週末の過ごし方
自由を料理したレストラン
kabi、カウントダウン
【センスの因数分解】
2026.08.04
“智に働けば角が立つ”と漱石先生は言うけれど、智や知がなければこの世は空虚。いま知っておきたいアレコレをちょっと知的に因数分解。
目黒にレストランkabiがオープンしたのは、2017年。シェフの安田翔平さんと、ソムリエ江本賢太郎さんが立ち上げた発酵を主体とした料理と、自然派ワインや日本酒などのペアリングはすぐに話題となりました。彼らは当時20代、スタッフも全員20代という若さでした。オープン当初から自由さに満ちているようなレストランで、「オーナーシェフはどの人ですか?」と尋ね教えられたのは、キッチンで皿洗いをしている人だったことがあります。飲食業界はよく上下関係が厳しいと言われていますが、「(その厳しさを)自分たちは経験したけれど、店を持つときにはそれをなくしたい」という思いがあったと、後に聞きました。
その後店はミシュランの一つ星を獲得。評価も人気も兼ね備えながら、今年5月をめどに店を閉める決断をしました。
「海外から帰国して、鮨や和食とは異なる、器や食材などを通して日本の食文化を表現したいと思いkabiをオープンさせました。当時はこういうアプローチはなかったと思います」と語る安田シェフ。江本さんもまた、ドリンクで日本を表現したいという思いがありました。
「今はドリンクコースと呼んでいますが、お酒を通して日本はすごい国だと伝えたかった。当時はレストランといえばワインという風潮がありました。焼酎を使ったりカクテルを入れたりする人はほとんどいなかったと思います」
日本をテーマにしながらほかにはないアプローチがあったレストラン。しかし閉幕は迫っています。「東京は便利ですが便利すぎて食や経験がきちんと味わえなくなったと感じるようになったんです。それよりも地方の豊かな土地で食材と向き合う深さを大事にしたいと思いました」(安田さん)
彼は長野に土地を購入。これからオーベルジュを開くと言います。対する江本さんは、安田さんの選択を尊重しながら、自分のドリンクの世界をさらに極めようとしています。
「もっと深く、ドリンクを追究したい。kabiのスタイルを保ちつつも、さらに深掘りした提供をしたいと思っています。翔平は“これからは知ってもらいたいではなく誰にもバレないようにしたい”と言いますが、そこにはとても共感します」
ほかにはなかった日本を表現したkabiの二人は共に、多くの評価より限られた存在と関わることを選ぶのです。
kabi
東京都目黒区目黒4-10-8
営/19:00~
休/日・月曜
kome
※本記事は2026年3月時点の情報です