旅と暮らし

暮らしに添う、滋賀のモノづくり。その2

2017.10.11

満々と水をたたえる琵琶湖と、それを取り囲む里山の風景。湖を中心としたそれぞれの地域の暮らしのなかで、文化を育んできたこの土地に根付くモノづくりとは。

繊細な手作業と自然が育む、一点ものの真珠。

 768_DSC9441.jpg

琵琶湖で真珠がつくられていることを知る人は、そう多くないだろう。イギリスやアメリカなどで高く評価され、かつては海外輸出ジュエリーの花形として、年間6トンを超える生産量のあった「びわ湖真珠」。環境の変化により貝が十分に育たない時代が長く続き、その存在を知る人は減ってしまったが、母貝の改良や環境の改善に取り組んだ養殖家たちの手により、いまも琵琶湖には美しい真珠が育ちつづけている。

 768_DSC9265_f.jpg

京都から電車で10分。町家の風情が残る大津の旧東海道沿いにある「神保真珠商店」には、30年以上も前に浜揚げされたビンテージパールのアクセサリーをはじめ、貝を丁寧に削り出しつくられるボタン、個性が際立つ紳士向けアクセサリーなど、さまざまな商品が並ぶ。「びわ湖真珠を知らない人や、若い世代にもその魅力を伝えていくことで、担い手不足に悩む養殖業や、琵琶湖の自然環境を守っていきたい」という店主・杉山知子さんの思いを通して、びわ湖真珠はいままた少しずつ注目され、現在ではお客さんの半数以上が、県外からここを目指して訪れる人たちだという。

 768_DSC9304_f.jpg

びわ湖真珠の魅力は何か?と聞かれれば、一つとして同じものがない一点ものの真珠に出合えること。そして、人の手が及ばない自然のなかで、長い時間をかけ真珠が育っていくそのストーリーだと言えるだろう。海の真珠が半年から1年ほどでつくられるのに対し、びわ湖真珠は貝を育てるのに3年、そこから真珠が巻かれるまでに、更に3年という時間を要する。繊細な養殖施術がされたあと、最後の3年は琵琶湖に委ねられ、自然に抱かれるその長い時間のなかで、独特の色や形、照りが生まれていくという。手にとるまで、いったいどんな真珠に育つかわからない。そんな一期一会が、びわ湖真珠にはあるのだ。

<その3へ続きます>

Photograph:Ayumi Yamamoto
Text:Asako Saimura

買えるアエラスタイルマガジン
AERA STYLE MARKET

装いアイテム

おすすめアイテム

あなたへのおすすめ

トレンド記事

  1. うわさの“ちゃん系”、荻窪の「中華屋 啓ちゃん」へ。<br>白飯泥棒と評判のひと皿にマッチも大興奮!<br>マッチと町中華。【第17回】

    うわさの“ちゃん系”、荻窪の「中華屋 啓ちゃん」へ。
    白飯泥棒と評判のひと皿にマッチも大興奮!
    マッチと町中華。【第17回】

    週末の過ごし方

    2024.06.28

  2. 【D-VEC(ディーベック)の日傘】<br>来たるべき猛暑を乗り切る日焼け予防&“涼やか”アイテム

    【D-VEC(ディーベック)の日傘】
    来たるべき猛暑を乗り切る日焼け予防&“涼やか”アイテム

    小物

    2024.07.02

  3. 俳優・町田啓太と考える、装う美学。<br>エスプリ薫る「文月」のバスクシャツ。<br>【第二期】

    俳優・町田啓太と考える、装う美学。
    エスプリ薫る「文月」のバスクシャツ。
    【第二期】

    週末の過ごし方

    2024.07.19

  4. 【バナナ・リパブリック】<br>「クールビズ」の最適解。<br>ポロシャツが主役となるこの夏のビジカジスタイル。Vol.3

    【バナナ・リパブリック】
    「クールビズ」の最適解。
    ポロシャツが主役となるこの夏のビジカジスタイル。Vol.3

    カジュアルウェア

    2024.07.16

  5. 隠れ家から生まれる、<br>クラシックモダンなスーツスタイル。

    隠れ家から生まれる、
    クラシックモダンなスーツスタイル。

    特別インタビュー

    2024.07.05

紳士の雑学