紳士の雑学

ハワイは究極の旅先なのか 後編
[センスの因数分解]

2018.05.16

写真・図版 田中敏惠

自然とのバランスよい関係性を、気負うことなく実践している。前編では、ハワイ島とハワイアンたちがユニバーサルに通じる人と自然との真理のようなものに、気づかせてくれた話をしました(ちなみに彼らの周りではミラクルのようなことが意外なぐらい多い頻度で起こるのですが、それを自然との共生がキーだと彼らは言います)。ならばハワイの魅力はそれだけかというと、ご存じのようにそうではありません。親しみやすいリゾートとしてもシティーとしてのユニークさも、しっかり持ち合わせています。今回はこのシティーとしてのユニークさについて書きたいと思います。

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街の魅力というのは、それ自体がまるで生き物のように変化し成長していくことではないでしょうか。ニューヨーク、ロンドン、パリに上海……、シティーは常に人とエネルギーによってまるで有機物のように変わっていきます。そうしてでき上がっていくホットなエリアは、文化やアートの発信地として世界の人たちをひきつけます。

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ハワイにおいて、その役割を担っているのはもちろんホノルルシティーでしょう。ハワイ州第一の都市は、第二位のハワイ島・ヒロをはじめとした他の地と規模も変化のスピードも別格。ハワイ州においては、世界基準としての唯一のシティーであると言えます。

5,6年前から注目を集めるようになっているダウンタウンには、ユニークなショップやギャラリー、そしてレストランが出現しています。また、アラモアナに近いカカアコ地区も、地域に根差しながらもデザインコンシャスなオーガニックカフェやショップが増えていて、観光地としても注目を集めています。5月9日には、大手自然派スーパーであのアマゾンが買収したホールフーズ・マーケットがこの地区に新店舗を開きました。ニューヨークからやって来た女性がローカルでヘルシーな出店者を募り立ち上げた、カカアコのファーマーズ・マーケットも大盛況です(彼女と少し立ち話しましたが、猛烈にガッツある女性でした)。

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ダウンタウンで入ったレストラン『senia』は、1カ月前には予約しないと入店は難しいと言われるほどの人気で、その料理は和のテイストも感じさせるイノベーティブ。全米はもちろん、世界からゲストがやって来ていて、シェフは日本や世界のレストランジャーナリズムにもとても詳しかったです。そう、ここにもハワイ島とは別の意味、シティーとしての世界に通じる素養を感じさせます。ローカルの見直し、ヘルシーへの回帰、肩肘張らないカジュアルさやイージーさと若々しさ。そして食への意識の高さとボーダーレス感覚。これらはニューヨークでも東京でも見られる都市のひとつの流れと言えるでしょう。東京では、以前書いたレストランKabiがその代表格です。そしてこのムーブメントが、ハワイ第一の都市・ホノルルにもやって来ています。そう、ハワイとはただのリゾートでありながら、ただ自然が豊かな場所でなく、シティーとしての面白さも十二分に内包しているのです。

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このギャップ、いえこの懐の深さ。これこそ、ハワイのすごさと言えます。初めての海外旅行者も、本気の自然派指向派も、マリンアクティビティ好きやゴルフ愛好者、そして世界中を旅した作家も、ハワイは気負いなく受け止め、その旅人たちそれぞれに“らしい形”で楽しみを提供します。ハワイ島に暮らす日本人女性は、「ハワイの人は閉鎖的ではないけれど、その本心は少しずつ少しずつ開いていく」と言いましたが、ハワイという場所は旅の深度のいかにかかかわらず、旅人を受け止めてくれます。そんなハワイを感じながら思うのです。この地をわかりやすい、イージーなリゾートだと敬遠することのなんと浅はかなことかと。青い空と青い海、立ち並ぶヤシの木と居心地のよさ、人々の温かさを素直に求めることを、決して侮ってはいけないのだと。王道を求めることに躊躇(ちゅうちょ)などいらない。かといって王道に対して斜に構える姿勢を否定することも必要ない。それが、“広く深いハワイ”からのメッセージのように思います。

年齢を重ね経験を積み、インプットした情報があふれすぎている……いまどきありがちな状況です。そうなると、つい原点や王道といった基本的な要素を見失いがちになります。これから始まる、JALとANAの路線バトル、シティーとしての面白さ、リゾートとしての親しみやすさ、大自然の神秘……。どれもがハワイを語る事柄でしょう。それらに揶揄(やゆ)や否定など本当は必要ありません。そこに彼の地への好意と敬意さえあれば、太平洋の真ん中に浮かぶ島々は語ることでなく、その多様で魅力あふれる個性をもって私たちに大切なことを教えてくれます。極上の心地よさとともに……。

プロフィル
田中敏惠(たなか・としえ)
ブータン現国王からアマンリゾーツ創業者のエイドリアン・ゼッカ、メゾン・エルメスのジャン=ルイ・デュマ5代目当主、ベルルッティのオルガ・ベルルッティ現当主まで、世界中のオリジナリティーあふれるトップと会いながら「これからの豊かさ」を模索する編集者で文筆家。著書に『ブータン王室はなぜこんなに愛されるのか』『未踏 あら輝 世界一予約の取れない鮨屋』(共著)、編著に『恋する建築』(中村拓志)、『南砺』(広川泰士)がある。
http://ttanakatoshie.com/

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