週末の過ごし方
SUPER EIGHT 村上信五が導き出した、
心を軽くする“半分”の美学。
2025.04.18

「何事も半分でいい」。そう語るのは、SUPER EIGHTの村上信五。タレント、アーティストとしてだけでなく、近年はサラリーマンとしての顔も持つ彼が、多忙な日々のなかでたどり着いたのは「すべて完璧にやろうとしなくていい」という思考と感情の整え方。初の著書となる『半分論』には、全ビジネスパーソンが肩の力を抜いて幸せに生きるための知恵が詰まっている。
「完璧」はもういらない。『半分論』が教える力の抜き方

完璧を目指し、他人と比べ、悩み続けてしまうーーそんなふうにがんじがらめになっているビジネスパーソンに、今こそ手にとってほしい一冊がある。SUPER EIGHTの村上信五氏が上梓した『半分論』である。半分論とは、人生において起きるすべての事象に対して「何事も半分くらい考え、結果を捉える」という村上ならではの提案だ。考えすぎてしまう大人のための、余白哲学でもある。
「悩みって、考えすぎた結果やと思うんです。どっちか決めなあかん、白黒つけなあかんって、思い込んでるからしんどくなる。でもその“あいだ”のグレーゾーンに目を向けて、“こういうやり方もあるんちゃう?”って考えてみたら、ちょっと気がラクになるんちゃうかなって」
これは決して「ラクをしよう」という話ではない。あえて“ひとつに絞らない”こと。それは優柔不断ではなく、思考の余白を持つということにつながる。
「自分の中に選択肢を持っておくって、実はすごく強いことやと思うんです。僕らって、子どもの頃から“やるか、やらないか”、“YESかNOか”っていう二者択一を迫られて育ってきた。でも、本当はその“あいだ”にこそ、自分らしい選択肢があるんじゃないかって。人の意見を取り入れても、結果を受けてから考える、でもいいと思うんです。全部を自分で背負わなくていい。“失敗しても、ちょっと助けてな”って言える心の余裕。それが、半分論の根っこにある考え方かもしれないですね」
「心の余白」が生む、信頼と感謝と自信

本書の中でも紹介されている、『朝から半分論を使ってみる』という実践法は、ビジネスパーソンが即座に採り入れられる、小さな成功体験を生むライフハックのひとつである。
「夜にあれこれ考えても、もう疲れてるから処理能力が落ちている。でも朝は違う。頭がよく動くし、判断も早い。だから僕、なるべくサラリーマンの仕事に関するオンライン会議などは午前中に集約しています。それだけで“今日もうひと仕事終わった感”が出て、気持ちがいい。たとえばですけど、1秒を1円と換算すると、一日は8万6400円。みなさん朝起きて8万6400円持ってるのに、朝からそれをちゃんと使うか、無意識に溶かすかで、一日の質って大きく変わってくる。別に“生産性を上げて、給料を上げましょう”って話じゃなくて、“心の余裕”をつくるための大切な時間になるんです」
朝の半分論実践は、心の余裕を生む。そしてそれは“自己肯定感”にもつながると村上は話す。
「朝にひとつタスクが済んでいるだけで、家を出るタイミングですでに達成感があるから爽快に家を出れるし、たとえ職場で上司に何か言われても、朝一発なんか頑張った自分がおったら、まあまあええかって思えるじゃないですか。それだけで、ちょっと自信がつくし、自己肯定感が上がる。逆に、朝からバタバタしてたら、夜もズルズル引きずるでしょう。そうならないようにするためのちょっとした工夫なんです」
周りと比べない。幸せは自分の基準でいい。
情報過多の時代において、自信を保つこと、育むことはますます難しい。成功例と失敗例がすべて数値化されてSNSなどで流れてくる世界で、村上は「比べなくてもいい自分の基準」を持つことの大切さを伝える。
「たとえば年収やSNSのフォロワー数とか、“誰かより上か下か”で自分の立ち位置を決めようとする風潮がありますよね。でも本当は、自分の中にある“これでいい”、 自分の中に“悪くないやん”って思える瞬間を見つけることのほうが、ずっとずっと大事だし、心はちょっと楽になる。外側と比べるのではない自信の持ち方や、自分の心の本当の置きどころを、この本を通して、うまく認識できるようになっていただきたいなっていうのはありますね」
そうして育った心の余裕は、実際に人との関わり方にも顕著に表れるという。
「昔は照れくさかったけど、メンバーには最近“ありがとう”ってよう言うようになったんです。年末年始にかけてのドームツアーのときなんて、もうめちゃくちゃメンバーのことが好きで、グループのことも大切に思えるようになりましたし、意識的にいい感じの言葉を選ばずとも、今まで恥ずかしいって思ってたような感謝の言葉とかが心の底からぽろっと出てくる。そんなふうにメンバーや周りの人に向き合える自分になれてきたのは、この半分論の考え方のおかげだと思っています」
村上信五の余白のある言葉が響く理由

テレビやラジオなどで活躍する“タレント・村上信五”は、大物先輩相手にも屈せず、ひと言で爆笑を生み出し、そこにいるだけで共演者たちまで輝かせる、コミュ力の高さと愛され力がとりわけ印象に残る。その秘訣(ひけつ)も、半分論的考え方にありそうだ。
「基本的にはどんな先輩たちに対しても『別に嫌われてもしゃあないわ』って思ってるんです。僕みたいなんが懐に飛び込んで、そこで機嫌悪くなるような人だったら、ああ、この人ちっさい人なんやって(笑)。だから、怖がらずにバーンといけたんだと思います。逆に、後輩と接するときのほうが気を使うことが多いですね。余計なことは基本言わないし、夜は連絡もしない。もし注意せなあかんときでも、否定的な言葉はできるだけ使わないようにしていて。たとえば『○○○○って聞いたけどな、それもええけど、もっとこうしたほうがええで?』っていうふうに、なるべく前向きな言い方を心がけます。唯一ちゃんと伝えるのは誕生日だったり何かの節目のときくらいかな。『おめでとう、最近よう頑張ってるみたいやな。でも、○○○○したらもっとよくなると思うで』って、そのタイミングでさらっと伝えるようにしているかな」。
完璧でなくていい。正解じゃなくてもいい。柔らかく、しなやかに、余白を持って思考する。そんな村上の半分論の美学は、これからの時代に生きるすべての人たちに必要とされている。

プロフィール
村上信五(むらかみ・しんご)
1982年1月26日生まれ。2004年にCDデビュー。SUPER EIGHTのメンバーとして音楽活動を軸に、テレビ・ラジオ・舞台と幅広いフィールドで活躍。2023年からはサラリーマンとして、ビジネスや社会貢献プロジェクトにも活動の幅を広げる。自身初となる著書『半分論』は、これまでの経験と思索をもとに、“思考の柔軟性”をキーワードにした現代的な生き方のヒントを提示し、多くの共感を集めている。
衣装協力/BOSS
Photograph:Masayuki Kamo(Iris)
Hair and Make-up:Kazuki Takinami(GON.)
Styling:Yukiyo Wada
Interview&Text:Ai Yoshida