紳士の雑学

ストライプインターナショナル社長 石川康晴
「過去は捨て変革を続ける、グローバル企業へ」後編

2018.07.10

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地元・岡山から世界へ。レディースカジュアル『アース ミュージック&エコロジー』をはじめ突出した事業戦略で躍進劇を続ける株式会社ストライプインターナショナル。来し方行く末、そして、いまを語るのは創業者で代表取締役社長兼CEOの石川康晴氏。目指すは年商1兆円のグローバル企業だ。
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『コエ』で1兆円稼げる黄金モデルを作る

SPA(製造小売業)に乗り出したクロスカンパニーはその後、競合他社がほぼ入居していなかった時代に駅ビルや郊外型SCへチャネル転換を果たした。また、アパレルには効果が薄いとされていたテレビCM──宮﨑あおいを起用した『アース ミュージック&エコロジー』──を打ちブランド認知度を一気に高めた。売上高は03年から13年の10年間で22倍に。14年には1000億を突破する。成功路線を歩みはじめたが、石川は社内の空気が気になっていた。かつての自身と重なる気がした。「社員が調子に乗ってるなって。商談に遅れる、こちらがお伺いしなきゃいけない場面なのに先方に来ていただく。だけど、これでは未来はない。クロスカンパニーという印籠(いんろう)は捨ててしまったほうがいいのではないかと思いました」

16年には社名変更し、これに先駆けて石川は経営理念を『お客さま第一主義』から『セカンドファミリー』へ、事業領域もアパレルだけでなく『ライフスタイル&テクノロジー』へと拡大した。「戦略のひとつにM&Aの強化があります。ソフトバンクは何百社ものグループ会社を抱えていますが、ああいったダイナミックな投資をしていきたい。対象はアパレルやファッションECに関するベンチャー限定。テクノロジー領域に関しては僕らだけでは手が足りない。世界中のスタートアップ企業から理系人材を探していきたいですね」

同時にグローバルなSPAとプラットフォームを展開する。前者はブランドの世界進出でザラやH&M、ユニクロの後を追う。後者ではネットの洋服レンタル『メチャカリ』や試着のできるファッションEC『ストライプデパートメント』などが既にスタートしており、ゾゾタウンやアマゾンのファッションECがコンペティターとなる。目標は1兆円企業だ。

「5000億円くらいまでは15年ほどかかるかもしれません。だけど、その後は年間1000億円、2000億円単位で成長する予測を立てています。

たとえば、『アース~』は国内外合わせて350店舗。成功をもたらした黄金モデルではあるものの小型店なので1店舗1億~3億円くらいの売上が限界です。一方、14年にスタートした『コエ』は大型店向けのライフスタイルブランドです。今後10年から15年かけて1店舗5億円売れる黄金モデルを確立していきたい。世界で1000店舗展開すると『コエ』だけで5000億円になりますから」

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いかにして社員が定時に帰る会社に変わったか?

同社では現在、社員のほぼ全員が定時帰社する。とはいえど、かつては深夜残業が常態化していた。マスメディアに『ブラック企業』と書き立てられたこともある。
「13年でしたかね。(その影響もあり)新卒350名の内定者のうち100名が辞退した。人材の確保は出店戦略と大いにリンクしますから大打撃でした。けれど、それでスイッチが入りましたよ、絶対にホワイト企業にしてやるって(笑)」

まず、「22時終業」の大号令で終電まで残る者はいなくなった。次に人材の増員で21時に。さらに十数億円を投資し、高速レジやICタグの導入で20時に。36時間かかった棚卸しも2時間に短縮された。次の19時は会議時間を半分にすることで達成。そうして、最後は社員全員に業務の断捨離マトリックスを作成させた。

「利益が大きく時間のかかるもの、かからないもの、業務を仕分けさせました。これでマニュアル業務は3分の1となり、定時帰社が実現。実質7年近くかかりましたね。もちろん、生産性の悪い業務って放っておくとモンスターのように膨れ上がってくるもの。時々見直しは必要になります」

石川自身、18時に退社し、さまざまな業界の人たちと会合の時間を設けている。その人脈が新しい事業の助けになる。「インフルエンサーの方と交流するのが仕事」だと言うが、「もちろん、20代でも30代でも仕事以外の人脈、使える人脈はもっていたほうがいい。僕の場合、若いころからアートが好きでそれが糧になりました。異業種との交流から新たな情報も入り想像力が生まれます」

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10年に設立した『オカヤマアワード』もその端緒は同じであろう。岡山の若手を支援する同賞は表彰式に知事や市長、商工会議所などの重鎮も出席する。「若いリーダーは若いリーダー同士で、重鎮は重鎮同士で固まる傾向はどこにいってもあります。でも、そうではなくて世代が交ざる社会を岡山から発信していきたいんです」。石川の地元愛は有名だ。社長業の傍ら卒業した岡山大学では起業家育成コースを開設する計画があるし、『おかやまマラソン』などにも協賛する。自身も参加し、昨年はライフネット生命の岩瀬大輔社長と一緒に走った。

「以前、岩瀬社長からリクルート希望の女性を紹介したいと連絡があったんです。だけど、日中、時間がなかなか合わず、マラソンがてら3人で会うことになりました。テーマは『面接ラン』(笑)。朝の皇居を走りながら『どんなプロジェクト経験を?』みたいな話をして。その女性ですか? 現在、当社グループ会社の社員です」

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    OFF BUSINESS/『おかやまマラソン』で岩瀬大輔氏と。
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    OFF BUSINESS/『ライアン・ガンダー展』でご本人と。

<プロフィル>
石川康晴(いしかわ・やすはる)
1970年、岡山県生まれ。現・ストライプインターナショナル代表取締役社長兼CEO。岡山大学卒業、京都大学大学院修了。小学生からの洋服好きが高じ、紳士服メーカーを経て94年に独立。岡山でレディースのインポートセレクトショップ『クロス』をオープン、95年に前身となるクロスカンパニーを設立した。2011年の中国進出の際は上海に駐在し、反日デモがピークの日々に自ら現地で指揮を執った。地元・岡山での活躍も知られ、10年には地域の活性化と若手支援を目的とした「オカヤマアワード」を設立。公益財団法人石川文化振興財団理事長なども務める。趣味はマラソンとアート。車椅子のアーティスト、ライアン・ガンダーの日本随一のコレクターを自認する。社内ではマラソンとテニス、料理部に所属。女子社員に手作り角煮を振る舞ったことも。

Photograph : Kentaro Kase
Text : Mariko Terashima

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