腕時計
ゼニス、 伝説的なハイビート・クロノが次世代に進化
2017.07.04
機械式時計は振り子のかわりに車輪のようなテンプの往復振動で秒を進める。懐中時計のころは毎秒5~6振動だったが、現在は8振動が多い。クロノグラフはこの輪列に連結して動くため、1/8秒を刻むことになる。
ところが、ゼニスが1969年に開発した自動巻きクロノグラフ・ムーブメント「エル・プリメロ」は毎秒10振動。つまり1/10秒を計測できる。このハイビート・ムーブメントを特別な限定仕様ではなく、レギュラーモデルとして生産しつづけてきたブランドはゼニスしかない。クオーツショックの煽(あお)りを受けて、設備一式と合わせて廃棄寸前まで追い詰められたエピソードも知られているが、1980年代に復活。1865年に創業したゼニスは、この伝説的なハイビート・ムーブメントで世界的な名声を確立したのである。
2003年には、ダイヤルに窓を開けて「エル・プリメロ」の鼓動が視認できる「オープン」を発表。このモデルはいまに至るオープンワークの先駆けともなったが、内部のムーブメントも進化を続け、2014年にはシリコン製の脱進機が導入されている。
そして今年のバーゼルワールドで発表されたのが、1/10秒を1/100秒に進化させた「デファイ エル・プリメロ21」だ。センターのクロノ秒針はダイヤルを1秒で1回転。外周の目盛りも1/100秒単位なので大変にわかりやすい。通常の時間表示とクロノグラフの輪列を完全に独立させたデュアルチェーンを採用。加えて温度変化に強く、1万5000ガウス以上の耐磁性をもつ独自開発の新素材によるヒゲゼンマイ(特許取得済み)が、コンマ以下の精度を1ケタアップするという途方もない進化を可能にしたという。
高精度にもかかわらず、部品点数は203。1969年のモデルは273だから、量産を前提にした合理的な設計が貫かれていると想像できる。つまり、これまで同様にレギュラーモデルとして1/100秒が普及することを意味しており「まったく新しい時代に突入します」というゼニスのステートメントは決して誇張ではないのである。
問/LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス 03-5524-64200
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Photograph:Fumito Shibasaki(DONNA)※1、Mitsuya T-Max Sada※2
Text:Keiji Kasaki(Team Spiral)