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セラピアンがピッティで見せた、名門ブランドの矜持
2018.08.01
ファッションにおけるバッグの位置づけは年々高まり、ちまたには大胆なロゴマークやキャラクター、あるいはワッペンを全面にあしらったストリート系バッグがあふれます。これに対し、由緒ある名門ブランドは、独自のモノづくりとその背景にあるドラマにフォーカスします。それは唯一無二のオリジナリティーにほかならないからです。
1923年にイタリアのミラノで創業したセラピアンもそのひとつ。新作では、ポルトフィーノ近郊にあるシークレットリゾートのゴルフォディパラッツィにスポットを当て、セラピアン家が代々レジデントを所有し、この地を訪れる際に使った1960年代のトラベルバッグを再現しました。
「ゴルフォディパラッツィは、ミラノのハイソサエティーのカルチャーであり、周辺にはホテルがなく、プライベートレジデンスのオーナーによって培われた独自のライフスタイルだったのです。当時のビンテージテイストを再現しつつ、現代の用途に合わせ、軽量化やキャビンサイズに合わせてモダナイズしています」とマーケティングディレクターのマキシム・ボヘ氏は語ります。
優雅なカーブを描いたフォルムに、しっかりとしたハンドルを備え、そこにはアタコと呼ばれるレザーのベルトをあしらい、クラフトマンシップを控えめに主張します。
「シークレットリゾートに行くのに、ビッグロゴはいらないですからね(笑)。コレクションに加えた限定28点のレゼルバは、1972年の希少なカーフスキンを用い、まるで芳醇なワインのような風合いが楽しめますよ」
昨年、セラピアンはラグジュアリーコングロマリットのリシュモングループに加わりました。伝統あるブランドの新たなスタートについてボヘ氏は言います。
「アーカイブを掘り起こすと、40年代から大切に保管されているバッグが700個以上あり、半年以上をかけてデザインや細部の仕様はじめ、写真や資料も徹底的に研究しました。その結果に基づき、今後について創業家とも打ち合わせを重ねました。大切なことはスタイルや歴史を重視し、セラピアンの独創性を育てること。それだけセラピアンはオーセンティックなミラネーゼであり、真のメゾンなのです」
問/ウエニ貿易 03-5815-5720
プロフィル
柴田 充(しばた・みつる) フリーライター。コピーライターを経て、出版社で編集経験を積む。現在は広告のほか、男性誌で時計、クルマ、ファッション、デザインなど趣味モノを中心に執筆中。その鋭くユーモラスな視点には、業界でもファンが多い。
Photograph:Mitsuya T-Max Sada
Text:Mitsuru Shibata