紳士の雑学

FiNC代表取締役社長CEO
溝口勇児インタビュー 後編

2018.02.20

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豊かさの総量は、人との出会いで決まる。

昨年アプリの提供が開始され、現在ダウンロード数は100万人超と順調にのびている。今年は、さらに数を積み上げていく年になる、と溝口氏。FiNCのチームづくり、組織づくりについて聞いてみた。

「社内には現在18カ国の人がいます。社員には栄養士やトレーナーもいれば、エンジニア、データサイエンティストなど、さまざまな人が働いています。ダイバーシティに富んだ会社と言えば聞こえはいいですが、多様な価値観のなかで皆が同じ目標に向かっていくことは難しいと感じる一面もあります。多様な価値観が集まり、もしもお互いの価値観を無理に合わせようとすれば、会社は空中分解してしまう恐れがあります。そして、会社が大きくなると、事業が細分化して、自分の仕事が何につながっているのかと疑問にと思う人も出てくる。

お互いの背景を理解し合うこと、チームあるいは会社のビジョンを常に認識することに関しては、定期的に時間を使って、ていねいに説明する。会社が同じ方向を見て進むにはこれを繰り返すしかないと思っています」

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溝口氏がスタッフに求めることとは———
「何を求めるか、そのレイヤーにもよりますが、抽象度の高い言葉で言うなら、自分のことよりも人のために頑張れる人。人に喜んでもらうことで自分の心が満たされたり、ひいてはそれが自分のためだと思う人が理想ですね。特に、我々はヘルスケアという領域で事業をやっているので、人に喜んでもらいたいと思うことは大切な資質だと思っています。

あとは、成長角度の高い人。つまり目標を高く設定できる人ですね。目標を高く設定すると、当然敗者になる確率は高まりますが、それでも本気で頑張れる人は、たとえうまくいかない状態に陥っても多くを学んで成長する人です。それを見極めるために、面接時には『これまでの逆境経験』をよく聞きます。その人がどんな逆境を乗り越えてきたのかは、プロセスにおける葛藤や苦悩との向き合い方を見ることができるので」

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自身の人生にも嫌というほどの逆境があったと言う。
「僕は、葛藤や苦悩の多い人生を歩まざるを得ない環境でした。幼少期は現代においては珍しいほどの貧乏で、家庭環境は問題だらけ。母親は自己破産していて、父親とは中学の時に一度会って以来会っていません。父は孤児院生まれだったこと、また母も理由があって親戚もいなくて、ゆえに頼る人が少ない環境でした。

社会に出て20代で就職した会社では、23歳という若さでスポーツジムの支配人になりましたが、自分の至らなさで店を潰してしまった。多くのスタッフをリストラすることになり、また本当に多くのお客さまを泣かせてしまいました。このときも日々葛藤との闘いでした。

葛藤や不安があるとき、心は不快でストレスを感じますから、それらの悩みがどこから来ているのか、どういう理由で湧き上がってくるのか考えますよね。一刻も早く取り除くために。そうやってあまり見たくない感情と向き合ううちに、残念ながら解消できない不安もあるということがわかったんです。アクションを起こすことで解消できる不安があれば、解消しようのない、ただ存在するだけの不安というものもある。それがわかったことは、いま、経営者として生きるうえでもすごくよかったです。

なぜなら、不安は目標の大きさに比例しているからです。目標が大きければ大きいほど不安も増すのが常。解消できない不安もあると知らなければ、不安を潰すために労力、資金、時間を費やしてしまう、そんなトップでは、会社は成長しません」

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「人生は光と影。優秀な仲間に恵まれて大きな目標をもって生きることは、同時に常に不安をもつ生活を享受しなくてならない」と溝口氏。

「平坦で、感情の浮き沈みのない人生は、もしかしたら精神的に安定するかもしれない。でも自分は喜怒哀楽の多い人生を選びました。この人生を選んだのだから、不安も葛藤もあって当たり前。だから大きな喜びも楽しみもあるんだと考えてます。そういう意味では、僕は意外とストレスはあるようでないんですよ」

息抜きしたいときは何を?と聞いてみると、「うーん、特に。息抜きはできないですね」とのこと。
「ベンチャー企業の多くは、1、2年分の資金を集めてそれを元に投資してもらい、一定の成果をもって次なる資金を集める。その流れが途中で分断されたら、新しいチャレンジができなくなるんです。だから息抜きは、次のステージに行くための努力をすることだったりします。次のステージに行けて初めて、よかった、乗り越えた、と少しホッとしますから。これは価値を残そうとするベンチャー企業の宿命だと思っています」

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最後に、仕事の成功のためにしている習慣を尋ねたら意外な答えが返ってきた。
「毎朝、神棚に手を合わせています。僕は人生の豊かさの総量って何で決まるかと言えば“人”だと思っているんです。だから、人に恵まれている自分は本当に運がよかったのだと思う。間違っても『自分の実力でここまで来た』という感覚はありません。いつか、自分の実力のおかげでいまがあると思ってしまえば、それは驕りだと思っています。そうなればきっと人の流れも変わってしまうでしょう。神棚に手を合わせて、自分には計り知れない大きなものに感謝することは、謙虚でいるための習慣です。

日々コツコツ地道に。イチローの“小さなことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道”という言葉は、本当にそのとおりだと思います。将来は、グーグルやフェイスブックのようなプラットフォームをヘルスケアという切り口でつくること。すべての人にパーソナルコーチのような健康のメンターが低コストでできる時代をつくる。この目標に向かって進みつづけます」

Photograph:Shota Matsumoto
Text:Noriko Ooba

プロフィル
溝口勇児(みぞぐち・ゆうじ)
高校在学中からトレーナーとして活動。今日までプロ野球選手やプロバスケットボール選手、芸能人など、延べ数百人を超えるトップアスリートおよび著名人のカラダづくりに携わる。トレーナーとしてのみならず、業界最年少コンサルタントとして、数多の新規事業の立ち上げに携わり、数々の業績不振企業の再建を担う。再建を託された企業に関しては、そのすべてを過去最高業績へと導く。2012年4月にFiNCを創業。一般社団法人アンチエイジング学会理事。

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