旅と暮らし
シンガポールで「JW マリオット」の面白さに目覚める
2018.07.27
JW MARRIOTT HOTEL SINGAPORE SOUTH BEACH
JW マリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチ
シンガポール
マリオットはビジネス利用のためのホテルと思い込んでいた
正直なところ、これまで旅をしてきたなかで、「マリオットホテル」を選んだことは一度もなかった。マリオット=ビジネスというイメージがあり、煩悩まみれの自分の旅とは縁遠いブランドだと思っていたのだ。
ちなみにそのイメージはいい理由が発端。「東京マリオットホテル」のパブリックスペースがとても仕事がしやすいからだ。1階のラウンジは全席がコンセント付き。総面積が1500㎡もあり天井も高いので、周囲の声も拡散されて気にならない。さらに24時まで営業しているので、入稿間際には食事も頼みつつ遅くまで働くこともできる。
東京でいちばん、デスクワークのしやすいホテルと言っても過言ではない。ホテル側に聞いたところによると、「マリオットホテル」は全世界的にワーキングプレイスが充実しているらしい。実際に、仕事中には多くの欧米のビジネスマンのゲストも見かけたりする。
そんなわけで、マリオット=ビジネスという概念が自分のなかでできあがっていた。ところが「JW マリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチ」に行ったことで、その印象がガラリと変わった。思えばホテル名を聞いたときから、“サウスビーチ…?”と、何か陽気な場所の予感がしていた。
そもそも、マリオットには6つのラインがあり、東京にある「マリオットホテル」と「JW マリオット」はまったくカラーの異なるブランドだったのだ。簡単に言うと、JWの方がよりラグジュアリーで遊びのあるブランド。日本にはまだないが、7月22日現在、全世界に54軒を展開させている。
そこで、これからシンガポールへ行く人、または「JW マリオット」未体験の人へ、「JW マリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチ」の面白さをお伝えしたい。
第一印象から、刺激がたっぷり
チャンギ国際空港からクルマで約20分、シンガポールのダウンタウンに位置する「JW マリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチ」に着くと、エントランスで早くもマリオットの概念が覆された。
ゲストを最初に迎え入れるのは、自動ドアの前に鎮座するアートのゴリラ。廃鉄を組み合わせて作ったゴリラは、どこかほこりとした表情でこちらの気持ちを和ませる。そして自動ドアが開き目に飛び込むのは巨大なデジタルアート。万華鏡のように鮮やかな映像が移り変わり、誰もがこのアートの前に立ち止まって写真や動画を撮る。
入って5秒で気分が上がった。いわゆるメジャーな外資の5つ星ホテルとセレクションがまるで違う。滝、石、花、壺はそこにはない。花はあるといえばあるけど、LEDで映される動く花だ。流れる音楽もクラブっぽい感じで、「W ホテル」のノリに近い。
レセプションに進むと、そこにもズラリとアートが並ぶ。多彩なデザインの椅子が置かれ、大きな丸太に背もたれをつけただけのユニークなベンチもあったりする。
チェックインをしてエレベーターに乗り込もうとすると、これがまた意表をつく洒落たつくり。壁面にタコ、蟹、魚が描かれ、それらが秒単位でさまざまな色に移り変わる。例えるなら現代版竜宮城といった空間。東京のホテルではまだないタイプのエレベーターで、こういうイケイケなディテールに、東南アジアらしいエネルギーを感じた。
初めての「JW マリオット」は、部屋には入るまでの10分の間で十分にその個性を伝えてくれた。こんなマリオットがあるとは知らなかった。
デザインコンシャスな部屋は、意外にも機能的
客室に入れば、窓の外にはシンガポールを象徴する金融街の高層ビル群がそびえ立っていた。左にはマリーナベイサンズを望み、その眺望は、ザ・シンガポール! 東南アジアの現代アートを多数所蔵する「ナショナル・ギャラリー」も間近に見え、徒歩で約5分。どこへ行くにも近い好ロケーションだ(ちなみにナショナル・ギャラリー内にはいいレストランとバーが多く入っている)。
私が泊まったプレミアルーム(40㎡)の特徴は鏡を多用していること。ベッド横は床から天井まで一面鏡だし、ベッドの後ろの壁も半分が鏡。これにより空間が広く見え、高層ビル群が鏡に映るのも面白い。さらにバスタブを囲む左右の壁にも大きな鏡が張られている。鏡が2枚向かい合うことで、その間にいる自分の姿が無数に映り込む。それもバスタブだから裸なわけで、ひとりだとなんともシュールだ。
デザインホテルの様相でいて、意外にも機能的である。ベッド脇やデスクにもUSBポートが2つ以上あり、デスクのコンセントは3つ。洗面の鏡は開閉できて、開けると寝室と繋がる造り。部屋が広く感じられるというメリットに加え、洗面に自然光が入ることで女性がメイクをしやすくなる。また、見学させてもらったスイートルームにはパナソニックのナノスチーマー(美顔器)まで完備! 女性の意見がかなり反映されているホテルと察した。
プールもバーも充実で、ホテルにいるだけで十分に遊べる!
