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特別インタビュー

最高醸造責任者ブノワ・ゴエズ氏が語る
モエ・エ・シャンドン、20年間の進化と革新。

2025.08.21

最高醸造責任者ブノワ・ゴエズ氏が語る<br>モエ・エ・シャンドン、20年間の進化と革新。
「モエ・エ・シャンドン」の最高醸造責任者、ブノワ・ゴエズ氏

1743年に創設した、かの名門シャンパン メゾン「モエ・エ・シャンドン」の最高醸造責任者ブノワ・ゴエズ氏が着任20年という節目の年に、一年ぶりに来日した。これを機に、20年間の技術革新を、永遠のアイコン「モエ・エ・シャンドン モエ アンペリアル」、単一収穫年にこだわった「モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ」、ワイン造りの最高醸造技術と言われる「コレクション アンペリアル クリエイション No.1」の3本、それぞれの進化の過程における功績を語ってもらった。

まず、20年のなかで変わらぬこと、変わったことを尋ねたところ「すべてを変えなければならないということを、変わらずに継承してきました」という答えが返ってきた。それほどに、日々、進歩革新をしているということなのだろう。

タイムレスなアイコンとして、変わらぬ存在でありつづける「モエ アンペリアル」とて、実際に変わっていないのは、テロワールと、使用しているぶどう品種が、シャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエの3種であることくらいであるという。

気候変動に備えて使うべき技術も変わってきている。「設備に関しては、どんどん最新のものを投入しています。最先端のものを使用することで、正確さや緻密さを管理できるようになるのです。私がモエ・エ・シャンドンにもたらしたものは、正確さと緻密さにおける探求と言って問題ないでしょう」とゴエズ氏は言う。

なかでも、モエ アンペリアルに関して変革した点は、リザーブワインの量を増やしたこと、複雑味を増すために澱に触れて熟成させる期間を長くした点、ドサージュを半減したことの3点だそうだ。変わらぬおいしさを提供しながらも、裏側ではそれだけの刷新が行われているのだ。

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一方、「グラン ヴィンテージ」に関しては、その背景にある考え方を変えてきたという。過去には、アンペリアルの一段上にヴィンテージが位置づけられているイメージが強かったが、現在はよりヴィンテージに特化し、各ヴィンテージの唯一無二の個性を全面に出すという方向性に変わってきている。

直近のリリース「グラン ヴィンテージ2016に関しては、とても難しい年であったようだ。「早春の霜、春の長雨をはじめ、一年を通じて生産者には苦労の連続で、通常早く収穫されるシャルドネの収穫が遅れ、その段階ではあまり期待できないと思われました。しかし、ベースワインにしてテイスティングを始めた段階でシャルドネがすごく力を発揮し、予想をはるかに上回る使用比率になりました」。

結果、エレガントでありながら複雑味のある穏やかな究極の1本となった。このように、ヴィンテージの特徴を可能な限り押し出して、どこにもない1本を造り上げるのが、ゴエズ氏の「グラン ヴィンテージ」なのである。

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左から「モエ・エ・シャンドン モエ アンペリアル(マグナムボトル)」「モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ」「コレクション アンペリアル クリエイション No.1」

そしてもうひとつ、ゴエズ氏がモエ・エ・シャンドンに入社した翌年の25年前から、いつか叶えようと思っていた夢の1本「コレクション アンペリアル クリエイション No.1」を2年前に完成させたことは大きな功績である。「モエ・エ・シャンドンとして表現できる最高峰のものを造りたい」という氏の長年にわたる夢を実現したのである。

その内容はというと、7つのヴィンテージのリザーブワインをブレンドしたものだ。「フランス語でオートクチュールなど、“オート“とつくものには4つの共通点があります。最高峰の素材、洗練された技術、クリエイション、そして長い年月です」。

それを「オートエノロジー」に当てはめた場合、まず、最高の素材は、輝かしい過去のリザーブワイン。ここでは2000年から2013年までの7つのリザーブワインを使用。そして最高の技術としては、独特のエイジング法を用いていること。具体的には、最も若い2013年にはフルーティさを際立たせるためにステンレススティールを使用して熟成。2012年、2010年、2008年、2006年、2000年のリザーブワインは、それぞれオーク樽に1年触れさせて甘やかなフレーバーをつけている。2004年には生き生きとした複雑性をつけるために、瓶の中で澱に触れさせて8年間熟成。

そのすべてを絶妙な割合でアッサンブラージュするというのだから、まさに至高の技術である。テイスティングの途中段階で、ゴエズ氏は、ドサージュの必要がないと直感で認識し、モエ・エ・シャンドンとして初めて、ブリュットナチュールが完成した。

「最初にトースト香のような複雑な味わいと香りが来て、次に蜜ろうやバターのような甘やかさ、最後にフルーツが現れると言った複雑味が何よりの魅力です。まさに、モエ・エ・シャンドンの最高峰を実現したといえるでしょう」とゴエズ氏は胸を張る。

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どの1本をとっても、ゴエズ氏の着任後、驚くべく進化を遂げていることがわかるではないか。20年間の進化をかみしめながら、それぞれの1本を味わい尽くしたい。

問/MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社 https://www.mhdkk.com/enquiry

Photograph:Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)

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