お酒
ほのかな塩みで旨みの強い、トルコのオレンジワイン。
ゲルヴェリ ハサン・デデ・キュップ
[今週の家飲みワイン]
2018.11.30
4本目は番外編でトルコの白ワインだ。実はトルコはぶどうの栽培面積では世界第6位(2015年)を誇るぶどう大国。ところが、イスラム教徒が多いこともあり、そのうちワインに加工されるのは10%前後だという。しかし、ジョージアの隣国トルコもまた、4000年も前からワインを造ってきた歴史があるのだ。
梁さんの選んだ、「ゲルヴェリ ハサン・デデ・キュップ」は、トルコ中央のアナトリア地区にある、カッパドキアで造られるワインだ。キュップとはトルコ語でクヴェヴリのこと。ここにもまた、土に埋めた甕の中で醸造する文化が残っているのである。
「これは、今でいうところのオレンジワインですね。最近よく聞くオレンジワインとは、白ぶどうを原料に赤ワインの製法で醸造されたもの。白ぶどうの皮や種も一緒に仕込むことで、皮に由来する香りや渋みを伴う複雑な味わいを醸すことができるのです」と梁さん。
白ワインでも風味を強調するために、スキンコンタクトといって、皮とともに漬け込むこともあるが、この場合10~24時間ほどなのに対し、オレンジワインでは数週間~数カ月単位で漬け込みが行われる。
「“オレンジワイン”という言葉が使われだしたのはここ数年のことで、ロンドンのインポーターが言いだした“らしい”と言われています。ゲルヴェリ ハサン・デデ・キュップをひと口飲むと、なんとも言えない旨みとともに、初めてなのにどこか懐かしいようなほどよい塩分を感じます。例えば、すっぽんのスープや松茸の土瓶蒸しなど、一般的にワインには合いにくい汁ものにも実によく合います。つまり、だしとの相性が抜群にいいんです。優しく包み込んでくれるような包容力のある旨みを感じます。ある意味それは、日本酒的ですらあると言えます。口の中で料理の余韻を切るのではなく、包み込む。だから、じんわりと染み渡るようにおいしいんですね」と梁さんは説明する。
ゲルヴェリ ハサン・デデ・キュップの造られている畑は、標高が700~800mと高く、ぶどうも樹齢50年~80年とかなり古い。豊かで複雑な味わいと、相反するすがすがしさが同居するのもそのためだ。長い歴史を有するトルコのワイン造りだが、イスラム人の侵攻以降は、次第に衰退していった。1800年ごろに一度復興するも、長くは続かず、ようやく近年、世界へ向けてのインフラが整いはじめた。2007年にはWines of Turkyのロゴを作り、そののもとに、トルコワインの魅力を各国へ訴求しようという動きが活発になってきてきる。そうしたうんちくを含め、忘年会のシーズンにこの一本を披露すれば、話題になること間違いない。
Photograph:Makiko Doi