紳士の雑学
大人のパーティーウエア講座。
【第3回】ビジネスアタイア
2017.12.20
年末年始は、言わずと知れたパーティーシーズン。ドレスコードが書かれた招待状を受け取ることも少なくないだろう。どんなドレスコードにも慌てず、スマートに対応したいもの。そこで、ブラックタイ、スマートエレガンス、ビジネスアタイア、スマートカジュアルの4つのドレスコードについて、ルールを押さえつつ、個性が光るパーティーウエア術を、松屋銀座のカリスマバイヤーにして、メンズ・ファッション関連の著作でも知られる宮崎俊一さんに伝授していただこう。
第3回は、ビジネスアタイアについて。
ドレスコードの欄に“ビジネスアタイア”と書かれていて、聞き慣れない言葉に戸惑った人もいるかもしれない。この言葉が意味する着こなしとは、いかなるものなのか?
「これは、“平服でお越しください”ということ。つまり、普通のビジネススーツでOKなんです」
という宮崎俊一さんの説明に、安堵されたかもしれない。
「ただ、パーティーシーンであることを考慮して、前回のスマートエレガンス同様、クラシック回帰の流れを踏まえつつ、小物でランクアップする方法を採り入れたいですね」
具体的に着こなしのポイントを解説いただこう。
「基本コーディネートのトルソーに着せたスーツは、クラシック回帰を意識して、段返りの3つボタンタイプのプリンス・オブ・ウェールズ、つまりグレンチェック柄を選んでみました。シャツはビジネスでも使える薄いブルーですが、襟はやや小さめのラウンドカラーで、ダブルカフス仕様。1930年代のウィンザー公をお手本とするような、クラシックさがポイントになります。
私が着用している応用編のスーツは、経糸(たていと)に100%ウール、緯糸(よこいと)に100%モヘアを使った生地で、シルクとはまた違った光沢感があり、独特のハリもあるので、ビジネスにも使える一方、フォーマルな緊張感も伝わります。また、シャツの襟にカラークリップを使うことで、襟元に立体感をもたせています」
ネクタイも、スーツと同様、極端にフォーマルさを意識せず、日常使いのものでOK。ネクタイの結び方も、プレーンノットが望ましい。
「スマートエレガンスでもビジネスアタイアでも、ネクタイはプレーンノットだけでいいと思います。センターにディンプルがシャープに入っているのもいいし、あえてちゃんとしすぎないのが格好いい場合もあります。タブカラーだったらキュッと結び、セミワイドカラーであれば、ノットを少しつぶしてやわらかく見せるなど、さまざまな表情がつけられます」
ただし、ネクタイとポケットチーフとのバランスには注意を払いたい。
「タイとチーフの色柄を合わせすぎるのはかっこ悪い。昔あったような、ネクタイと共生地のチーフも、あり得ません。ポイントとなる色を拾いながら、バランスの取れたニュアンスにもっていきたいところです。スマートエレガンスのときと違って、クラッシュドパフなどリラックス感のあるチーフ使いがいいでしょう」
さらに、カフリンクスや腕時計などの小物による演出も忘れてはならない。
「ダブルカフスのシャツであれば、当然カフリンクスが必要になってきます。松屋銀座では、クラシックなテイストの着こなしにふさわしい英国のアンティークのカフリンクスも扱っています。かつて英国ではゴールドやシルバー製品には、小さなパーツに至るまで、すべてホールマークが刻印され、国家が品質を保証していました。それを見れば、製造年と検査した都市が、すぐにわかるようになっています。時計のケース素材と合わせて、ステンレスのケースなら銀色のカフリンクス、ゴールドケースならカフリンクスもゴールドで合わせたいところですが、コンビカラーのものを選べば、コーディネートの幅が広がります。おすすめは、スターリングシルバーに9金を厚く重ねたタイプ。金ムクのカフリンクスよりボリュームのあるデザインで丈夫。しかも18金よりもわららかみのある色調で、肌なじみがいいし、ビジネスシーンでも嫌味なくつけられます」
そして締めはコート。
「スマートエレガンス用におすすめしたアルスターコートと同じデザインながら、素材に100%キャメルを使ったコートであれば文句なしでしょう。似ているデザインのポロコートは、本来はポロ競技観戦用のコートですが、こちらのアルスターコートは、ラペルのデザインも違いポケットもフラップポケットでチェンジポケット付。普段のビジネスシーンにもフィットするクラシックな雰囲気があります。着用するのはもちろん、手にかけて持っているだけで絵になるコートです」
ポイント01
スーツの柄はプリンス・オブ・ウェールズ。シャツは小さめのラウンドカラータイプを合わせるなど、英国的な着こなしのアイコン的存在であるウィンザー公を意識。ビジネスアタイアのなかに、クラシックエレガンスの薫りを漂わせたい。
ポイント02
襟元を、カラークリップを使って立ち上げると、ビジネススーツも格上げできる。タイとチーフは、ポイントとなるカラーを拾いながらも、合わせすぎないようにするのが粋だ。
ポイント03
クラシックな着こなしには、アンティークの時計やカフリンクスがなじみやすい。ごついスポーツウォッチを合わせることなど、決してなきように。時計のケースとカフリンクスとの色合いを合わせれば、ディテールからもエレガンスを感じさせることができる。
ポイント04
100%キャメル素材のアルスターコートは、男ならワードローブに加えたい垂涎のアイテム。ビジネスからパーティーシーンまでカバーでき、手に持っているだけでも様になる。
【掲載商品】
トルソー&ハンガー:スーツ¥76,000、パターンオーダーシャツ¥12,000(別料金でオプション可)、コート¥90,000/すべてアトリエメイド、タイ¥12,000/アクアスキュータム、チーフ¥8,000/フェアファクス(すべて松屋銀座5階 アトリエメイド 03-3567-1211[大代表])
宮崎さん着用:パターンオーダーシャツ¥10,900(別料金でオプション可)/アトリエメイド、チーフ¥8,000/フェアファクス(すべて松屋銀座5階 アトリエメイド 03-3567-1211[大代表])、その他は私物。
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
Photograph:Sunao Ohmori(TABLE ROCK.INC)
Styling:Tomohiro Saitoh(GLOVE)
Text:Yasushi Matsuami