お酒
世界最古のワイン産地ジョージアの
ツィツカ ゴッツァ2015 / Gotsa Family Wines Tsitska
[今週の家飲みワイン]
2018.11.02
国別に紹介しているワイン、今月は5番目のジョージアだ。トルコの北東側、そしてロシアの南に位置する。実は、隣国アルメニアと並んで、8000年前からワインを造ってきたという物的証拠があり、世界最古のワイン産地のひとつとされている。ともすると、世界最古ということだけがジョージアのワインの魅力?と思うかもしれないが、そうではない。
「ワイン世界のガラパゴス諸島とでも言うべき、近代化にさらされていない独自の手法がそのまま残りつづけているという部分がいちばん魅力的なんですね。別の例えでは“シーラカンス”(笑)」
梁さんの説明を聞くだけで、ジョージアのワインにがぜん興味が湧いてくる。
「何千年もの間、外界と遮断されていたガラパゴス諸島にも、黒船が来るんですね(笑)。ジョージアのワイン造りにも変化が起きてきています。そうした場合、世の常ですが、“?”という造り手が出てくる一方、いい部分だけを進化させている造り手も出てきます。いいほうの例がビオディナミです。昔から自然のままにぶどうを作ってきたとはいっても、ビオディナミのコンセプトは存在しなかったのです」とも。
その好例のひとつが今週のワイン「ゴッツァ」である。ワイナリーは海抜4200m、ジョージア古代の村、アシュレティ渓谷にある。硫黄や銅も不使用の有機栽培を家族で実践しているのだ。ぶどうを除梗(じょこう)、破砕し、プレスと醸しを行わず、フリーランジュースのみをクヴェヴリで発酵、熟成させる。
クヴェヴリとは円錐形の土器で、3分の2ほどを地中に埋めて発酵熟成させる。つまり、ステンレスタンクや木樽の役割をすべて土器が行う。このクヴェヴリでワインを造ることこそが、ジョージアワインたるゆえんだ。この伝統製法は2013年にユネスコ無形文化遺産にも認定されている。
使用するぶどうもグルジア固有の品種がほとんどで、かなり多くの品種が存在する。ゴッツァは香味の強いツィツカという品種で、柔らかい麦色を呈する。香りはグレープフルーツや青梅のように涼やかだが、果実の厚みもしっかりあり、ほどよいミネラルと酸が奥行きの深さを与えている。
「白ぶどうの果皮をつけたまま長時間発酵させるので、オレンジワインの範疇(はんちゅう)に入るような味わいに仕上がるのが特徴です。そして、ミネラル分がなせる業なのか、だしっぽい味がします。その旨みの強さが実は和食ともとても相性がいいんですね。なじみのない未知の国にみえて、実は、ジョージアのワインはとても和食と相性がいい。この3~4年、注目されはじめてきましたが、日本料理とのマリアージュのポテンシャルで、まだまだ伸びしろがあると思います」と梁さんは言う。
この冬は、ブームになりはじめたばかりのジョージアワインで鍋を囲んでみるのも楽しいのではないか。
Photograph:Makiko Doi