カジュアルウェア
ファッション トレンド スナップ20
ライダースジャケットをスマートに普段着使いするテクニックをロンドンのベルスタッフで発見!!
2018.03.29
1920年代にイギリスでその産声を上げたベルスタッフ。創業当時は、バイクウエアを中心に冒険家や飛行家などのためのオーダー服を作っていました。顧客リストには、バイクレースのチャンピオンやトーマス・E・.ロレンス(映画 「アラビアのロレンス」のモデルとなった人物)、女優など当時のセレブリティーの名前が並んでいました。
その後、モータースポーツが英国以外でも人気を得るのと同時に、ベルスタッフは世界中に愛好者を広げ、1960年代になるとその名前はバイク愛好家の枠を超えることに。その火付け役が、ハリウッドで活躍していた俳優のスティーブ・マックイーン。彼はスクリーン(映画「大脱走」で着用)上やプライベートでベルスタッフを愛用。
このタイミングから徐々にベルスタッフは、バイク用のウエアからファッション アイコンとして雑誌などに登場することに。この流れは、イギリス生まれのトレンチコートと似ています。
今回は、ベルスタッフのロンドンの旗艦店であるニュー・ボンド・ストリートのお店「BELSTAFF HOUSE」でレザーのジャケットをどのように着ると都会的でスマートになるのかを探ってみました。
春レザーの着こなしとしても参考になりますので、ベルスタッフののジャケット持ってないから……と言わずご覧ください!!
まずはこの御仁。ベルスタッフらしいデザインのレザージャケットですが、よくよく見ると、着丈の短かいGangsterバイカージャケットをチョイスしています。
この着丈が短いところが実は大切で、ここが長いとバイクウエア感が強く出てきますし、全体の印象が重たくなってしまい、春の軽快な感じが出ません。
パンツはブラックのスリムフィットのジーンズ。ここがやや緩めのシルエットのレギュラーフィットだと、このシャープな感じが出ずやぼったく見えるはずです。
小物の使い方も秀逸。足元は、レザーのハイカットスニーカーにしています。全体を黒でまとめているのに、足元はあえて白☓黒☓赤のカラフルなスニーカーを選ぶことで、コーディネートにスパイスをプラスしてトレンディーな味付けに仕上げています。ここが、黒のレザーブーツだと王道のバイクファッションになってしまいますね。
手にしているリュックは、ミリタリー感の強いデザインで、手に持っても違和感ないのがポイント。
こちらの御仁は、バイカー色の強い着こなし。ウエストベルトの付いたレザーのPantherジャケットは、ベルスタッフの最も代表的なモデルのTrialmasterをレザーで仕上げたもの。
このベルスタフの代名詞と言ってもいいTrialmasterジャケットは、1948年に発表されたもので70年ものあいだ作りつづけられているロングセラーです。
オリジナルの素材は、コットンにワックスを塗り込んで撥水性を高めたものでしたが、この御仁は上品なカーフレザー仕様を選んだことで上品でリッチな印象に変わり、都会の生活のなかでも遜色がありません。
着こなしのポイントは、レザージャケットのサイズ感。
この御仁のように体にピッタリしたものを選ぶのが大切。レザーでタイトだと腕の動きがスムーズにできない!?と思う方もいるかもしれませんが、独自のパターンで縫製されているのでタイトでもストレスはまったくありません。ここが、ベルスタッフのレザージャケットの大きな特長です。
今回のスナップ取材では、ニュー・ボンド・ストリートの旗艦店の上にあるオフィスにも伺い、アーカイブを見ることもできました。
実はこの建物は、1876年に建築され、現在は重要文化財建築物に指定されています。その昔はBBCのレコーディング・スタジオとしても使われていていて、ビートルズも使ったという由緒ある建物だったのです。
ちなみに店内はモダンな作りで、日本の往年のバイクファンが見たら、あまりのイメージの違いにびっくりするはず。
上の写真が、オフィスで見せていただいた1948年のビンテージのTrialmaster。
基本的なデザインは現在のものとほぼ同じですが、大きく違うのが背裏に付いている織りネームのデザイン。
チェッカーフラッグのものは初期のTrialmasterにのみ付くもので、コレクターが製造年代を見分ける大事なポイントになっています。本体はコットンにワックスを塗り込んだものだったのですが、このジャケットは経年変化でマットな薄いラバーのような風合いになっていました!
現在のベルスタッフは、こうしたバイクウエアブランドとしてのアイデンティティーは残しつつも、ファッションブランドとしての新しいモダンなイメージを打ち出しています。
ベルスタッフ ホームページ https://www.belstaff.jp/home
今回のロンドン取材で印象に残ったのは、バーバリー、ダンヒル、ベルスタッフといった老舗ブランドが新しい世界感を発表し成功を収めるなか、小さなブランドがMade in Londonというコンセプトを掲げてマニアックなマーケットに向けたモノづくりをスタートしたり、往年のロンドン発祥のブランドが再評価されていることでした。
次回はそうした、新しいロンドンのモノづくりと、ファッション誌では取り上げられないリアルなスナップをお届けする予定です。
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi