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名門靴店が考える、新春に買うべき靴10足。
【第4回】トレーディングポスト(ストレートチップ)
2018.01.15
1984年、「日本に知られていない海外の優れた靴を紹介するセレクトショップ」をコンセプトに創業したトレーディングポスト。以来、30年以上にわたり、洒落者(しゃれもの)の“足元“を支えつづけてきた。
そんなトレーディングポストを運営するプレステージシューズ マーケティング部の村井久哲さんに、いま買いたい靴を、ドレスシューズを中心にセレクトしていただいた。タイムレスな定番から、“いま”の気分を反映したモデルまで全10足。
第4回は、浅草の靴職人の矜持が息づく、トレーディングポストのオリジナル靴。
世界のハイエンド靴を取り扱って30年以上。その経験とノウハウが遺憾なく発揮されたトレーディングポストオリジナルの靴。日本人の足に絶妙にフィットするとの評価も高い。
なかでも、創業年を冠したこのTP1984には、惜しみなく日本の技術を投入。靴をよく知る人ほど、この価格でこれだけのクオリティーが、と驚くに違いない。
「靴作りの歴史が長く、現在もたくさんの工房がある東京・浅草のなかでも、私どもと30年近いお付き合いがあり、高い技術力を有するセントラル製靴さんとコラボして生まれたのが、トレーディングポストオリジナルのTP1984です。
セントラル製靴さんを訪ねると、あまり機械の音がしていないんです。つまり、手作業の工程が多いんですね。熟練職人と若手職人とが交ざりながら、ベンチワークで、品質にこだわった靴づくりを続けています。
素材は、最高品質と言われるポーランドのタンナー、ワインハイマー社のものを使っています。特に黒革に定評があり、ほかのものだとグレーがかって見えることがあるのですが、こちらのものは黒さが際立っています。
木型も日本人の足を考慮し、一から開発しました。欧米では靴の履き口が大きめですが、日本人は足首が細めなので、履き口をコンパクトにして、足を立体的に包み込み、吸い付くようなフィット感の木型にしています。
靴の前半分をグッドイヤー製法、後ろ半分をマッケイ製法にしていることも、大きな特徴です。これによりウエストがグッと絞られたシェープとなり、見た目も美しく、フィット感もアップします。
ふたつの製法をハイブリッドするには、両方に対応した機械を備えていて、なおかつ小回りの利く、セントラル製靴さんのようなメーカーでなくてはできないんです。
ヒールの背の部分を見ていただくと、縫い目のないシームレスバックになっているのがわかるでしょう。これもかなりの高級靴でなくてはあり得ないぜいたくなディテールですが、この価格で実現しています。ヒールも小ぶりなテーパードシェープで、エレガントな雰囲気を醸し出しています。とにかく、出来ることを全部注ぎ込もうというのが、この靴なんです」
日本の技術力、というよりも、浅草の職人の矜持に脱帽の一足である。
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
Photograph:Mitsugu Inada
Styling:Tomohiro Saitoh(GLOVE)
Text:Yasushi Matsuami