旅と暮らし
“日本の香り”をリシンクする展覧会
『NORITAKA TATEHANA RETHINKー舘鼻則孝と香りの日本文化』
2018.09.14
歴史的邸宅のなかで、香りの日本文化を体験
レディ・ガガが愛用した厚底靴<ヒールレスシューズ>をつくったアーティストとしても知られる舘鼻則孝。昨年表参道ヒルズで行われた「舘鼻則孝 リ・シンク展」に引き続き、本展も「日本文化をリシンクする」がテーマ。9月14日(金)から9月16日(日)まで行われる本展は、日本文化のなかでも特に“香り”にフォーカスした展覧会となる。舘鼻氏にとって作品づくりの源であり、創作に必要不可欠なプロセスである“リシンク”という行為を経た作品が多数公開される。
展覧会が開催される空間も見どころのひとつだ。会場は、九段下にある歴史的建築物の「旧山口萬吉邸」。有形文化財である邸宅は、築91年という積み重ねた時の質感およびフローリングや壁などはそのままに大胆にリノベーションし、2018年9月より会員制ビジネスサロンとして再生した。地下1階から地上3階までの4フロアにわたるレトロモダンな空間に、舘鼻氏の色鮮やかで美しい作品が展示される。また、本展では京都の香老舗「松栄堂」が展覧会会場の香りを担当。作品を鑑賞していると、ふわりと和の香りが漂ってくるのも心地よく、本展のテーマである日本文化の香りをより感覚的に捉えることができるのも特徴だ。
代表作である<ヒールレスシューズ>はもちろん、日本文化の香りをリシンクした新作も多く展示される。新作のなかでも必見なのは「源氏香の図」と呼ばれる源氏物語に由来した紋様が蒔絵で描かれた巨大な香炉で、本展の中心的存在だ。蒔絵は、漆器の産地として知られる石川県輪島市の伝統工芸士によって仕上げられ、つやのある美しいたたずまいは、和室の中で堂々とした存在感を放っている。舘鼻氏は、伝統工芸に携わる職人たちと作品づくりを行う機会も多く、3階フロアでは、舘鼻氏と職人たちが共に作品をつくる様子が、ドキュメンタリー映像で紹介されている。
趣のある建物内を歩きながら、嗅覚でも和の香りを感じつつ、舘鼻作品を鑑賞。日本の香の文化、その魅力に改めて触れられる展覧会、ぜひ堪能してほしい。
Text : Noriko Ohba