週末の過ごし方
『ゼロデイ』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #94
2025.03.27

ついに、ロバート・デ・ニーロがNetflixに登場! 『タクシードライバー』『ゴットファーザー PARTⅡ』『ディア・ハンター』など、言わずもがなの誰もが知る名優が、ドラマシリーズ初主演&製作総指揮ということで、配信を待ちわびていた人も多いはず。
アメリカを激震させたサイバー攻撃の犯人組織を突き止めるべく、再び政治の世界に戻った元大統領を演じたロバート・デ・ニーロ。視聴者を惑わすトリックが多数仕込まれ、最後まで何が真実なのか?と惑わされてしまう圧巻の展開を見せた。
大統領を辞任してから、悠々自適な生活を送っていたマレン(ロバート・デ・ニーロ)。自叙伝の執筆がなかなか進まず、出版社からゴーストライターをつけないかと打診されたころ、事件は起こった。
突如アメリカの全電子システムがサイバー攻撃され、1分間ダウンするという事態に。あらゆる交通機関が混乱し、医療現場などいたるところで混乱を招き、3000人以上の犠牲者が出てしまった。
ホワイトハウスはこの攻撃に対する特別委員会を設立。大統領ミシェルからの指名で、カリスマ性があり、国民からの支持も厚いマレンが委員長を務めることとなった。
攻撃後スマートフォンに表示された“再び起こる”とは、どんな意味なのか? しかしこの攻撃は、巨大な陰謀のなかの、氷山の一角に過ぎなかった……。
物語序盤から、「これは何かの伏線か?」と思わせる演出が次々と訪れる。そして、敵である可能性をこれでもかと広げてゆき、視聴者を混乱させていく。加えてマレン元大統領の脳内に異変が起き、幻聴や幻覚、加齢による物忘れなのか、とても正常だとは思えず、マレンの視点から描かれることも信用できなくなってくる。
誰もが疑わしく、疑心暗鬼になっているところ、毎度エピソードの終わりには思いもしなかった展開が待ち受けている。良くも悪くも視聴者は振り回されるが、監督であるレスリー・リンカー・グラッター(『HOMELAND』ほか)らしいところ。その展開の早さから視聴者を飽きさせず、数々の伏線を回収していく心地よさと驚きの連続をここまで盛り込んだ構成は、すばらしいとしか言いようがない。
興味深いのは、世論をも操作してしまうほど影響力を持つ、インフルエンサーという存在だ。実際にインフルエンサーの発言やリーク話により、窮地に立たされる政治家を見てきた昨今、デマだとも言い切れないこともあるが、根拠のない陰謀論をばらまき、国民の不安を煽り、不確かな情報が広まってしまうのも事実。
マレンを執拗に責め立て、攻撃するインフルエンサーのエヴァンの存在が、徐々に脅威となっていく展開はリアリティがあり、現代への問題提起とも言えるだろう。
ロバート・デ・ニーロの怪演ぶりは見事で、マレンというキャラクターをミステリアスにすることで、物語の行方を容易に想像させないという一端を担っている。そのなかでも、娘を思う父親の顔がふと表れる瞬間があり、唯一の人間らしさに心を打たれる。政治家として、父親として、国民として、なにが正義なのか?を見極めなければならないときがある。衝撃の結末を知ったとき、張り詰めた緊張感は一気に崩れ落ち、言葉にならない感動であふれるだろう。
豪華すぎるキャスト陣を、一作品で味わえるだなんて、なんて贅沢なドラマなんだ。いくつか明かされていない真実が気になって仕方がないが、それは意図的なのだろう。この物語をハッピーエンドととるか、バッドエンドととるか、それはあなた次第だ。
『ゼロデイ』はNetflixにて全6話、配信中。
Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo