旅と暮らし
アマンに泊まり、ボロブドゥール遺跡群にどっぷり浸る
2017.11.17
AMANJIWO(アマンジウォ)
ボロブドゥール/インドネシア
昨年(2016年)の12月、10年ほど前からいつか泊まりたいと思いつづけていた「アマンジウォ」へ行った。
なぜそんなに気になっていたかといえば、ホテルの外観の写真があまりにも印象的だったからだ。それはリゾートというより、まるで歴史建造物のようだった。森のなかにひっそりとたたずむ姿には、神々しさすら醸し出されていた。
「アマンジウォ」は、1997年に世界遺産であるボロブドゥール寺院遺跡群から約3kmというロケーションに建てられたリゾートだ。
建築家は、これまでいくつものAMANを手がけているエド・タートル。ホテルに着くと、エド・タートルがいかにジョグジャカルタの歴史や建築をリスペクトしているかを実感することとなった。
私がずっと焦がれていたあの外観は、ジョグジャカルタの寺院建築様式を採り入れているものだし、実は、ホテル自体がボロブドゥール寺院遺跡群をめでるための造りになっているのだ。
ボロブドゥール遺跡に近いリゾートだと知ってはいたけれど、“あるトリック”は知らなかった。以下、ネタバレを含む「アマンジウォ」到着までの様子をお伝えする。
「アマンジウォ」に泊まるゲストは、ジョグジャカルタの空港から迎えのスタッフに連れられリゾートへと向かう。飛行機を降りるとすぐに“Amanjiwo”のプレートを持ったスタッフが出迎えてくれ、自分でスーツケースをピックアップする必要もなく空港内のラウンジへ案内された。
お茶を飲みながら荷物がクルマに積まれるのを数分待ち、準備ができたら、いざ出発だ。
空港から「アマンジウォ」まではクルマで約90分。売店も民家もほとんどないジャングルのようなロケーションになってくると「もうすぐ着きますよ」との声。
そして、10年越しの憧れである建物が見えてきた。この時点で、柱が格好よくて感激していた。スロープをゆっくり下ると、その柱の中に四角い光が見える。
クルマを降りエントランスに入ると、四角い光のなかにボロブドゥール遺跡が!― つまり、「アマンジウォ」はボロブドゥール遺跡の額縁なのだ。光とは対照的に、建物内は影を活かした造りになっていて、このコントラストが遺跡をより引き立たせていた。
また、建物内は古代の宮殿のようなしつらえで、それもまたボロブドゥール遺跡群と調和していた。
額縁、もとい門を越えてテラスに出ると、一面のジャングルのなかに遺跡が立っている。縁があるかないかで、だいぶ見え方が違うものだ。テラスから階段が伸び、下っていくと客室だ。
エントランス、額縁、部屋に続く階段、遺跡が一直線上につながっている構成。パブリックスペースはすべてあの建物のなかに入っているので、客室とダイニングを行き来する際に、必ずボロブドゥール遺跡を眺めることになる。振り返れば、いつもそこに世界遺産があった。
計35部屋の客室は、すべてがスイートで独立したヴィラ仕様。どの客室も243㎡以上という贅沢な広さでテラス付き。大理石の床に柱、高い天井と高級な要素で構成されつつも、ナチュラルなウッドも組み込まれているので温かみも感じる空間だった。
ディナーは大理石の柱が建ち並ぶダイニングで、ジャワ料理を堪能。宮廷のような空間に豪勢なプレゼンテーションの料理が運ばれ、非日常的なディナーとはこのことだ。女性ふたりで、ドレスアップしたのは正解だった。
翌朝は、4時起きでメインのアクティビティであるボロブドゥール寺院遺跡群の見学へ。「アマンジウォ」から遺跡群の入り口まではクルマでほんの5分。遺跡群への早朝入場券は限定した場所でしか購入できず、6時以降になると一気に人が増える。なのでじっくり見るなら早朝がベストだ。
朝靄のなかで間近に見た遺跡群は、まさに幻想的。1200年以上も前に建てられた世界最大級の仏教寺院に、心が打たれた。はるか昔に建てられたにも関わらず、発見されたのは200年前というのもミステリアスだ。
「アマンジウォ」が手配してくれた日本語の上手なガイドさんのおかげで、ボロブドゥールに潜むさまざまなストーリーを理解することができたのもメリットのひとつ。
3時間近くをボロブドゥール遺跡で過ごし、たくさん歩いてお腹もペコペコ。リゾートに戻り、テラスにて先ほどまでいたボロブドゥール遺跡を眺めながら朝食をとった。旅先でこれほど気持ちいい朝食も珍しい。
世界遺産にどっぷり浸りながら、優雅なホテルステイとなった2泊3日。「アマンジウォ」は、世界でトップクラスの歴史を堪能するためのリゾートだ。誕生からは20年。趣きや素朴さももつ「アマンジウォ」の魅力は、これからもきっと変わらない。そんな予感がする場所だった。
〈問い合わせ先〉
アマン共通
日本語フリーダイヤル 0120-951-125(10:00〜19:00)
amanjiwo.com
プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。