特別インタビュー

ブランド創立30年を迎えた「ジョセフ アブード」
自然と共存するラグジュアリーなハイカジュアル

2018.07.24

ブランド創立30年を迎えた「ジョセフ アブード」<br>自然と共存するラグジュアリーなハイカジュアル

母方の曽祖父はオーストラリアで大規模な縫製工場を経営していたという。ジョセフ・アブード氏が若くしてファッションに興味を持ったのは縫製職人だった母親の影響である。本格的にファッションの世界に飛び込んだのは、地元ボストンにあった「ルイス」というセレクトショップ。この店には、カリスマ的な威厳を誇ったオーナー兼バイヤー、マレー・パールスタイン氏がいた。

世界中に足を運び、無名の若いデザイナーズブランドに出会い、自らの勘を頼りにバイイングするマレー氏の個性的なショップは、ジョルジオ アルマーニやマーガレット ハウエル、エトロやゼニアなど錚々たるブランドを草創期からアメリカに持ち込んだ慧眼ある店。地元の大学を出てパリへ渡り、ソルボンヌ大学でも学んだ経歴をもつジョセフ・アブード氏は、ヨーロッパの洗練されたスタイルに触れていたこともあり、そのキャリアをこの店のアシスタントバイヤーからスタートさせたのだ。

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「マレー氏は、私が師と仰ぐ2人の人物のうちのひとりです。彼には自分のセンスを信じることを学びました。もうひとりの師とは、ラルフ・ローレン氏です」。

80年代、ポロ ラルフローレンのメンズディレクターに就任すると、同ブランドの黄金期を築き上げたジョセフ・アブード氏。87年には自身のブランドを立ち上げ、独立を果たすのだが、彼の背中を押してくれたのもラルフ・ローレン本人だという。

「ラルフ・ローレン氏からは信念を貫くことを学びました。ファッションとは絶対的に時代と共に進化していくものです。しかし、だからといって自分自身がブレてはいけません。スタイルを確立し、そのDNAを守っていくことこそがファッションを扱うものの使命である、と」。

ライフスタイルを自然と共存させることがデザイナーの使命

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天然素材を使ったベーシックな服、上質な素材使いとナチュラル&オーガニックといった「自然との共存」もまたジョセフ・アブードのテーマのひとつ。

「90年代頃から、私は自然との共存を意識するようになりました。いまでは自然の中の様々なエッセンスからインスピレーションを得ています。しかしスタイルはブランド創立から30年を経て、創業時から変わってはいません。デザインするのは服だけではありません、着る人のライフスタイルを提案することもデザイナーの責務だと考えています。地球環境と共存するのは、人間の使命なのですから」。

快適な服を追求するなかから生まれたのは、快適な環境への意識。それは地球環境との共存にほかならない。コレクションにある「ジョー・コットン」のカテゴリーは、そんなジョセフ・アブード氏の環境意識の集大成ともいえるレーベルである。

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「ジョー(JOE)とは、JUST ONE EARTHの頭文字を並べたもの。たったひとつの地球を大切にしたいという想いから名付けられました。ニューメキシコ州の高地で育てられた2種類のオーガニックコットンをブレンドし、豊かな表情と長く着られる耐久性を備えています。カシミヤのように柔らかく繊細なのに、長く着込んで何度洗っても白い毛羽が立たないのです。ブレンドレシピは日本の紡績会社の技術が使われています。日本とアメリカが手を取って成し遂げた素晴らしいコットン素材です」。

ジョー・コットンのコレクションからは大人の夏カジュアルに相応しい多彩なアイテムがリリースされている。今年ブランド創立30年を迎え、インテリアや小物を揃えるライフスタイルコレクションに加えて、スーツのメイド・トゥ・メジャーも開始された。御年68歳だが、ファッションへの情熱は衰えることを知らない。そう言えば、ジョー・コットンはジョセフ・アブード氏の父親の名を冠したと聞いたことがある。取材を終え、帰り際にそのことを氏に訪ねてみると「先ほど、私が師と仰ぐ人物は2人と言いましたが、本当は3人いましたね」と笑った。

Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Text:Yasuyuki Ikeda(04)

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