旅と暮らし
史上最高の昼寝となった、気持ちよすぎるシーツのあるホテル
2017.08.10
COTTON HOUSE(コットンハウス)
バルセロナ/スペイン
あるホテルのホームページを作る仕事の過程で「コットンハウス」のことを初めて知った。取材先の商社の方に、スペインのBASSOLS(バソル)というシーツの魅力を聞いたことがきっかけだ。BASSOLSはスペイン王室御用達のブランドで、スペイン国内の5つ星ホテルからも揺るぎない信頼を得ているという。すぐさまそのシーツで寝たいと思い、大好きなバルセロナでBASSOLSを使用しているホテルをいくつか教えてもらった。そのなかで、ホームページの写真が特段に格好よかったのが「コットンハウス」だ。行く前から胸が高鳴った。
ホテルは抜群のロケーションに立地する。ガウディ建築であるカサ・バトリョもカサ・ミラも徒歩圏内。空港からのバスが到着するカタルーニャ広場へも徒歩10分ほどだ。大通り沿いにたたずむ「コットンハウス」の建物は、コロニアル調のクラシックな外観。そして中に入った瞬間に、気持ちがふわっとするような、時間が止まるような感覚を味わった。やはり、長い歴史をもつ建築は発する空気が違う。
もとは1879年に個人の邸宅として造られた建物。その後1950年前後に、コットン製品のプロデューサーであった男性が邸宅を買い取り、バルセロナのコットン産業組合本部とした。すでにイケイケだったコットン産業をさらに活性化させるべく、ここで会合を開いていたのだ。だからホテルの名前もデザインも、すべてコットンに由来する。
レセプションには大きな綿花が飾られ、部屋の壁には綿花の絵が飾られている。生地見本に囲まれたダイニングも雰囲気がよい。そしてお待ちかねのリネンはBASSOLS! タオルもバスローブもナチュラルな素材感で、優しい肌触りがたまらない。シーツにはシャワーを浴びて裸で潜り込むべし。薄い生地が素肌と一体化し、もうベッドから出たくないと思い、そのまま昼寝という流れだった。
起きてホテル探訪をすると新たな感動に包まれた。このホテル、どこも天井が非常にドラマチックなのだ。1897年当時のままの天井には精巧な細工が施され、天井そのものがアート。しつらえられたシャンデリアが華やぎを加え、写真映えがするのはもちろん、その下にいる時間はここでしか得られないもの。
見上げて美しいのは天井だけではない。たくさんのゲストをはっとさせるのは、地上から7階まで続く螺旋(らせん)階段。下から見上げると、薄暗く続く螺旋階段の先に明るい光が見える。コットンをイメージしたいくつもの球体もいいアクセントだ。不思議の世界に紛れ込んだ気分のまま階段を上り屋上テラスまで行くと、そこから見えるのはサグラダ・ファミリア! バルセロナはやっぱり楽しいと思う瞬間であった。
秋にまた「コットンハウス」へ泊まろうと計画中だ。そのときにはシャツをあつらえてから帰ろうと思う。実はホテルの部屋に生地見本があり、採寸のうえシャツをオーダーすることができる。職人さんによる手縫いため、完成までにかかる日数は約3カ月。少し時間は必要だけれど、世界にひとつのそのシャツは、着るたびにホテルとバルセロナの街のことを思い出させてくれそうだ。
プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度は高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE」。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。