週末の過ごし方
常連9割でもひるむことなかれ。
男を魅了する、弾力系ナポリタン
[喫茶店ランチを愛す]
2018.03.06
![常連9割でもひるむことなかれ。<br>男を魅了する、弾力系ナポリタン<br>[喫茶店ランチを愛す]](http://p.potaufeu.asahi.com/5ed2-p/picture/11980336/3bbd72775a88a8423981ec39bfcb9d7b.jpg)
時代の荒波にもまれ、ニッポンのビジネスマンは今日も行く。だからこそ、ひと息つける安らぎの場所は確保しておきたい。そこで、喫茶店メシである。心と体をほぐし、英気まで養える、そんな都会のオアシスを紹介していく。
ニュー新橋ビル。SL広場横に鎮座する、言わずと知れたサラリーマンの聖地である。闇市跡地からスタートして、今年で47年。そのレトロビルのなかに、ビルのオープン時から営業を続ける喫茶の名店がある。開店の10時と同時にポツリポツリと客が入りはじめ、お昼どきには大にぎわい。トースト、サンドイッチ、ピラフ、ドライカレーまでなんでもそろうが、名物はナポリタンだ。
「玉ねぎがおいしいの。よく炒めてるからほんのり甘い。味付けは、うちはケチャップ。これもしっかり炒めて酸味を飛ばすから、旨みが凝縮される。麺は2.1mmから1.8mmに代えました。うどんみたいなスパゲッティは好みじゃないから。それを、サラダ油を飛ばすように強火で炒めると、中はもっちり外はコシの強い、弾力あるナポリタンができあがるんだよね。そして最後にバター。香りとコクがグッと増す」。そう語るのは、37年間、腕を振るってきた店長の宇野正人さん。
上手に炒める、というのがポイントで、「焦げは調味料」という名言も飛び出す。「お餅もさ、少しだけ焦がすとおいしいでしょ」。確かにお子様向けとは違う、少し濃いめで、どこか品のある味わい。これが働く男たちの胃袋をつかんでいるのだ。
「世の中いろんな喫茶店があるけれど、うちは9割が常連さん。1杯で粘る人も少ないしね。そこは暗黙のルールがあるのかな。マナーを知っているお客さんが多いと思うよ」。
このエリアは、再開発計画が動きだしていると聞く。いまこそ、この味、この空間、このムードを堪能しておくべきではないだろうか。

Photograph:Ryo Yonekura
プロフィル
本庄真穂(ほんじょう・まほ)
神奈川県生まれ。編集プロダクションに勤務のち独立、フリーランスエディター・ライターとなる。女性誌、男性誌、機内誌ほかにて、ファッション、フード、アート、人物インタビュー、お悩み相談ほか、ジャンル問わず記事を執筆。記憶に残る喫茶店は、山口県・萩にあるとん平焼きを出す店名のない喫茶店。福岡県・六本松の『珈琲美美』、神奈川県・北鎌倉の『喫茶 吉野』に通う。