腕時計

ストーヴァの限定2モデル紹介。一切の無駄を排した美しさ
バウハウス創設100周年とドイツ時計②

2019.10.10

ストーヴァの限定2モデル紹介。一切の無駄を排した美しさ<br>バウハウス創設100周年とドイツ時計②

1919年にドイツのワイマールで芸術と先進的な工芸および建築の学校が産声をあげた。ナチスによって1933年に閉鎖を余儀なくされたが、現代に至るモダンデザインの源流とされる「バウハウス」だ。技術と芸術を統合した革新的な機能主義は、建築や工業製品からグラフィックデザインまで大きな影響を及ぼしており、時計も例外ではない。今年はバウハウスが創設されて100周年。これを記念したドイツメイドの特別モデルを紹介する。

バウハウスにオマージュを捧げたミニマル・ビューティ

1927年にドイツ・フォルツハイムで創立された時計ブランドのストーヴァ(STOWA)は、第2次世界大戦時には旧ドイツ軍にパイロットウォッチを納入していた。厳しいミルスペックをクリアする高品質の時計を生産する技術力を持っていたが、戦後はクォーツショックの直撃を受けて長く休眠状態に。このブランドを2004年に復活させたのが、同地で生まれた独立時計師のヨルク・シャウアーだ。

パイロットウォッチの伝統とデザインを受け継ぐ「フリーガー」などを甦らせるだけでなく、現代的なコレクションを意欲的に開発しているが、バウハウスの開校100周年にオマージュを捧げた新作の第1弾が「ANTEA1919(アンテア1919)」だ。一切の無駄な装飾を排しながら、時間の視認性を徹底的に追求した機能美は、まさにバウハウスの精神といえるだろう。時分針の太さと12カ所の長いバーインデックスは同じ幅になっており、長い分針がピタリと重なる。ダイヤルと風防も完全な平面で造形されており、それに対してケースは直角の垂直面で構成されたシリンダー状。気持ち良いほど幾何学に忠実なミニマル・ビューティといえるだろう。

ただし、ケースとストラップを接続するラグは直線ではなく、腕に合わせて角度が付けられている。デリケートな細身のラグは、このモデルが精密な工芸品であることアピールしているように感じられる。ヨルク・シャウアーは金細工の専門教育を受けており、時計師ではなく「ウォッチビルダー」と自称していることから、繊細なラグの造形に彼のこだわりが込められているのではないだろうか。

このモデルに続いて日本限定で発表されたバウハウス100周年記念の第2弾が、「ANTEA 100 Jahre BAUHAUS(アンテア100ヤール<年>バウハウス)」。ケースなどの外形は同じでも、ダイヤルデザインが独特。1930年代に流行した「セクターダイヤル」をアレンジしている。時間と分・秒のチャプターリングを2つの同心円に分け、それを放射状の直線とインデックスで結んだデザインが基本的な特徴。このモデルでは細身のアラビア数字に、直線ではなくドットを交互に挟んでいる。美しいブルースチールの針が時・分をきっぱりと指し示すため、やはり視認性は極めて高い。ダイヤルデザインもさることながら、腕に着けてやや横から見たスタイルが知的な印象を与える。

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「ANTEA1919(アンテア1919)」。バウハウス100周年にオマージュを捧げたモデル。ホワイトダイヤルにブラックの針とインデックスがハイコントラストとなって、視認性は抜群。自動巻き、パワーリザーブ約40時間、ケースはステンレススチール、直径39㎜、5気圧防水、¥100,000
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「ANTEA 100 Jahre BAUHAUS(アンテア100ヤール<年>バウハウス)」同じくバウハウス100 周年を記念したモデル。セクターダイヤルをアレンジ。細身のアラビア数字をアクセントとする独特のダイヤルに、ブルースチールの時分針が美しく映える。自動巻き、パワーリザーブ約40時間、ケースはステンレススチール、直径36.5㎜、5気圧防水、¥180,000

掲載した商品はすべて税抜価格です。

問/SPINDLE(スピンドル)新丸ビル店 03-3211-5117

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プロフィル
笠木恵司(かさき けいじ)
時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房や職人、ブランドCEOなどのインタビュー経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)。

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