このホテルで最も気に入った場所と言えば、18階にあるインフィニティープール。プールの向こうには高層ビル群が立ち並ぶ。その光景を前に東南アジアらしい熱気のなか冷たいプールに浸かれば、これぞアーバンリゾートといったひとときだ。足だけ水に浸かるテーブル&チェア(トップ画像)もあり、そこはホテル随一の絶景シート。陽が沈むころから夜にかけてここでお酒を飲んだら最高だろう。
また別館の6階には個室のような造りになったプールがあり、プライベート感満載! カップルにぴったりだし、同じフロアにはF1のシンガポールグランプリ(毎年9月開催)を観るための特等席があるので要チェック! コーナーの道路まで50mもないくらいの距離なので、大迫力なのは間違いなし。
初日の夜に食事をしたレストラン「Akira Back」は日本料理と韓国料理のフュージョンで、手でつまめるカジュアルな料理が充実。クリスピーな生地にマグロのカルパッチョを載せた“ツナピザ”と、トリュフオイルをかけたマッシュルームのピザがおいしいので、軽食感覚でお試しあれ。
ロビーフロアにある「トニック」は世界各国のクラフトジンを集めたジントニック専門のバー。さまざまなフレーバーのトニックがあるのはもちろん、トニックウォーターの種類も豊富なので、バーテンダーと相談しつつ、自分好みのジントニックを開拓するのがおすすめ。キュウリやオレンジピール、シナモンなど、ボタニカルに合わせたトッピングの用意も抜かりなし。このバーは、ディナー前のアペリティフなどにぜひ活用していただきたい。
滞在中はディナー後に「Native」「The Other Room」「Operation Dagger」といった気になる外のバーでお酒を飲んで、部屋に戻って夜中にルームサービスでラクサを頼むというダメっぷり……。しかし、飲んだあとの出汁がたっぷり利いたラクサのおいしさは格別。ラクサ以外にもシンガポール風焼きそばなど、深夜まで食べられるご当地料理が複数あるのもうれしいところだ。
ちなみに「The Other Room」は「シンガポール・マリオット・ホテル」内に入る隠れ家バーで、何も知らずにバーの入り口を見つけるのはまず無理。なんの看板もない従業員用のようなドアが入り口で、中はめちゃくちゃおしゃれというギャップがたまらない。さらにカクテルのレベルも高いので、こちらもおおいに行く価値がある。
「来てよかった」という率直な感想が残る
「JW マリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチ」での3泊を終えてみて、シンガポールが前よりもっと好きになっていた。暑く解放的な街とホテルのノリのよさが合っていて、夜遊びしたあとも快適に迎え入れてくれる。
また、滞在してから気づいて驚いたのが、このホテルが全634室もあったということ。巨大ホテルにありがちなワンパターンなデザインと対極でどこを歩いても刺激的で、それでいて居心地はアットホーム。だから、そこまで大きいとまったく感じなかった。遊びにはもちろん、仕事の合間に息抜きできる要素がたっぷりあるからビジネスマンにもぜひ泊まってほしいホテルだ。
知らなかっただけで、「JW マリオット」は想像以上に面白い! マリオット・インターナショナルの創業者、ジョン・ウィラード・マリオット(John Willard Marriott)の名をブランド名にしているだけある。2020年には奈良に開業予定というから、どうなるのか楽しみだ。しかも設計は隈研吾氏。それまで、アジアにあるほかの「JW マリオット」にまた泊まってみたいと思っている。
マリオット東京予約センター 0120-142-890
プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。