カジュアルウェア

ビームス 取締役副社長 遠藤恵司
[ビームス軍団、ピッティを往く。]

2020.04.30

ビームス 取締役副社長 遠藤恵司<br>[ビームス軍団、ピッティを往く。]

アパレル業界の低迷が言われて久しい。だがそのなかでも快進撃を続けるセレクトショップがビームスだ。その名は広く海外にも知れ渡り、イタリアのフィレンツェで開催される世界最大級のメンズファッションのトレードフェア「ピッティ・イマージネ・ウォモ」でも大きなプレゼンスを見せつける。日本のファッションをけん引するその姿をピッティ会場で追った。

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遠藤恵司 取締役副社長

クルマやインテリア、時計など多くの産業で従来から開催されてきた合同展示会の在り方が見直されている。それは歴史あるピッティも例外ではない。年始に開催された第97回では、昨年の同時期開催に比べて、世界から訪れる来場者は約10%減少し、出展社数は1230社から1203社へ、バイヤー数も2万1400人から1万7600人へと下がった。 

だがこの数字だけで衰退とするのは早計だろう。背景には、これまで世界経済をけん引した中国とドイツの減速傾向や開催国イタリアの長引く不況。さらにEコマースの拡大やデジタルメディアによるプロモーションなど流通の変革も一因と主催者は分析する。ピッティのポテンシャルは依然として大きく、訪れた日本人バイヤー数は823人に上り、例年とほぼ変わらないことにも裏付けられる。 

この日本人バイヤーのなかでも圧倒的な存在感を放つのがビームスだ。仕入れを担当するバイヤーだけでなく、総勢17名が大挙し、その数でも群を抜く。 

なぜここまでビームスはピッティを重視するのか。そして低迷するアパレル業界の現状や変革期にあるセレクトショップの戦略においてどう位置づけているのか。

モノの背景を伝えて初めて商品になる

かっぷくの良さと親分肌を感じさせる雰囲気は、ビームス軍団を率いるにふさわしい。取締役副社長の遠藤恵司氏は自ら現地にも赴く。いやむしろ経営陣であるからこそオフィスに閉じこもるのではなく、現場を肌で実感する必要があるのだろう。それもピッティという世界屈指のメンズファッションの発信地で、いま何が起きているのか。それを自身の目で見ることで、これからの経営に生かせることを模索するためだ。

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訪れたのはタリアトーレ。待っていたオーナー兼社長のピーノ・レラリオ氏から新作の説明を受ける。遠藤氏がバイイングに関わることはない。だがこうして相手から直接話を聞くのも、まず自らが取引先であるブランドの動向や今季のテーマを理解すること。そしてひとりの客の立場に立って、自分と同世代にふさわしいスタイルを考えるためだ。それだけ本人が服好きだからでもあるが。そんな遠藤氏をレラリオ氏はこう語る。

「ご自身のテーマカラーである赤をいつもどこか身につけているチャーミングな人柄で、会うたびとても楽しく、友人のようにリラックスします。ビジネスパートナーとしての信頼と同時に、親しい人間関係があります。それは私にとってビームスのイメージそのものであり、だからこそ細かな独自のオーダーにも対応しますし、毎回エクスクルーシブな生地も用意し、期待に応えたいと思います」 

遠藤氏がビームスに入社して今年で30年になる。意外にも前職はJALの米国現地法人でトップを務めていたが、門外漢であるアパレル業界に入った。

「最初はこの会社にこんなに長くいるつもりはなかった。でも続けてみようと思ったのはスタッフなんです。気づいたら人生の半分近くを一緒に過ごしてる(笑)。ビームスって会社は本当に人間臭くて、たとえモノを売っていてもカルチャーやニュアンスを大事にしています。生まれてくる環境や歴史、文化、どんな人たちが作り、使ってきたか。それを理解せず売っていたら、モノはモノでしかなくなってしまう。そこにもっと有機的なことが絡み合っているのが服飾の世界だと僕は思っています。まとわりつく背景を大事にしてきたのがビームスであり、それを海外の最前線で体験したバイヤーが国内の各担当者やお店へと伝え、お客さまに伝わって初めてビームスの商品がビームスの商品となり得る」。

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だからこそピッティに大挙することにもむしろ誇りを感じるという。

「ビームスがビームスで在りつづけるには重要であり、セーブするような会社になったらそれはもうビームスとは違う会社だと思いますよ」 

そんな遠藤を慕い、その思いに応えようと軍団が一致団結する。

<<ピッティからビームスに届いた、 2020年春の新作。はこちら

「アエラスタイルマガジンVOL.46 SPRING 2020」より転載

Photograph: Mitsuya T-Max Sada
Text: Mitsuru Shibata
Coordinate: Michiko Ohira

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