特別インタビュー

自分が好きな空間をつくること―――
城田 優が語る、暮らしと仕事の哲学。

2025.09.08

自分が好きな空間をつくること―――<br>城田 優が語る、暮らしと仕事の哲学。

俳優、ミュージシャン、演出家と多岐にわたる顔を持つエンターテイナー、城田 優。ステージやスクリーンの上で魅せる姿は圧倒的だが、どの顔のときも、その根底には「自分が心地よいと感じる空間をつくる」という情熱が流れている。デンマーク生まれのBoConcept(ボーコンセプト)が発表した新しいソファ「Milano(ミラノ)」を前に、インテリア、そしてアートが彼自身のクリエイションにどのように繋がっているかを語ってくれた。

「僕は古くなっていくものに愛おしさを感じるんです。木製のテーブルなんかは、日に焼けたり少し傷がついたりする。それを欠点じゃなくてとして楽しみたいんです」 

城田の言葉は、経年劣化を「衰え」ではなく「深化」として受け止める姿勢を映し出す。長く使い続けてきた自宅のローテーブルには、15年以上の歴史が刻まれているそうだ。訪れる人はその経年を感じ取らずに「空間に溶け込んでいる」と言うが、彼にとっては一つひとつに物語がある。「だから出会いがない限り、まだこの子とは別れられない」と微笑む。

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城田さんが座るのは、今年発表された新ソファ「Milano(ミラノ)」。イタリア人デザイナーであるクラウディオ・ベッリーニによるデザインは、イタリアのエレガンスと、デンマークの機能的×ミニマリズムというユニークな融合から生まれたラグジュアリーな雰囲気と贅沢な座り心地が自慢。手前のコーヒーテーブルは、上質なイタリア産大理石を使用。ミニマルな洗練された美しさの中に、快適さとクラフツマンシップが息づく空間を提案。テーブルに置かれたオブジェは城田さん私物のコレクションのひとつ、門番である「ジョニー」。

1952年に2人の家具職人が始めた小さな工房からスタートしたデンマークBoConcept(ボーコンセプト)。毎日の暮らしの中にちょっとした充実した時間、小さな幸せを見つけるデンマークの幸せの価値観「HYGEE(ヒュッゲ)」の精神を大切にするブランドから、今年イタリア人デザイナーと初となるコラボレーションが発表された。その代表作である新作ソファ「Milano」を体感した城田は、「とにかく座り心地がめちゃくちゃにいいし、ソファで過ごすことが多いから今すぐ自宅に置きたい」と大絶賛しながら、家具の価格と価値についてこんな考えを示した。

「僕は家具を選ぶ時、必ず年数で割って考えるようにしているんです。例えば100万円のベッドを20年使うと、1日あたりにすると数十円。人生の3分の1を過ごす寝具や、長く共にするソファなら、むしろいい投資だと思うんですよね」

20代前半、まだ経済的に余裕がなかった頃に、あえて寝具に100万円を投じたというエピソードが印象的だった。

「睡眠の質が次の日のパフォーマンスを決めるって直感していたから。空間や家具への投資って、自己管理でもあり、クリエイティブの土台になるんです」

彼のこの思考は家具だけでなく、時計やファッションにも広がっている。長く付き合えるものを選び、1日あたりで考える。そうすることで「本当に必要なもの」かどうか、自分の心に問い直せるという考え方だ。

生活をデザインすることは、創作の延長線

「インテリアって、たかが家具の配置と思うかもしれない。でも僕にとっては大切な表現のひとつなんです。今日はここに絵を飾ろう、テーブルを動かそう。そうやって試行錯誤することで、感情の変化を敏感に感じ取れるから」 

俳優として役をつくるとき、演出家として舞台を組み立てるとき、そこには無数の選択がある。インテリアも同じだ。日差しが差し込む角度や照明の色、レンガや石材の質感を吟味しながら空間を整えることは、まるで作品をつくることのようだという。

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2025年秋冬新作コレクション発表会「The Rooms – 3 ways of life」でお披露目になった、城田さんが空間作りを手がけたリビングルーム。新ソファ「Milano(ミラノ)」にあわせたコーディネートは、城田さんの自宅から実際にお気に入りのコレクションを自ら持ち込み完成させた。統一感は意識せず、世界各国で出会った好きなものだけを集めた空間は自然と居心地の良さを生んでいる。

実際、彼は自宅の改装を自らの「創作の場」として楽しんできた。壁紙の素材を自ら見て検討し、壁をレンガにしたり、バスタブにまでこだわる。

「終わりのない遊びですが、僕にとっては必要な時間。もし時間とお金が許せば、1年に1回はリニューアルしたいくらい」と語る姿は、少年のように無邪気だ 。

そんなこだわりの自宅空間について、城田の家に招かれた人々は、口を揃えて「落ち着く」と言うのだそうだ。本人は「僕が好きなように置いただけで、誰かを意識して作ったわけじゃないのに」と不思議がるが、それこそが彼の空間づくりの核心。

「誰かによく思われたいからじゃなく、自分が心地よいと感じるものを選び続ける。結果として、それが他者にとっても快適な場所になるような気がしています」 

インテリアが仕事の想像力を拓く

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城田さんの私物が飾られた棚には、15年以上かけたコレクションが並べられた。洗練されたミラノの世界観に、城田さんのカオスな個性を融合させた特別な空間に。

「インテリアを考えることは、組み合わせのパズルみたい。どう置いたら一番美しいか、どんなバランスが心地よいかを考えることで、想像力が鍛えられると思うんです。ちなみに僕、小さい頃、おもちゃを並べてストーリーを作るのが大好きだったんです。今やっていることも本質的には同じ。空間づくりも、エンターテイメントも、すべて遊び心が原点のような気がしています」 

彼の部屋づくりは、演技や演出と同じく「遊び心」と「選択の連続」だ。20回以上も引っ越しを重ね、自分の手で荷物を運び、空間を一から作り直す。その積み重ねが「好きなものを見極める経験」となり、仕事での感性や判断にも直結している。

「選択する機会が多いほど、自分の好みや本当に大事にしたいものが見えてくると思うんですよね。それは映画や音楽、そして仕事にも言えることだと思います。僕にとってインテリアは生きる力。好きなものに囲まれているから、毎日を楽しく過ごせるし、自分らしくいられる。その居心地のいい空間を、とにかくいかに作れるか。誰かにガチャガチャしてるねって言われても、『うん、俺はこれが好きなので』って言える自分でありたいなと思っています」

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「The Rooms – 3 ways of life」で城田さんの手がけたリビングルームには、お気に入りの自画像も飾られた。

家具やインテリアはただの生活の道具ではなく、日々の自分を支える舞台装置。そこから仕事のモチベーションも、表現の豊かさも広がっていく。忙しく働くビジネスパーソンにとっても、自分の部屋を少し見直すだけで気持ちが変わるかもしれない。城田さんの言葉は、そんなヒントを与えてくれる。

問/BoConcept https://www.boconcept.com/ja-jp/

Photograph: Kentaro Oshio
Interview & Text: Ai Yoshida

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