週末の過ごし方
巨匠クラウディオ・ベッリーニと描く、
ボーコンセプトのダイニングのあり方
2026.11.06
デンマーク発のインテリアブランド・BoConcept(ボーコンセプト)が、デザイナーのクラウディオ・ベッリーニ氏を迎え、新作ダイニングコレクション「Volterra(ヴォルテッラ)」 を発表。人が集い、くつろぐ食卓をどのように描いたのか。両者の言葉から、その魅力を解き明かす。
ダイニングは、人が集い、思い出を重ねていく場所。「ヴォルテッラ」 は、造形の美しさと機能性を融合させたテーブル、チェア、サイドボード、コーヒーテーブル、サイドテーブルで構成される。それぞれが響き合い、空間に洗練された調和をもたらす。デザインを手がけたベッリーニ氏は、食卓を囲む家具のあり方について、こう語る。
「ダイニングは感情を共有する場所であり、楽しいときを過ごす場所です。そこに置く家具は、空間をつくるもの。チェアとテーブルは互いに競い合うのではなく、自然に調和しているべきなのです」
ベッリーニ氏は、イタリア建築・デザイン界の巨匠、マリオ・ベッリーニを父に持つ。「ヴォルテッラ」はイタリアの古都ヴォルテッラに残る、遺跡のアーチから着想を得たデザイン。アーチを逆さにしたようなテーブルの脚にも、建築的な発想が息づいている。
「Uは、Unique、Useful、Urbanの頭文字です。もうひとつ、南部アフリカのバントゥー諸語に由来する『Ubuntu(ウブントゥ)』という言葉もあります。『私たちがいるから、私がいる』という意味です。この考え方に共感し、コレクションにもそのメッセージを込めました。そうそう、U字形の脚は、どこか笑顔の口元みたいにも見えるんです」
コレクションの根底に流れるのは、他者に対するリスペクト。その精神は製作過程でも大切にしてきた。
ヴォルテッラのサイドボード H74.5 x W229 x D51cm ¥466,900
ヴォルテッラのダイニングチェア H78 x W60 x D59.5 x SH49cm¥116,900~、アームレスト付きは¥132,900~
ベッリーニ氏とボーコンセプトがともに歩み始めたのは、約3年前。これまでのコレクションと同様に、今回も互いの哲学の違いを楽しみ、それを自然に融合させながらプロダクトを発表してきた。ベッリーニ氏は、ボーコンセプトとの協業について振り返る。
「現代における匠の技は、職人としての思想や心構えにあると思います。開発の段階から品質、そして製品がもたらす価値に至るまで、どれだけ職人的なこだわりを持てるか。そこに込められた情熱やエネルギーこそがボーコンセプトのクラフツマンシップであり、私がリスペクトしているところです」
デンマーク語で「生活」を意味する「Bo」の名が示すように、ボーコンセプトは暮らしに寄り添い、日々を豊かにする家具を世界中の家庭に届けてきた。
では、新作「ヴォルテッラ」には、どのような思いが込められているのか。イェンセン氏は、おもむろに取り出した鍵をテーブルの天板に擦り付け、耐久性の高さを実証してみせた。そして、ものづくりに込めた思いを語る。
「デザインと機能性を両立させ、ダイニング空間を自由に使える家具であることを重視しました。たとえばダイニングテーブルは、どこに座っていても居心地がいい、角のない天板を採用しています。素材も丈夫で、傷が付きにくいもの。家族や仲間が集まり、気兼ねなくテーブルを囲めるように配慮しています」
快適な空間を生み出す家具を追求する情熱は、「ヴォルテッラ」単体にとどまらない。ほかの家具との調和を考えたコーディネートにも表れている。同時期にローンチされたコレクション「Paraggi(パラッジ)」も、そのひとつだ。
パラッジのアームチェア H109 x W91 x D94cm ¥296,900〜
パラッジの二人掛け カウチ H91 x W346 x D94cm ¥834,900〜
「パラッジ」は、ボーコンセプト初となる本格的なハイバックソファを展開する。デザインの着想源となったのは、ベッリーニ氏がイタリア・リグーリア州の港町パラッジで家族と過ごした時間だ。背もたれが高いアームチェアの造形には、山々に囲まれた美しい入り江で感じた安らぎが表現されているという。
また、カウチはアームレストや背もたれの角度を調整できる。座ったり、寝転んだり。その日の気分や過ごし方に合わせて形を変えられる仕組みには、「和室の快適さに通じるところがある」とベッリーニ氏。ダイニング空間に安心感をもたらし、長い時間をともにしながら、思い出を積み重ねていきたいコレクションだ。
長く大切にしている家具、または暮らしの道具は、年齢を重ねるごとに増えていく。ベッリーニ氏の場合は、自邸のリビングルームに母親が使っていた19世紀初頭に作られたペンダントクロック。針の音を聞くと、これまで一緒に過ごしてきた日々や、特別な瞬間の記憶もよみがえるという。
「部屋のコーディネートに完全になじまないものでも、思い出があるからこそ、手元に残しておきたいと思う。そうした家具は、かけがえのない記憶や、それぞれの人にとっての価値をもたらしてくれます。デザインは言語のようなものであり、家具はそこに込められた価値を翻訳し、伝えてくれる存在です」
人と家具の関係を見つめ続けるボーコンセプト。ベッリーニ氏とイェンセン氏が、これからどのようなデザインを生み出していくのか。そのものづくりの行方に期待が膨らむ。
Photograph: Hiroyuki Matsuzaki(IN TO THE LIGHT)
Text: AERA STYLE MAGAZINE