旅と暮らし

卑しい人間にならないための警鐘を鳴らしてくれる
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』
[美しき映画ソムリエ]

2018.07.12

東紗友美

写真・図版
© Universal Pictures

ブッダに最も近い存在とも言われるスリランカの僧侶アルボムッレ・スマナサーラは言った。「人間はみな、欲の病人」だと。

その言葉をまさしく反映するかのように、欲望を持っている人物しか出てこないというのも「ジュラシック・ワールド/炎の王国」のドラマ性の部分においての意外な面白みであった。人間は誰しも、善い人間も、悪い人間もそれぞれが欲を持っている。それゆえに、世界中を熱狂の渦に取り込むジュラシックシリーズ最新作は全年代がのめり込める映画でありながら、単なる恐竜パニック映画では決して終わらない。

非常に重厚な人間ドラマに仕上がっていたのが驚きであった。舞台はジュラシック・ワールドの惨劇から3年後の世界。ジュラシック・ワールドのあるイスラ・ヌブラル島で火山の大噴火が刻々と迫り、絶滅寸前の恐竜たちを守るため島へと向かうことになった主人公のオーウェン(クリス・プラット)とクレア(ライス・ダラス・ハワード)たち。しかし、噴火の危機が迫るなか、その背後では、恐竜たちの密輸がもくろまれ、私欲を満たすために恐竜を所有しようと画策する人間たちによるオークションが始まろうとしていた……。

主演は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズが世界中で大ヒットとなり、いまいちばんホットなハリウッド俳優のひとりであるクリス・プラットが再び、恐竜と通じ合えるオーウェンを演じる。前作でもおなじみのヴェロキラプトルのブルーとオーウェンの絆がさらに物語のスパイスとなっているので、没入度を少しでも高めたい人は前作を観ておいたほうがベターかもしれない。もちろん映像の技術的な側面もシリーズが重ねるごとによりいっそう進化し、恐竜映画としての面白みは申し分ない。もし子供が見たら、おそらく恐竜はまだ絶滅なんてしておらず、この世に存在しているのではないかと思ってしまうリアルさに震える。そして、シリーズを愛する人にとってはおなじみの恐竜も登場するし、それだけじゃなく最凶の新種も出てきますよ。

写真・図版
© Universal Pictures

でも、本作で私がぞっとしたのは自分が欲しいものをどんな手を使ってでも手に入れようとする人間のあさましい姿。どんなにいいスーツに身を包んでいても、どれだけのお金を持っていても、下劣さがすさまじく露呈しているのだ。もはや恐竜たちよりも恐ろしい存在なのだ。そもそも生き物をオークションにかけて手に入れようとする発想自体、欲深いというより罪深い。しかし、それさえ気付かないモラルに反した人たち。「善き人のあり方」の百八十度逆をいく人間の姿は、私欲を満たすことを優先的に考えている人にとっては人の振り見て我が振り直せ、となるかもしれません……。

見世物のために遺伝子をいじって新種の恐竜を作り、競売に出す。自然に反することをしようとすると予測以上のことが起きる可能性もあるし、DNAはまさしく神の領域だ。そんな人知を超えた領域に、ずけずけと踏み込もうとする人の姿には図らずも気付かされる面が…。「欲はあっていい。だが、自分だけが満たされて満足する小さな欲ではなく、世界中の人が満たされることを願う『大欲』を持て。」と語った稲盛和夫氏の言葉にもあるように、己の欲望が間違った方向にいっていないか改めて確認する機会をくれるかもしれません。よりダークでシリアスな側面にいつも以上に惹(ひ)かれた本作。溶けるような暑さに、ひんやりしてくるような恐竜たちの暴れぶり。ジュラシックシリーズって、夏の風物詩のひとつなのではないでしょうか。

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』

公開日/7月13日(金)より全国ロードショー
製作総指揮/スティーヴン・スピルバーグ、コリン・トレボロウ
キャスト/クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、B・D・ウォン、ジェームズ・クロムウェルほか
配給/東宝東和
公式サイト/http://www.jurassicworld.jp

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