ」ホテルがコンセプト。もし自分で計画を立てるのが面倒だったり、逆に無駄なく旅を充実させたいと考えるなら、こちらがおすすめ。さまざまなサービスや時間毎のアクティビティも豊富。

宿に戻った時間帯、1階の「OMOカフェ&バル」で行われていたのは「金沢KOGEIナイトサロン」。空間を金沢の伝統工芸、加賀水引や金箔の装飾でライトアップしたカフェで、この地で親しまれる加賀棒茶と和菓子のサービスが。茶葉は自家焙煎する野田屋茶店、和菓子は茶菓工房たろうや落雁諸江屋などと、近隣の名店からのセレクションでおもてなし。ほどよく酔ったあとに飲む棒茶のしみること!

OMO5金沢片町
石川県金沢市片町1-4-23
050-3134-8095(OMO予約センター 9:30~18:00)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo5kanazawakatamachi/
取材協力:金沢市観光協会
https://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp