カジュアルウェア
ジル サンダーの美意識が息づく、
上質なポロシャツを銀座で。
ファッショントレンドスナップ212
2025.04.30

ネットで生活に必要なものはほとんどそろう時代。わざわざ交通費と貴重な時間を使いショップにまで行って服を買う意味はあるのでしょうか? コスパや時短を優先している方々からは「服を買うためだけに出かけるなんて時間の無駄。接客されるのも苦手だし……」という声をしばしば聞くことも。そんなご時世に、ひとつの答えを銀座で見つけました。

ジル サンダー 銀座は、世界最大規模の広さを誇るこのブランドの旗艦店。銀座の喧騒からショップに入った瞬間、そこにはファッションとアート、インテリアが見事に調和されたジル サンダーの研ぎ澄まされた美学を体感できます。
もちろん、銀座には世界中のラグジュアリーブランドのショップが集まっていますが、このショップはぜいたくな空間のなかにミニマムな数の服やジュエリー、バッグなどが並べられていて、スペース全体からブランドの世界観を感じられるように設計されているのが大きな特徴です。ほかのショップをのぞいてからここに入ると、広いスペースのなかにポツポツとアイテムがある感じで、商品密度が極端に薄いのを感じるはず。
※あくまでも個人的な感想です。あしからず
ショップに入ってすぐに感じるのが、床や壁に使われている大理石とオリジナルの什器(テーブルやハンガーラック)が作り出すヨーロッパのモダンな美術館のような雰囲気。ちなみに大理石はすべてイタリア産のトラバーチンという石を加工したもので、この素材はローマの古代遺跡コロッセオなどにも使われているもの。イタリアの建築では、クラシックでなじみのある素材ですが、粗く磨かれた表面加工と素材感を生かしたスコアード仕上げが独特のムードを空間に漂わせています。
1階の窓際のスペースに進むとアートスペースが現れます。そこにはイギリスの現代芸術家のレイチェル・ホワイトリードの作品が展示されています。こうしたジル サンダーの世界観を作り上げたのは、ロンドン、ベルリン、ソウルに拠点を持つ建築設計事務所カスパーミュラー クニアー アーキテクツ。https://www.caspermuellerkneer.com/projects

ファッションに興味を持っている方のみならず、建築やインテリアデザインが好きな方にも足を運んでいただきたいショップです。スタッフの方に教えていただいて感動したのが、ここ。
一瞬大理石かな?と見えるマーブル柄のテーブルやイス(全てではない)がプラスチックのCDケースを再生した素材を使っていたのです。それと、オリジナルデザインのハンガーラック。ハンガーを掛ける細いパイプにはライトが入っていて、服を絶妙に浮かび上がらせて見せているのです。まるで、美術館の名画に当られているライトのような効果が出ているように感じるのは私だけでしょうか?

またまたイントロが長くなってしまいましたね。猛省。本題はここから。
ジル サンダーの2025春夏のコレクションのなかから私がピックアップしたのが、左の胸に大きなワンポイントが入ったポロシャツ。
カラーは今年のメンズトレンドのパステル調。パウダーブルーと表記されていますが、絶妙なこの色の美しさは現物を見ないとわからないと思います。それとビスコースとコットンの混紡素材独特のつや感もネット上では伝わりにくい部分。実はここがこのポロシャツが、ジル サンダーならではのモード感を醸し出している大切な部分。
※公式サイトにはモデルカットがアップされていて、その感じがいちばん現物に近いかもしれません。個人的な意見ですので、あしからず。https://www.jilsander.com/ja-jp/

このポロシャツの開襟部分は、シルバーカラーのファスナーで引き手部分は一般的な板型ではなく玉つきと呼ばれるタイプ。左胸のブラックのワンポイントマークは、立体的な黒い花の刺しゅうになっています。

このエントランスもこだわり満載。入り口ドアが正面になく、一歩入った奥まった所(店舗の一般的な効率を考えるとネガティブなデザイン)の右側にあります。ぜいたくでアーティスティックな導入口。ブロンズ色のメタルのカーブは、ミッドセンチュリーのアメリカのプロダクトデザインやアート(チャールズ&レイ・イームズやイサム・ノグチ)などにつながるものを感じませんか? とにかく、銀座のラグジュアリーブランドのショップのなかでは、群を抜いて珍しく貴重な空間を提案しています。銀座(TOKYO)は、今メチャクチャ面白い街になっていますね。スマホをオフにして街に出よう!
ジル サンダー 銀座
住所/東京都中央区銀座3-4-1
営業時間/11:00〜20:00
Photograph & Text:Yoichi Onishi